【帰国後インタビュー vol.3 後編】駐在員夫婦の離婚の実態とその解決方法・・・ぶれずに自分のやりたいことに力をいれた帯同生活、そして、帰国後に選んだ道とはー

-ちなみに、駐在員に限って言えば、離婚の原因は何が多いですか? 

残念ながら、女性関係が多いですね……。子どもがいる場合、奥様は1か月単位で日本に戻ってしまうことがありますよね。特にアジアだと、男性の方も、みんなやってるよ、という感じでハードルが下がり、気が緩んでしまうようです。まれに奥様の不倫もあります。帯同する奥様方は学歴が高かったり、もともとキャリアを持っていたのに専業主婦になってしまって、力を持て余している人が多いのです。

次に精神的な不安定さがあると思います。「駐在後、夫が変わってしまいました」という言葉もよく聞きます。駐在するということ自体が大変で、駐在員ならではのストレスがありますよね。現地と本社との板挟みにあったり、日本にいた時よりポジションが高くなっているのに、それに対するフォローや環境が整っていなかったりと、駐在員はいろんなストレスを受けます。飲酒の機会も増えて、メンタルにストレスを抱えるのです。

さらには、夫からの乱暴な言動やDVなどに発展してしまう方もいて、夫婦仲が悪くなってしまうということもあります。

ーそのような奥様にはどのようなアドバイスができますか?

DVは、受けている奥様本人の感覚が麻痺してしまうのが怖く、ことの重大さを認識できなくなるので、帰国の準備をするように勧めます。そして、いつでも帰国できるように日本での受け皿を紹介することもあります。皆さん、実家が受け入れてくれなかったり、家をすでに売却したり貸していたりして、帰る家がないという方も多いですから。

また駐在員の妻は仕事を辞めていたりもするので、経済力がなくて不安という方も多いですね。ただ、経済的な面でいえば、マザーズハローワークなど、一人親を支援する制度はかなり整っています。短時間ワークや託児付きで無料でパソコンのセミナーを受けることができたり、また、扶養的財産分与といって収入の高いほうから低い方へ、収入格差を埋めるための支援を夫に求めるという方法もあります。離婚した後の数年間を限度に、夫から経済的支援を受けることで、妻は資格を取って収入を上げたり、キャリアを上げて生活を安定させることが可能です。

ーもし、今、離婚しようかと悩んでいる駐在妻がいたら、何と言葉をかけたいですか?

まずは、相談してみることが大事と言いたいです。親や同じ立場の駐妻たちには言えないけど、普段は会わない少し遠めの友人や専門機関でもいいので、誰かに相談することが大事です。自分一人で考えていると、自分が悪いからだと思い込んだりしてさらにメンタルを病んでしまう方も多いのですが、人に話すだけでも気持ちが変わります。

参考情報

ー小泉さんは独立して誰もしていないことを始めたわけですが、実際にやってみて、今どんな風に感じていますか?

仕事自体はやりがいもあり、必要とされている実感もあります。ただ、まだまだ不安もあるのが正直なところで、こうありたいという理想に向かって、そこにたどりつくまでの方法論を探し続けています。

私自身の課題として、物事のつなげ方や人脈の広げ方、ネットワークを広げるやり方がよくわかっていないかなと思います。もともと国家公務員で転勤も多い仕事だったので、営業のノウハウなどもないので、今は全てをイチから築いている大変さがあります。

ー公務員時代より大変な気がしますが、ご家族のサポートなどはありますか?

夫婦問題を取り扱っているので、相談を受ける自分はバッチリ夫婦円満で子育てもしっかりしています、と言いたいのですが……(笑)。とても公務員時代のような早い時間に帰宅はできませんし、夫はふつうの会社員で保育園に頻繁にお迎えにいけるわけでもないので、大変なときもあります。

実際、家族には、多大な迷惑をかけていると思います。先日は、子供の保育園の遠足をすっかり忘れていて、出勤している途中でママ友からの連絡で気づいて顔が青ざめました。でも、ちょうど夫が今日は遠足じゃないか!と思い出してくれて、小5になるお姉ちゃんが、15分ぐらいで妹のお弁当を作ってくれたのです。娘は、後日、保育園に帰って、遠足の想い出を粘土で「ねえねの作ったお弁当」として表現していたのにも感動しました。そうやって、知らない間に家族のチームワークができているのだなと実感しました。

本来、全力でやればビジネスが広がるスピードは速く、軌道にのるのも速いと思うのですが、今は家族の時間とのバランスをとるため、やりすぎないようにしています。が、夫はおそらくバランスはとれてないと感じていると思います。難しいですね。やりたいことはいっぱいありますが、自分のやりたいことを全面に出しすぎると、いろんなところに齟齬が出てくる感じがします。「私らしく生きる」を突き詰め過ぎないように、ブレーキをかけてくれる存在が、私にとっては夫かなと思っています。

ーやる気あふれる小泉さんですが、離婚テラスのほかにも台湾で新たに始められたことがあるそうですね。

育児講座を始めたところです。もともと、離婚テラスを始める前から、家庭裁判所時代に学んだ発達心理学の知識、たとえば子どもの定型発達や認知、記憶力の発達についてを、他のお母さんたちとも共有したいと趣味の延長のような形で育児講座を開いていました。また、台湾駐在時代の友達が帰国してリトミック教室をやっていて、お互いの教室を行き来するなかで、2人で組んで何か台湾の人と交流したいねとホワンと思っていたところ、私が台湾時代に所属していた育児サークルから声がかかったのです。

私自身は、帯同時代に育児サークルに入ってすごく救われたという想いがありました。初めての子育て、家で娘と2人きりで過ごしていた時、週1回でも他のママと日常会話をすることがとても楽しみだったのです。今回は、リトミックを教えている友人は道具やスペースの関係で参加を見送ることになり、私一人で台湾にいる協力者の方と一緒に、育児講座とリズム体操や絵本の読み聞かせをしてきました。

台湾の方と日本人が一緒に受けられる、中国語と日本語で行った育児講座は反応がよかったですね。台湾人はもともと日本人が好きで日本人と交流したいと思っていたり、外国語に触れさせたいと思っている人が集まりますし、日本人も現地の人と交流したいとか、ママ友が欲しいといった方たちが集まってくれました。

収益は出ないけれど、昔お世話になったところで、恩返しができたらいいなと始めたところです。赤字では継続が厳しいので、どうやって運営していくか考えているところです。日本と台湾は国交がないので、細く長く続けて台湾と日本をつなぐ架け橋になれればと思っています。

ーでは、小泉さんの、これからの抱負を教えてください。

私の大きな夢は、「すべての離婚を考える夫婦が、まずは私に相談してもらえるようになること」です。悩める夫婦の最初の窓口になりたいのです。まずは最初のフィルターとして私を介してもらって、その結果を受けて、その後の人生にのぞんでいただければ嬉しいなと思います。

【小泉道子(こいずみ・みちこ)さんの経歴紹介】

行政書士。2002年4月、家庭裁判所調査官補として採用されて以降、各地の家庭裁判所にて勤務。その間、第一子目の育児休暇取得中に夫の台湾赴任へ帯同。2年間の帯同生活を経て帰国し、復職。2017年3月、東京家庭裁判所を最後に辞職し、2017年4月に離婚テラス(http://rikon-terrace.com/)を設立し、代表を務める。産業カウンセラーの資格も生かし、夫婦の問題から、親の離婚に直面する子どもたちのサポートも行う。

2018年5月取材

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