【帰国後インタビュー vol.4 前編】帯同生活中に経験したストレス、体調不良、そして乳がん。もがきながらも目の前の課題に向き合うことでたどり着いたキャリアとは。

辛い闘病生活 自分にできることを実践することで気持ちに変化が

-歌の力がきっかけで元気になれたのですね。それにも関わらず、さらに乳がんという困難が待ち受けていたのですね。

シンガポールに住みはじめて3年目に初期の乳がんと診断され、滞在した11年の間に乳がんやその他の婦人科系症状を含め、7回の手術をうけました。

Singapore Breast Cancer Careの皆さんと

Singapore Breast Cancer Careの皆さんと

-闘病中には気持ちが落ち込んだ時もあったと思いますが、心の支えは何でしたか?

夫は1カ月のうち3週間は出張で家にいないような生活だったのですが、病気になった時にそれらを全部キャンセルしてサポートしてくれたことに感謝しています。

2回目の乳がんが分かった時にはもうヨガを教えはじめて何年か経っていたので「こういう仕事をしながらどうしてこんなことに」と、とても落ち込みました。体も上手く動かなくて、基本的に座っているか寝ているかという状態でした。

しかしながら、当時の先生の助けもあり、体が動かない中でも瞑想や呼吸法などできることは続けていました。そうしていると、呼吸ができるだけでも幸せで、何もできないように見えても実はできることがあるということに気付いて、毎日後悔しないように生きようと思うことができるようになりました。

この頃から、たとえ辛い経験だとしても、それをひっくり返せば学びがあると考えられるようになりました。

目の前の課題をこなす。そしてたどり着いた予想をしていなかったキャリア

―ヨガを本格的にはじめようと思われたきっかけは何だったのでしょう。

1回目の手術の後、それまで習い事として通っていたヨガの先生にすすめられてヨガとアーユルヴェーダのコースに通いはじめました。その先生はいわゆる「肝っ玉母さん」のような方でとても親身にリハビリに付き合ってくれたこともあり、先生のおすすめに素直に従ってみようと思いました。仕事にするつもりではなく、自分の健康のために勉強をはじめました。

1年間勉強して資格を取得し、せっかくなのでそれを活かそうと考えて、2006年からヨガを教えはじめました。その後もシンガポール滞在中は、さらにヨガのコースをいくつか受講し、トレーニングを積みました。

まり子ラベンダージョーンズさんと生徒の皆さん

生徒の皆さんと

―教えるとなると勇気が必要だったのではないでしょうか。不安はありませんでしたか?

最初はお友達の家のリビングで、知人数人に教えるところからはじめました。すると当時のシンガポールではヨガスタジオが少なかったこともあって、すぐに他の知人から「新しいスタジオでレッスンしてみないか?」とお声がけいただきました。

もちろん初めて人前でレッスンする時は緊張しましたが、あまり気負わずに教えることができました。恵まれていたと思います。当時は手続きをすれば配偶者ビザでも働くことができたので、心理的ハードルが低かったです。

―シンガポールに渡った当初は将来のキャリアについて、何か考えていましたか?

仕事については全く考えていませんでした。日本に住んでいた時も子どもが生まれてからは専業主婦をしていましたし、もともと大きなキャリアビジョンもなかったんです。

今振り返ると、シンガポールに渡って1年ほど経過した頃、子どもも幼稚園に行きはじめたしメイドさんもいる、このような恵まれた環境で「私の存在意義は何だろう」と考えて、自分にできることはないかを模索していました。しかし、その時は、「コレ!」という決め手は見つかりませんでした。

そもそも最初はシンガポールでの滞在は2年の予定でした。ところがそれが延びに延びて、結局11年になりました。一度、あと数カ月後に英国に行くと決まっていたのに、突然キャンセルになったことがありました。その出来事をきっかけに「荷物を詰めて全部送ってしまうまで、転勤話を信じることはやめよう!自分が今やりたいことをやろう!」と吹っ切れました。

がんになったことをきっかけにヨガを本格的に学びはじめ、降りかかってきた課題に無我夢中で向かっていきました。自分の周りに起こる出来事の流れに乗って、思いがけず自分に与えられた道を進んできたような感覚です。

まり子ラベンダージョーンズさん

がんをきっかけにヨガの道へ

―帯同後の孤独感からのプチうつ状態にもがきながらも、その後の闘病生活をきっかけに目の前の課題に取り組むことで現在のキャリアにたどり着いたまり子さん。後編では渡英してからの活動と、活動に対する思いをお伺いします。

【まり子ラベンダージョーンズさんの経歴紹介】

まり子ラベンダージョーンズさん

11年のシンガポールでの帯同生活を終え、現在は英国在住。シンガポール時代にストレスからくる全身アトピー、乳がん、その他による7度の手術を経験。術後のリハビリを機にヨガセラピーについて学びはじめる。現在はココロとカラダの健康応援団長として、ヨガ&アーユルヴェーダの教えにもとづくヘルスコーチングをMarikoYogaにて実施。ロンドン&コッツウォルズでの対面ヨガレッスンやワークショップ、習慣改善を目的としたオンライン講座(ココロとカラダの養生講座)とオンラインコミュニティ運営を通して、海外在住者の心身の不調を解決、元気なココロとカラダになるためのサポートをしている。

※なお、本年度の「ココロとカラダの養生講座」では3名の奨学生を募集されるそうです。
ご興味のある方はこちらのページから詳細をご確認ください。

2019年3月取材

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