海外で出産しました【カナダ・トロント】

カナダ・トロントに滞在中、第一子を出産されたMさんのインタビューです。

自己紹介をお願いします

2023年10月からカナダのトロントに住んでいるMです。

妊婦健診~出産まで、簡単に流れ(スケジュール)を教えてください。

2024年〜2025年にMount Sinai Hospitalで妊婦健診と出産をしました。

妊婦健診の流れを教えてください

妊娠9週目まではファミリードクターで診てもらいました。

そこでMount Sinai Hospitalを紹介してもらい、12週目から出産まではそちらを受診しました。妊婦健診の頻度は日本と変わりませんが、検査内容が日本よりずいぶん少ない気がします。基本的には血圧、体重、心音のみで、必要な場合のみ採血、検尿、エコー検査を受けました。

*ファミリードクター:かかりつけ医のこと。家庭ごとにファミリードクターを登録し、まずはそちらを受診してから必要に応じて専門医や総合病院への紹介状を書いてもらうのが一般的。

海外と日本で妊婦健診に違いがあったら、教えてください

カナダ・オンタリオ州の健康保険OHIPに加入していると、妊婦健診費が無料となることです。

健康保険の適用範囲は必要最低限の検査になりますが、私には特に問題ありませんでした。例えば、日本では健診の度にエコー検査を受けることが一般的かと思いますが、カナダでは出産までに通常3回しかエコーがありませんでした(追加で必要な場合は検査してくれます)。NIPT検査(非侵襲性出生前遺伝学的検査)やワクチン接種も自己負担なく受けることができた点はよかったです。

OHIP:Ontario Health Insurance Planのこと。カナダでの健康保険は州政府の管轄となっているため、州ごとに事情が異なる。

海外での妊婦健診で、不安や心配なことはありましたか?

初回のみ夫が一緒に来てくれましたが、その後は一人で受診していたので英語でのやりとりが不安でした。先生に聞きたいことは事前にメモをしたり、専門用語やワクチンの種類などわからない言葉が出てきたら、その場で翻訳サイトを使って調べたりしていました。

出産までの流れを教えてください

初産なので陣痛が5分間隔になれば病院に来てくださいと言われており、それまでは自宅で待機していました。陣痛が始まって1時間ほどで5分間隔になり、配車サービスで病院に向かいました。

トリアージ室に通されて問診や内診があり、子宮口5cmで人口破水の処置を受け、着替えて分娩室に向かいました。痛みもどんどん強くなってきたので、硬膜外麻酔をお願いし、痛みに耐えながら副作用などの説明を受けました。陣痛に耐えながら背中を丸める姿勢が一番きつかったですが、投与すると一気に痛みがなくなり感動したのを覚えています。そこからゆっくり赤ちゃんが降りてきて、6時間後に無事出産しました。

なぜ、海外での出産を選ばれたのですか?不安はありましたか?

第一子だったので、夫と誕生の瞬間を分かち合いたいと思い、海外での出産を選びました。夫のサポートがあり、日本から母も手伝いに来てくれたので、大きな不安はなかったです。

海外と日本で出産に関して、違いはありましたか?

麻酔科医が常駐しているため、麻酔の種類を含めた分娩方法を当日に選ぶことができることです。私の場合は、無痛分娩で使われている硬膜外麻酔・笑気麻酔・経口痛み止めから選ぶことができました。 硬膜外麻酔をお願いしてから副作用の説明があり、すぐに麻酔科医が来てくれました。平日の昼間だったため対応が早かったのですが、夜間や休日だと時間がかかることもあるようです。

海外出産してよかったこと、困ったことについて教えてください。

24時間後に退院と聞いてはいましたが、本当にその通りでびっくりしました!なんとか家に帰ることはできても、その後の生活は思うように体が動かず、夫や母のサポートがありがたかったです。

日本のような豪華な食事は出ないため、食べたいものは宅配サービスを利用したり、家族に持ってきてもらったりしていました。病院では以下のような食事が提供されていました。

  • 朝食:パン、シリアル、牛乳、コーヒー、バナナなど
  • 昼食:パスタ、サラダなど
  • 夕食:チキンライス、サラダ、チーズ、クラッカーなど

妊婦健診から出産費用まで自己負担がなかったことを考えると、非常にありがたかったです。

また、カナダは出生地主義を採用しているため、子どもはカナダ国籍を取得することができました。将来本人が日本またはカナダの国籍を選択できるという点もよかったと思っています。

出産前後に、特別にお手伝いはお願いされましたか?

日本から母が2カ月半サポートに来てくれました。夫も3週間育休を取ってくれたので家事や育児を分担でき、心にも余裕を持ってかわいい新生児期を過ごすことができました。

その時の準備などについて、教えてください

母の航空券は出産予定日の2カ月前になってから予約しました。それと同時に、母が短期滞在するための家具付きのコンドミニアムを探しはじめ、ローカルサイトを利用して自分たちが住んでいるコンドミニアムと同じところで契約をしました。初産だったので予定日よりも遅くなるかなと思いつつも、出産予定日の10日前に来てもらいました。実際は出産予定日から5日後に生まれたので、それまでは日常生活に必要なお店を案内したり、近場の観光地を巡ったり、結果的に母とゆっくり過ごせたのでよかったです。

お手伝いをお願いしてよかったこと、困ったことについて教えてください

食料品のお買い物や家事、育児のサポートをしてもらっていました。しっかり体を休めることができたので回復も早かったです。同じコンドミニアムで部屋を取っていたので、夫も気兼ねすることなく日常生活を送れていたと思います。

海外での妊婦健診、出産費用は日本より高いと聞きますが、いかがでしたか?

カナダ・オンタリオ州の健康保険OHIPに加入していれば、妊婦健診・出産費用は全て無料だったので、本当にありがたかったです。通常は4人部屋ですが、個室や2人部屋がよければ、1泊3〜5万円ほどで選ぶこともできました。

妊娠、出産、産後を通じて、必要なものはどのように揃えましたか?日本で調達した方がいいものはありましたか?

ベビーベッドやベビーカー、チャイルドシートなどは本帰国される方から譲ってもらいました。新生児のときに着る浴衣タイプ(前開き)の衣類が少ないので、日本から送ってもらうとよいと思います。日本人コミュニティや現地の児童館など、子ども用品の交換が盛んなのでよく活用しています。

これから妊婦健診〜出産を迎える方にメッセージをお願いします

カナダの妊婦健診は必要最低限なので、不安な面もあるかもしれません。しかし問題があればしっかりと検査をしてくれますし、困ったことがあれば担当医だけでなく医療チーム全体でサポートをしてくれるという印象を持ちました。

たとえば、出産後も新生児の間は毎週赤ちゃんの健診があり、ミルクの飲み具合や体重の増え方、黄疸など、心配ごとがあればすぐに診てもらうことができました。授乳について相談する場も病院やファミリードクター、市がそれぞれで提供しているので自由に相談することができます。

このように出産後も助産師さんや保健師さんのサポートが手厚く、体制がしっかり整っていると感じています。異国の地での出産は未知なところも多いですが、これから出産を迎えられる方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。

運営メンバーHARU

はじめての妊娠・出産を海外で迎えることに対する不安は大きいですよね。医療チームやサポート体制への安心感はママだけでなくご家族の精神的な支えにもなります。