アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク市でお子さんがインターナショナルスクールに通っている、Kさんへのインタビュー(後編)です。
後編では、インターナショナルスクールに通わせてみてよかったことや今後の教育などについてお聞きしました。
前編はこちらの記事をご覧ください。
自己紹介をお願いします。
Kです。2018年からアメリカNY州に住んでいます。
お子さまはどのような幼稚園・学校に通っていますか?
2018年9月に現地プレスクールに入園(2歳)
2019年4月から2022年3月まで日系幼稚園の土曜補習校にも通学(3歳〜6歳)
2019年9月にモンテッソーリ系プレスクールに転園(3歳〜6歳)
2022年9月からインターナショナルスクールに在籍中(1st Grade〜現在)←後編はこちらの学校選びについて
その選択をされた理由をお聞かせください。また、いつ頃から考え始めましたか?
NY市で公立校ではなく私立校に進学する場合は、PreK(Kindergartenの1年前の年齢より開始)の年齢で受験をして、Kindergartenから私立学校に行くことが一般的です。
住居を決めた2018年当時、住んでいた学区の公立校は評価が高く、我が家は駐在でもあるため私立受験は考えていませんでした。
しかし、コロナ禍を経て状況が変わったため、公立校以外の選択肢を考えることにしました。
当時通っていたプレスクールでは異年齢保育が導入されており、3歳〜6歳まで同じ教室で学びます。
一人ひとりの発達に合わせて学ぶ環境が整っているモンテッソーリ教育が子どもに合っていたこと、本帰国も近いうちにあると思っていたことと、まだコロナ禍対応をしている学校が多く学校見学の機会などもない状況で判断が難しいと感じていたこと、などの理由で、ひとまずもう1年そのままプレスクールに通うことを決めました。
そのプレスクールにはエレメンタリー(1st Grade以上)もあり、そのまま進学するかとても悩みました。
ただ、付属のエレメンタリーは生徒数が少なかったこと、モンテッソーリ教育の小学部は当時日本ではほぼ認定校がなく本帰国後の選択肢が狭まる可能性があることなどの理由で、違う学校へ移ることを考えはじめました。
2020年夏頃から情報収集をし、学校のオンラインツアーやオンライン説明会には出席していましたが、その年は上記理由から受験を見送ったため、実際に受験のための準備や手続きを始めたのは2021年秋からです。
どんな情報を参考にされましたか?実際に見学する機会はありましたか?
自宅から通学範囲内(徒歩圏内)の私立学校というと3校ほどに限られます。
NYマンハッタンという土地柄、テロなど有事の際に徒歩で駆けつけることができる学校にするというのが私たち夫婦の共通の見解です。教会系、国連系、ブリティッシュスクールの3校の中から、教育方針がもっとも合っている1校に絞って受験しました。
また、同じアパートメントや近隣に住む日本人家庭でお子さんを通わせている方を数人知っていたので、実際の話を聞かせてもらう機会を設けました。
受験のプロセスの中に学校見学が組み込まれていたため、保護者のみスクールツアーに参加しました。
ズバリ、何が決め手となって、その幼稚園・学校を選びましたか?
- 世界中の外交官や国連関係、駐在員などとても多様性のあるルーツの子どもが通っていること
- PreKから高校まである規模が大きい学校であること
- そのため、学校行事の規模も大きいこと(フードフェア、中学生が演じるミュージカル鑑賞など)
- IB校であること
- 国連と関連したイベントも多いこと(国連NY本部の見学、世界の学校とオンラインで繋いで子どもの平等や学ぶ権利についてディスカッションするイベントなど)
- Kindergartenのクラスから、担任の先生以外にScienceやPE(体育)、Art、Musicや第二外国語などは専門の先生が担当すること
実際に通わせてみて、よかったことは何ですか?
