蘇州と日本とで健診の内容に違いはありましたか。
日本で第一子を出産した際は、毎回の健診で経膣エコーがありましたが、蘇州では一度も受けませんでした。
妊娠初期に葉酸摂取についての指導はありましたが、体重管理やその他の栄養指導は特にありませんでした。
また、風疹抗体や子宮頸がんの検査もなく、インフルエンザなどの予防接種についても特に言われませんでした。私が経産婦だったからかもしれません。
また、今回の妊娠時に私は35歳を超えていたため、血液検査で胎児の染色体異常を調べる出生前診断と、奇形などの異常を調べる超音波検査を受けました。
私は日本人なのでどちらも任意でしたが、中国では35歳以上の妊婦は必ず受けるようです。
日本へ里帰りする前にしておいた方がいいことはありますか。
里帰りすることを決めたら、なるべく早めに日本の産院に分娩予約をした方がいいと思います。私は妊娠8週で実家近くの産院に問い合わせをしたのですが、すでに分娩予約がいっぱいになる直前でした。
あとは、現地で受けた健診のレポートをもらっておくことです。蘇州での最後の健診では、妊娠経過が順調であるという診断書は作成してもらえましたが、血液検査、尿検査などのレポートはこちらから依頼しないともらえませんでした。
レポートを日本の産院に提出すると、重複する検査を免除してもらうことができました。
産後、どのタイミングで赴任先に戻るかを決めておくことも重要です。生まれた子どもの予防接種をどこで受けさせるかに左右されると思います。
日本で受けさせる場合は、予防接種のラッシュが落ち着く生後6ヶ月頃に蘇州へ戻る方がほとんどです。中国で受けさせる場合には、予防接種が始まる生後2ヶ月までに戻るようです。
蘇州では接種できるワクチンが限られ、一部は上海まで受けに行く必要があります。そのため、私は日本で受けさせることにしました。しかし、会社規定により「帯同家族の一時帰国は最長で6ヶ月間まで」と定められていたため、産前から通算して6ヶ月間しか日本に滞在できず、生後4ヶ月で蘇州に戻り、その後は両国を往復するスケジュールとなりました。
そのような会社規定を事前に確認しておくことも重要だと思います。
蘇州でのマタニティライフ、健診で困ったことはありましたか。
蘇州名基医院では日本語が通じないため、夫の会社が契約しているウェルビー(海外医療サポート会社)に通訳をお願いしていました。担当者によって翻訳のレベルが異なり、医師からの説明がなかなか理解ができない場面もありました。
健診内容が事前に聞いていたものと違っていたり、また、その理由がうまく伝わらずに不安になることもありました。
それから大変だったのは、上の子のお世話です。当時一歳だった息子を連れての受診は困難で、夫にはいつも仕事を休んでもらっていました。
友人たちは「困ったことがあったら言ってね!」と声を掛けてくれましたが、実際に甘えることはなかなかできませんでした。駐在妻の友人たちはベビーサークルで出会ったメンバーばかりで、みんなも乳幼児を抱えていますから。でも、そうやって声を掛けてくれることがうれしかったですね。
また、お腹が大きくなってきてからは、息子を連れての外出がし辛くなりました。息子の走るペースについて行けず、日本と違って車や電動バイクが優先の街中を一緒に歩くことが不安だったからです。また、もし自分が急な体調不良になったら…という心配もありました。夫が出張で不在の期間は特に緊張しましたね。
里帰りしてよかったこと、困ったことはありますか。
やはり、産前産後に上の息子の面倒を見てもらえたことが一番助かりました。実家の母は遊び盛りの息子を毎日のように外へ連れ出し、田んぼや畑で草木や虫に触れさせながら思う存分遊ばせてくれました。大気汚染で外出が思うようにできず、自然の少ない蘇州ではなかなかできない経験です。そして、息子の日本語が急速に上達したことも大きかったです。(その分、中国語は忘れてしまったと思いますが…)
私自身は、やはり「万が一、何かあっても大丈夫」という安心感がありました。特に「また切迫早産になる可能性もある」と言われていたので、蘇州にいるときは「もし何かあったら…」という不安が常にありました。
あとは些細なことですが、魚や納豆など栄養豊富な美味しいものを思う存分食べられたことがうれしかったです。
困ったことは、出産時は自分一人で乗り切るしかないという点です。当然ながら夫は立ち会うことができないため、実家に上の息子を預けて一人で出産に臨むことは覚悟していました。
助産師の皆さんのサポートを受けながら長時間のお産を乗り切りましたが、「家族の付き添いがあれば助かったな」と思う場面は多々ありました。
これから蘇州でマタニティライフを送る方にアドバイス&メッセージをお願いします!
「過度に心配せず、過信せず」でしょうか。
蘇州で出産する日本人もたくさんいますし、妊娠経過が順調であれば心配はいらないと思います。
しかし一方で、日本では起こり得ないようなトラブルや誤診が身近で起こっているのも事実です。
健診で心配なことや不明なことがあれば、しつこく確認しましょう。日本のように手厚く情報提供してくれないので、自分から情報を取りに行かなければいけません。そして、心配な診断を受けた場合は、できればセカンドオピニオンを受けることをお勧めします。
また、中国での生活に慣れていない方には、日系クリニックか、VIP病棟での受診をお勧めします。一般病棟は想像を超える患者数で待ち時間も長く、妊婦には負担が大きいと感じました。
一方で、中国は配達文化が根付いていたり、タクシーが格安だったりと、妊婦には便利な面もたくさんあります。
悪阻の時期は、辛くて酸っぱい麺類や焼き小籠包などのジャンクフードをよくデリバリーしていました。日常の買い物もすべて宅配で済ませて、一歩も外に出ない日も多かったです。
お腹が大きくなってからは、駐在妻のママ友たちが代わる代わる遊びに来てくれて、子どもたちを遊ばせながらランチやドリンクのデリバリーを楽しんでいました。また、息子は同じフロアに住む中国人家族の子どもたちと、毎日のようにエレベーターホールで遊んでいました。日本だと近所迷惑だと嫌がられますが、子ども優先の中国では御構いなしです。
どれも中国に住む駐在妻だからこそできた過ごし方だと思います。ぜひ、中国でのマタニティライフを楽しんで、よいお産を迎えてください!