シンガポールで自身の経験からコミュニティを立ち上げ、現地と日本に発信

そこからどのように現在の「&H」を形成されたのですか?

2018年11月に、Facebookで承認制グループを作り、そこにヘルパーさんに関するコンテンツを1日1件投稿することから始まりました。
投稿内容は、「初めてヘルパーさんを雇用する方法」や「MOM(人材省)が規定するヘルパーさんに関するルールを日本語に抄訳したもの」などです。
ありがたいことにFacebookグループの参加者は口コミや紹介でどんどん広がっていきました。恐らく、日本語でこのような情報を共有する場が他になかったからだと思います。

その後、並行してWEBサイトをオープンしました。WEBサイトでは、日本人向けの情報発信だけでなく、ヘルパーさん向けのコンテンツとして、技術向上のためのセミナー情報なども徐々に増やしているところです。

また、シンガポールで発刊されているフリーマガジンや情報サイトからお声がけをいただき、現在はそちらにも「&H」のコンテンツを掲載させていただいてます。
ヘルパーさんはシンガポールの生活にとって大きな存在であるものの、それについて取りまとめている団体がなかったため、声を掛けてくださったようです。それにより、また認知度が上がっていきました。

運営の様子を教えてください。

コミュニティは約1年ほどボランティアとして運営していましたが、「法人化することでより持続可能な活動にできるのではないか」と考え、運営メンバー3名で法人化に踏み切りました。
現在はその3名で役割分担をして運営しています。
週に一度はオンラインでインターナルミーティングを行い、事業企画や進捗管理をしています。

コミュニティを運営してく上で鍵になるのは、やはり一緒に運営しているメンバーのチームワークだと思いました。
メンバーは私と同じ駐在妻ですが、そのキャリアやスキルの高さ、経験の豊富さには驚かされてばかりです。幸運なことに非常に素晴らしい運営メンバーに恵まれました。文才に秀でた方、マーケティングやPRに長けた方など、特に個々が得意とする分野が異なることでより良い相乗効果が生まれています。同じ船に乗る仲間というのはとても重要な存在です。

また、より魅力的な発信ができるようコンテンツづくりにも力を入れています。
ヘルパーさんとの暮らしは私たちの生活そのものです。ヘルパーさんはありがたい存在であると同時に、外国人と一つ屋根の下で暮らすことは雇用主にとってもヘルパーさんにとってもストレスを感じる瞬間が多々あります。そんなストレスを少しでも和らげるお手伝いができればと、面白いと思ってもらえるようなコンテンツも提供できるように心掛けています。

写真提供:&H

取り組まれていて難しいと感じる点はありますか?

立ち上げてまだそれほど時間が経っていないので、正直なところまだ道半ばといったところです。現時点で言うならば、優先順位のつけ方の難しさを感じています。

あれもこれもとやりたいことのアイディアがどんどん浮かびますが、時間や労力、予算など様々な制約から全てを一斉に実現することはできません。優先順位や実現可能性を鑑みてプロジェクトマネジメントし、少しずつ形にしていく必要があります。
私は、どんなに小さいことでもアイディアを形にしていくことが大切だと思っています。そこから市場の反響をみることができますし、自分たちの成果や改善のポイントが見えてくるからです。

また、個人的には時間の捻出が課題です。小さい子どもがいますし、ヘルパーさんがいてくれるとはいえ、母親としてすべきことはたくさんあります。
現在は生活時間を基軸として、隙間時間に仕事をするというスタイルにしていますが、子どもの成長に伴い、生活リズムは変化しますし、仕事も変動するものなので、都度バランスを見直さなくてはいけないと思っています。

ご自身の活動に対して家族の反応はどうでしたか?何か協力を求めるようなことはされましたか?

主人は元来、私に対しては働いた方がいいと思ってくれていたので、働くことにもコミュニティの立ち上げにも肯定的でした。
ヘルパーさんもいるため、主人に家事や育児のために時間を割いてもらうことはありませんが、私が土日に仕事が入った場合には、子どもの習い事に付き添ったりしてくれています。
また主人には、コミュニティの運営についての相談や、アドバイスを求めることがあります。客観的な意見を伝えてくれるのでとてもありがたい存在です。

吉田さんの今後の展望についてお聞かせください。

これは「&H」を立ち上げたときからの想いなのですが、私はヘルパーさんという存在を日本の皆さんにも知ってもらいたいと思っています。
シンガポールと同じ仕組みを日本で再現することは難しいと思いますが、家事や育児のアウトソースが広がっている日本社会において、シンガポールでの様子を知ってもらうことで、何かのヒントにしてもらえたらと思っています。

また、ヘルパーさんたちもいずれ自国に戻ります。&Hを通じて学んだことを、今後彼女たちが自活する際に役立ててもらえたらとも思っています。

私は日本に本帰国した後もこの活動を継続していきたいです。

最後に、ぜひ駐在妻の皆さんに向けたアドバイスをお願いします!

滞在国のビザやご主人の会社の都合上、働くことができない方も少なくないと思います。しかし、ボランティアという形でもやりたいことを形にすることで、その後のキャリアに繋がる可能性もあると考えています。
海外に住むことで、日本との慣習のギャップや、サービスの違いなどたくさんのことに気がつく機会が多いはず。その差を埋めることで、日本あるいは海外に住む誰かのお役に立つことができるのではないかと思います。

皆さんの海外生活が貴重な経験になることを願っています。

【吉田麻里さんの経歴紹介】

写真提供:&H

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)に入社後、博報堂コンサルティングにてブランディング、マーケティングコンサルティング業務に携わり、その後はグリー株式会社にてグローバル戦略や新規開発事業などに従事。ご主人の海外赴任に同行するため、休職してシンガポールでの生活がスタート。
第1子出産を機に退職し、現在はシンガポールにて、住み込みヘルパーさんの雇用主、あるいは雇用に興味のあるシンガポール在住日本人向けのコミュニティ「&H」を運営。承認制のFacebookページにてコミュニティの運営を、また「&H」のWEBサイトで情報発信や情報発信やセミナーなどの企画運営を行っている。

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