渡航前から本帰国後まで、不安な私を支え、飛躍させてくれた2つのコミュニティ

次に、本帰国後に運営メンバーとして参加した「駐在ファミリーカフェ」について教えてください

渡航時の不安を乗り越えて充実した駐妻生活を送っていた矢先に、この生活が突然終わることになりました。それは、夫が心身ともにバランスを崩し、駐在員としての仕事を続けることが困難になり、本帰国することになったからです。やっと生活が落ち着いてきて自分や子供の居場所もでき、まさに「私の駐妻生活はこれから!」という時期でした。ちょうど学期末で本帰国する友達を送別した直後で、まさか自分たちも本帰国になるとは思いもしませんでした。先述したコミュニティの運営メンバーにもなったころでした。

呆然としていたころ、偶然『駐在ファミリーカフェ』が行った『海外駐在員と帯同家族向けアンケート』をSNSで目にしました。このアンケートは、駐在員とその家族のサポートを充実することの必要性を広め、赴任先での苦悩や失意に苛まれることの防止につなげることを目的として調査されたものでした。私は夫の不調を知った時に、何とか回復させようと病院やカウンセリングに頼りましたが、一方で、夫の会社にはさまざまなしがらみを気にしてしまい、相談できず辛い気持ちを抱えていたので、「企業による駐在員と家族のサポート」というキーワードがとても心に残っていました。

そして、このアンケートと同時期に、『駐在ファミリーカフェ』の運営メンバーの募集がありました。「自身の辛い経験から同じようなことで悩む駐在家庭に向けて何かできることがあるかもしれない!」と思ったこと、そして「想定外に短かくなってしまった私の駐妻生活に意味を持たせたい!」「私の経験も誰かのためになる時があるかもしれない!」という気持ちが湧き上がり、『駐在ファミリーカフェ』の運営メンバーとして活動することを決めました。

『駐在ファミリーカフェ』ではどんなことをされていますか?

運営メンバーになった当初は、何をしたらよいかわからなかったことに加え、本帰国前後の忙しさや日本での再就職活動への焦りの気持ちが勝っていて、半年ほどはただ名前だけ参加している状態でした。

しかし、半年が過ぎたころから、私自身も興味があり経験を活かせることから出産育児チームに所属をし、海外での学校選びや子育て情報の発信に携わるようになりました。メンバーは5名ほどいて、情報提供者からの出産や育児、学校選びに関する体験談などの原稿を校正して記事にしていく様子や、チームとしてどんなことをしたいかといったやりとり、世界各国にいる運営メンバーのさまざまな視点や主体的に動く姿に触れるようになりました。

他のメンバーと接する機会が増えるにつれ、メンバーのこの活動に込めた真摯な思いや、各自がそれぞれできる範囲で無理なく楽しくやっていることを感じるようになりました。メンバーの皆さんが入り込めていない私に、積極的に声掛けをして入りやすい雰囲気を作ってくれました。

「私もできることを少しずつやっていこう」と、情報提供者とのやりとりや原稿校正、企画提案などの活動をはじめていきました。すると、駐妻生活で得た視点や経験が活かせる部分がたくさんあることに気づき、このコミュニティで活動することが楽しみになっていきました。ここで積極的に活動することが、自己成長につながり、社会貢献もできているという実感も得られるようになりました。振り返れば、帰国直後は再就職に気をとられるよりも『駐在ファミリーカフェ』の活動にもっと時間を割けばよかったとさえ思うほどです。

2つのコミュニティでの活動を通して得たことはなんでしょうか?

私は運営メンバーとしての活動を通していろいろなことを感じ、成長できたと思います。「仕事」だけではなく、人生そのものを「キャリア」として考えるという概念も、この活動を通して感じるようになり、自分のキャリアに向き合い、自分のキャリアも他人のキャリアも大切にしたいと思うようになりました。

渡航前には、「夫の都合で自分が会社を退職して、日本に帰国した後はどうするのだろう?私、再就職できるの?」という不安でいっぱいでしたし、本帰国した今も再就職できるか不安なことに変わりはありません。

私はこの2つのコミュニティでの活動を経験したことで、駐妻生活を「飛躍」の場にするためのサポーターや仲間がたくさんいるということ、社会を変えるために自分にもできることがあり、少しずつでも動くことで自分も貢献できるということを実感しました。仲間との出会いも、本当にかけがえのないものだと思います。

そして、渡航前よりオンラインツールに抵抗がなくなったことも大きな収穫です。新型コロナウイルスの影響でテレワークがひろがっているこのタイミングに、この経験が活きてくると確信しています。

私の短かい駐妻生活でも、経験していなければ見えなかった世界を見ることができました。また、その経験が誰かの役に立つということもわかりました。それにより、駐妻生活を「ブランク」ではなく「飛躍」の場にできたのではと思います。

ぜひ、駐在妻の皆さんに向けたアドバイスを!

駐妻生活は夫の都合によるものかもしれませんが、自分の人生を一旦リセットして自分を見つめ直すいい機会だと思います。現地ではもちろん、今はオンラインで世界中どこでも繋がれる時代なので、自分がピンとくるコミュニティに参加することで自分のありたい姿がみえてくるかもしれません。ぜひこの貴重な駐妻生活期間に自分に向き合い、自分の人生の糧を得る経験をしてほしいと思います。

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