度重なる海外生活でも、キャリアを紡ぎ豊かにするには <後編>

経験は繋がり、さらに豊かに

―2018年、4度目の滞在地リオでも日本語教員をされたのですか?

リオでは、教育機関での就職は考えませんでした。理由は、夫の任期が短いこと、現地就職するには彼らの母国語であるポルトガル語ができないと難しいこと、そして、リオには日系人が多く、すでに日本語教師がたくさんいたことからです。

そこで、リオではドバイ渡航前に取得していた茶道の資格を活かして、日伯文化協会というカルチャーセンターのリオ支部で茶道講師になりました。ここでも、夫の帯同ビザで許容される範囲での活動です。渡伯の年はちょうど日本からブラジルへの移民110周年だったこともあり、各地で開かれた記念行事に呼んでいただき、多くの方にお抹茶と和菓子を召し上がっていただけたのがうれしかったです。
リオには2年滞在し、2020年に帰国しました。

ボランティアの茶道講師

―4度の海外生活を経て、いま日本ではどのようなことをされているのですか?

いまは、日本在住中のかつての教え子たちと頻繁に会いながら、駐在地で得られた素晴らしい出会いに幸せを感じています。例えば、日本人と結婚して日本で働いているバンコクの教え子、東京のホテルでキャリアを積んでいるドバイの教え子、日本にインターンシップに来ているロンドンの教え子、日本に留学しているリオの茶道教室の教え子など……。

夫が数年後にまた海外赴任になりそうなので、あいにく常勤で働くことができません。しかし、日本語教育は続けており、都内の老舗語学学校の非常勤講師としてアラブ人とイギリス人に日本語を教えています。ここでも、それぞれの国での経験が活きていますし、地域研究や執筆活動も続けています。各国での経験が、こま切れではなく繋がっていること、そしてますます豊かになっていくことを実感しています。

チャンスを手にするためには

―海外生活中の経験をキャリアに繋げたいと考える駐在妻たちへのメッセージをお願いします

現地就労に関して言うと、私の経験談から、採用側は特にコミュニケーション能力を重視していると感じました。手段としての語学(特に英語)はもちろんですが、職場で同僚たちとうまくやっていきながら職場の発展にも貢献できるという能力です。そして、私の場合、日本語教師という技能の他にも、茶道や武道を長年学んでいたことがプラスとなりました。日本の文化を深く知っている日本人を外国の方々は尊敬してくれます。日本文化に限定しなくとも、スポーツや楽器、絵、歌、手工芸などの趣味や特技を何かしら持っていれば、そこからチャンスが広がるでしょう。

そして、駐在妻の就労において何より重要なのは、夫と所属先の会社がそれを認め、夫の協力が得られることです。私の夫は「家事に大きな支障が出ない限り、妻が望むなら、能力を生かしてやりたいことをやってほしい」と考えています。駐在妻の就労に理解を示してくれる会社や男性が増えることを願っています。

仕事に就いたら楽しいことばかりでなく、嫌なことも苦しいこともあります。しかし仕事をすると決めたからには覚悟と責任感を持って遂行してほしいです。ただ、大半の駐在国では、法律や社会情勢の関係もあり駐在妻の就労は難しいのでしょう。しかし、ボランティアでも立派な業績になります。ボランティア経験を日本での就職活動時に活かしたいならば、責任者などから業務の時期や内容、自身の評価などを記した証明書を書いてもらうことをおすすめします。

海外での生活を楽しく過ごせるかどうか、実りのあるものにできるかどうかは心がけ次第かもしれません。「チャンスは準備のできている人の元に訪れる」という言葉もあります。できることにはすぐに取り組み、出会いを大切にし、新しいことにチャレンジし、現地の友人をたくさん作って楽しんできてください。

【お願い】駐在妻の就労条件は各国の税法上の規制や会社の規定により異なりますので、ご自身で最新情報を確認ください。

運営メンバーA
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