日本との違いで戸惑ったことがあれば、教えてください。
世界中から集まる留学生と暮らすため、「自分の意見をはっきり言わない=意見がない」と思われてしまうことが、彼らには大きな試練になったと思います。
また子どもが小さい頃の海外生活とは異なり、すでに日本の学校や学習の仕方になじんでいたため、特に学習面では戸惑いが大きかったようです。
例えば、長男の経済の課題で、何を問われているのか意図がつかめず、まったく点が取れないということがありました。先生に聞くと、「答えはひとつではなく、まして模範解答を求めているのではない 。君自身の意見は? 君自身が想定した結論を導き出すまでのロジックが重要。過程にこそ意味がある」と言われたことがありました。
日本ではどうしてもひとつの正解を求める勉強が多いですが、こちらでは概念的な質問がほとんどです。まず自分はどう思うのか?ということから始まる勉強法になじむまで、かなり苦労したようです。こちらの子どもたちは、小さい頃からそういう教育を受けているので、当たり前にできると長男は言っていました。
このエピソードはとても興味深く、まさに留学したからこそ得られた考え方だと思います。これは単なる言葉の壁という問題ではなく、文化の違い、教育の違いと言っていいと思います。今後、彼らが世界を相手に生きていく中で、大変役に立つ力だと思います。
学校選びについてお子さまとはどのような相談をされましたか?また、通われたお子さまの感想はいかがですか?
この年代の子どもを帯同する場合、やはり子ども自身の気持ちを無視することはできません。我が家の子どもたちも、日本の学校や友達が大好きだったため、当初は猛反対されました。
しかし留学経験のある先輩と会って話をし、「これからの時代、グローバルで活躍するには何が必要なのか?」ということを議論するうちに、本人たちの考えが変わってきたようで、最終的には、本人たちから「挑戦してみたい」という言葉を聞くことができました。
実際には思ったよりも早く学校や勉強に慣れ、ボーディングスクールの生活を満喫しています。当初、1年間の留学を予定していた長男は、自ら留学を延長し、こちらの高校を卒業する選択をしたことからも、いかに充実した生活を送っていたかがわかります。2年経った今では、二人とも「来てよかった」と言っています。
入学・転入前に、お子さまは必要となる言語の学習をされましたか?
息子たちの場合、受験対策だけではない英語塾に通わせて、スピーキングやライティングの学習にも力を入れていましたが、それでも最初はついていくことが大変だったようです。やはり、これくらいの年齢で現地校へ編入する場合 、英語力が高い方が編入後も楽になるので、事前の英語学習には力を入れた方がよいと思います。またボーディングスクールへスムーズに編入するために、編入前に、ボーディングスクールでの生活に慣れるための準備校に通うこともおすすめです。
入学・転入前に、語学学習以外でやっておいてよかったこと、やっておけばよかったことがあれば、教えてください。
こちらの学校では、芸術、スポーツ、学習など、どの分野であっても「これだけは誰にも負けない!」というような、他人よりも秀でている特技があると、周りから一目置かれることがよくあります。例え英語でハンディがあっても、それらがコミュニケーションを図るきっかけになるので、ぜひ得意なことを作っていくことをおすすめします。
ちなみに、日本の数学教育は格段に進んでいるので、数学に関してはかなり有利です(笑)。
お子さまの今後の学校、教育について、どのようにお考えですか?
長男の場合は、イギリスと日本、両方の大学進学を想定して勉強を進めていましたが、今回第一志望のイギリスの大学に合格し、進学することになりました。
結果が出るまでは、日本の大学受験の準備と、現地の学校の勉強とで、普通の受験生以上に忙しく、考えなければならないことも桁違いに多くなりましたが、 「選択肢が増えて面倒くさい」とは受け取らずに、「選択肢が増えて、世界が広がったね」と前向きに捉えるようにしていました。
こちらの大学進学は、事前に大学に出願、大学入学資格検定(A-level)試験の結果をもって合否が決まるというのが通常のシステムです。
しかしながら、2020年はコロナの影響で検定試験が中止となり、学校がつけた成績に対して、国が独自の算出方法で調整したものを採用すると決まったものの、それを不当だとする抗議がおさまらず、揺れに揺れました。しかし一転して、学校がつけた成績を採用するという前代未聞の事態になりました。
長男も、まさにその渦中に巻き込まれたひとりでした。その混乱の中、通っていた高校や大学とやり取りを続け、ついに合格を勝ち取った彼の眼には、やり切ったことで得られた自信が満ち溢れていました。
大学では、もともと好きだった西洋美術への愛がヨーロッパに住むことでさらに深まったようで、西洋美術史を専攻します。引き続き本場のヨーロッパで学べることは、とても幸せなことだと思います。イギリスの大学で西洋美術史を学ぶなんて、日本で普通に暮らしていたら、絶対に選ばない道だったでしょう。
またこちらではギャップイヤー(大学進学前に1年間、いろいろな経験を積む)を取得することがよくあり、彼も日本やヨーロッパを回り、様々な人の話やインターンシップを通じて、今後学びたいものをよりクリアにさせてから学び始めるようです。これも、大変貴重な経験になると思っています。
次男の場合は、高校卒業まであと3年あるので、引き続き、いろいろなことにチャレンジしてほしいと思っています。
これから海外で学校選びをされる方へメッセージをお願いします。
中学生以上のお子さまを帯同する場合は、お子さまご本人と十分に話し合うことが何より大切だと思います。そして、子どもたちが留学すると決めたからには、ぶれることなく突き進むこと。親が揺れていては、 子どもたちが自分の出した結論に自信がなくなり不安になってしまいます。そして、実際に苦労することがあっても、「この経験は彼らの人生における宝になる!」と信じて励まし続ける覚悟が必要です。
せっかく海外で暮らせるチャンス、ぜひ親子で挑戦してほしいと思います。応援しています!
あとがき
インタビューを通じて、世界各国から集う仲間とともに成長していくお子さまの姿が目に浮かんでくるようでした。
ご自身の経験と本帰国を見据え、お子さまたちの気持ちと向き合いながら、現地のボーディングスクールを選択されたNaomiさん。学校や寮生活、さらにコロナ禍での受験を通して、数々の困難や戸惑いに直面する中、多感な時期のお子さまたちを常に励まし、前向きに寄り添いつづけた姿から「子どもたちを信じること、親が前向きでいること」の大切さに気づかされました。お子さまたちのさらなる成長が、とても楽しみです。
Naomiさん、貴重な体験談をどうもありがとうございました!