NY州の中でもかなり多様性のあるバックグラウンドの友人ができたこと。
子どもと会話をしていると、日本で生まれ育った私自身の幼少期とは比較しようがないくらい、柔軟な考え方で物事を捉えていると感じます。
人種や目の色、肌の色が違うことがあまりにも当たり前の文化の中で生きているので、子ども自身は「違い」をとくに意識していませんが、幼少期にこのような文化での経験は何事にも代えがたいものだと感じます。その分、日本への一時帰国時にTVを見るとパッと見てアジア人しか出ていないことに違和感を感じるようです。
また、良くも悪くも世界情勢が子どもたちの日常会話にも出てきているので、世界の動きに敏感になります。
以前カナダの山火事でNYに大気汚染が到達した時には、教室で過去の山火事の映像を見て原因について話を聞いたり、今後のために自分たちができることについてディスカッションをしたりしたようです。
世界で起きた出来事に対してはすぐに校長や理事からメッセージが届きます。
とくに民族間の対立に対しては「この学校はすべての生徒が自分自身の意見をを安心して共有できる場所です。クラスでそのような機会がある時は、相互理解と相手への尊敬、共感の気持ちをもって対話できるように、全職員が努めます。」とメッセージが来た時には、この学校に通わせて良かった、と実感しました。
Peace Tableと言って、「クラスメイト間で何か行き違いや問題が生じた際に、子ども同士の話し合いで解決をする」仕組みがあります。必ずどの教室にもそのための場所が設けられています。
子ども曰く、大人は基本的にその場所に立ち会わないそうですが、幼少期から自分の意見をまとめて相手にわかりやすく伝えたり、相手の話を聞いたりするといういい訓練になっていると感じます。
徒歩圏内ですが、普段の通学はスクールバスを利用しています。バスに乗っている時間は10分弱ですが、子どもにとっては新しい挑戦の機会になっています。
NY州では13歳未満は保護者(ナニーなど含む)と一緒にいることが定められているため、これまでずっと学校への送迎は付き添いをしていて、大人と離れる機会がありませんでした。日本へ本帰国した後の通学について心配があったのですが、練習の場としては貴重な機会になっていると感じます。(自分でバックパックを背負ってバスの乗り降りをすることや、教室から自分のバスに乗り込むこと程度ですが)
期待や予想と違っていたことはありましたか?
1.ESOLへの参加がほぼ認められないことです。
在米年数は長いため英語のSpeaking、Listening、Writingは問題はありませんが、家庭では日本語を話しているため、当然ネイティブスピーカーと同等には英語を扱えません。
ですがインターナショナルスクールの特性上、そういった家庭は珍しくなく、ESOLへの参加条件が想像以上に厳しかったです。
ESOLでない生徒は、1st Gradeから第二外国語として、フランス語とスペイン語のうちどちらかを選択する必要があり、週4回授業があります。6th Gradeからは第三外国語の選択も必須となります。幼いうちから多言語にふれ、ネイティブスピーカーの先生から言語を学ぶことは貴重な機会ではありますが、日本語、英語に加えてもう1言語学ぶことは想像以上にハードです。
2. 多様性がある反面、特定の民族の休みは一律考慮されないため、学校の休みが公立校や他の私立校とまったく合わないことです。
連休中は子ども向け施設ではデイキャンプが開催されることが多いのですが、休みがいつもずれているので利用できたことがありません。
3. 宿題がほぼないことです。
説明会でも宿題についての学校のスタンスは聞いていましたが、予想以上に少なかったというのが実情です。毎日のReadingの他は、たまにある特別な授業のための準備程度です。(例えば、新学期には夏の思い出を教室でシェアするために、写真などを準備したり、家族で話しておくことが促される程度)
ただ私たちにとっては、その分家庭で日本語での学習をする時間が取れるので、良かったと思っています。
日本との違いで戸惑ったことがあれば、教えてください。
アメリカに来たばかりでは無いので、そこまで戸惑うことはありません。
ただ、以前の学校と比べて規模がかなり大きい学校であるにもかかわらず、イベントなどに関する連絡が直前に来ることには驚きました。また、毎年新しいシステムが導入されるなど、過去を踏襲しないことも多く、2年目の今年も新しいことだらけです。
例えば、今年度より新しい登下校システムのアプリが導入されたのですが、「詳細は近日中に連絡します」とアナウンスされたまま新学期初日を迎えました。初日の午後1時に「今日の午後2時までに登録をしてください。その時間をすぎると学校では対応できません。」とメールが来ました。(笑)
どうもシステムの導入がうまくいかなかったようなのですが、あまりに直前過ぎる連絡に驚きました。保護者のWhatsAppグループでも質問が飛び交っていました。
それでもなんとかなる(してしまう)文化にいると、日本の緻密さや用意周到さを素晴らしいと思う反面、窮屈に感じることもあります。
幼稚園・学校選びについて、お子さまとはどのような相談をされましたか?また、通われたお子さまの感想はいかがですか?
プレスクールの頃とは違い、自分で判断できる年齢になっていたので、このまま同じ学校のエレメンタリーに進むか、他の学校を受験するか相談しました。
まずは2つの選択肢のメリット・デメリットを説明した上で、私たち両親の意見についても伝えました。当時はまだコロナ禍の対応で、学校見学に参加できるのは保護者のみ、受験のプロセスもすべてオンラインのみでしたが、学校や先生方の雰囲気を掴んでもらうためにオンライン説明会は子どもにも聞いてもらいました。
実際に通いはじめた当初は、以前のプリスクールとの規模の違いや新しい友だちとの付き合いで毎日疲れ切っていましたが、親の心配をよそにすぐに慣れました。最初の頃は、授業の話よりも休み時間に誰とどんな遊びをしたかの話題ばかりだったので、学校で何をしているのか分からず心配になりました。
年2回Parents teacher conferenceという保護者と担任や教科担当の先生方と面談する機会があり、徐々に学校での様子も分かり、安心しました。
その他、校長先生から保護者向けに毎週末メールが来たり、先生方が動画や画像を投稿し、保護者が閲覧できるWebサイトでいつでも学校の様子を見ることができたりします。元々友だちと遊ぶことや学校に通うことが好きなタイプでしたが、今では体調不良の時でも絶対休みたくないというくらい毎日楽しく通っています。
また、他学年の子とも接点があるようで、学校内や家の近所で見かけると話しかけたりしています。第1子のため、学校で年上の子と接点があることは良いことだと感じています。また、フードフェアや国連見学、外部の施設での音楽祭など多種多様なイベントも楽しんでいるようです。
お子さまの今後の学校、教育について、どのようにお考えですか?
子どもたちが大人になる頃には、今とはまったく違う世界のあり方になっていると考えています。日本国内だけで人生を捉えるのではなく、多様な人との繋がりや文化・コミュニティで生きていって欲しいと思っています。
今NYで生活している経験が将来必ず活きてくると思うので、友だちとの繋がりや英語力などを維持することをサポートするのが親の役目だと、夫とも話しています。
この先、どこで生活していても幸せに生きていける力を身につけていってほしいので、日本に本帰国後はそういった方針に合う学校が見つかるといいなぁと考えています。子どもと相談しながら、家族でベストな選択をしていきたいです。
また、今後の人生で続けていける好きなことや熱中できることを見つけて欲しいと思っているので、「その何か」を見つけるサポートを今はしています。
体操・バレエ・スケート・コンテンポラリーダンスなど、子どもがやってみたいと言ったことには、まず習いごとで挑戦しています。チャレンジする勇気、技術を習得するための忍耐力、親や学校の先生以外の大人とコミュニケーションの機会などを得られるといいと考えています。
これから海外で幼稚園・学校選びをされる方へメッセージをお願いします。
海外駐在同行が決まった際に気になるのは、お子さんの現地での生活や学校選びかと思います。事前の情報収集や口コミも役立つとは思いますが、大切なのは現地で自分の目で見てしっかり判断することだと感じています。
そして入学した学校に通い始めてみて、もしもお子さんに合わなければ学校を変えることを厭わなくていいと思います。日本では珍しいことかもしれませんが、海外ではよくあることです。
これから渡航される皆さんにとって、最良の出会いがあることを祈っております!