オンラインで日本のプロボノに挑戦!活動から得た3つの気づき

本帰国後の働き方や、自分が大切にしたい価値観を知るため、日本のプロボノ活動にインドネシアからオンラインで挑戦されたAさん。
ワンオペ育児をしながら、他のボランティア活動も継続する中でのチャレンジでした。
キャリアに悩みながらも一歩踏み出したことで、これまで気づかなかった自分自身の一面や、人との関わり方について新たな発見があったそうです。

自己紹介をお願いします

Aと申します。2024年10月からインドネシアのジャカルタに滞在しています。
認定NPO法人サービスグラントが提供しているプロボノ活動にオンラインで参加しました。

ボランティアの内容

活動の内容地域住民同士が交流するきっかけとなる新規イベントを企画し、そのイベントを告知するためのチラシを作成するプロボノ活動です。
育休などで一時的に仕事から離れているママたち6名でチームを組み、町会役員の皆さんをはじめとする地域住民の方々にヒアリングを行い、具体的なイベントの内容を詰めていきました。11月末の中間提案でイベント企画案の大枠に合意し、12月初旬に成果提案とチラシの納品を行いました。具体的な活動履歴は認定NPO法人サービスグラントにて掲載のプロジェクト紹介(八王子四谷町会)をご参照ください。
活動の対象東京都八王子四谷町の町会役員の皆さん
活動の目的・新規イベントの企画
・イベントのチラシ作成
活動期間2025年10月~12月
活動の頻度・チームミーティング(週に一度、1時間〜1時間半)
・チーム内雑談会(2週間に一度、1時間程度)
・現地視察や地域住民の皆さんへの個別ヒアリング
・ママボノ全体のミーティング(キックオフ、進捗共有、成果報告など数回。一回あたり1〜2時間)
※上記以外に各自でアイディア出しや資料作成などの作業を行いました。
※現地視察とヒアリングの一部は日本在住メンバーによる対面形式です。それ以外は全てオンラインです。

所属団体の概要

どのような団体かママボノ
ママボノとは、育休中や離職中のママたちが仕事復帰に向けて働く感覚を取り戻しながら社会貢献を行うプロボノ活動です。認定NPO法人サービスグラントが提供している多種多様なボランティアプログラムの一つです。
設立時期2013年開始
所属人数参加者833名、支援先132団体(※2013〜2024年度におけるママボノの合計)
使用言語日本語

そのボランティアをやってみたいと思った理由やきっかけを教えてください。

「本帰国後に自分はどのように働きたいのか?自分が大切にしたい価値観とは何なのか?」を知るために、新しい課題に挑戦してみたいと思ったからです。

もともと私は、幼少期の海外生活と大学での交換留学の経験を活かし、「日本のものづくりで世界に挑戦したい」という思いでメーカーに入社しました。本社の開発・製造部門と海外拠点とを繋ぐ役割を担い、「海外と関わる仕事」にやりがいを感じてきました。ところがその後、結婚や出産とライフステージが変化するにつれ、「私は何のために働いているのだろう?」と疑問を感じるようになりました。初めての育児、コロナ禍での社会の変化、家庭と仕事の両立……。子どもとの一日を無事に終えるだけで精一杯の日々を過ごしていたころ、夫の海外駐在が決まりました。夫婦で話し合い、私は配偶者同行休職制度を利用してインドネシアに引っ越しました。一人の時間が増えたことで、これまで考える余裕がなかった「働くことの意味」や「自分を大切にする生き方」ときちんと向き合いたいと思うようになったという背景があります。

ママボノにはいくつかのプロジェクトがあり、私は八王子四谷町会を第一希望としました。
その理由は、今まで業務上で関わったことのない人(地方公共団体・地域住民)たちと関わり、未経験の分野(地域コミュニティの活性化)での課題にチャレンジしたかったからです。また、町会役員の皆さんは幅広い住民層の間の交流を深め、町会についても知ってもらいたいという想いを抱いており、結婚後に新しい土地に引っ越し、育児に携わった経験が役に立つかもしれないと感じました。

そのボランティアをどのように見つけましたか?

ママボノを初めて知ったきっかけは、私がボランティアとして参加している駐在ファミリーカフェが共催するオンラインイベント「駐在同行中の今だからこそできること」(2025/6/18)でした。その後ママボノのオンライン説明会に参加してより具体的な活動内容を伺いました。息子が通うインターナショナルスクール(以下、インター)の年間予定と調整しやすいタイミングだったこともあり、応募を決めました。

ボランティアを始めたことに対してご家族、周囲の方々の反応はいかがでしたか?
何か協力を求めるようなことはされましたか?

夫は、駐在同行期間を活用して新しいことに挑戦したいという私の気持ちを後押ししてくれました。私が以前からキャリアに悩んでいたこともよく知っていたからだと思います。

5歳の息子にも簡単に内容を伝えたところ、働くということに興味を持ったようです。インターで多様な職業を学ぶ機会があり、遠足で職業体験施設に行ったことも影響しているかもしれません。「今日ママはどんなことをしたの?」という会話が毎日の日課になっていました。まれにインターの休みとミーティングが重なることもありましたが、基本的には平日の昼間に活動していたので大きな影響はなかったです。

11月初旬には休職先の人事担当者とオンライン面談があり、近況報告としてママボノについてもお話ししました。初めての国での生活や育児が負担になっていないか心配してくださっていたのですが、とても充実している様子が伝わってきてよかったとのことでした。

ボランティアをやってよかったと感じたことは何ですか?
この体験から得たものは何ですか?

自分の強みを実感できた

ママボノを通して知った自分の強みが3つあります。日々の些細なやり取りや、最後の寄せ書きでメンバーが伝えてくれたことで気づいたものです。

①行動力
地域住民の方からお話を伺うヒアリングはオンラインでの実施も多く、初めての経験だったため私も不安を感じていました。初対面の相手が話しやすい雰囲気を作りつつ、時間内に必要な情報をすべて集められるように、事前に台本を作ってチーム内で共有しました。子どもの体調不良や急な学校行事によって作業が中断する可能性を見越し、作業時間に余裕を持てるよう、対応できるタスクは早めに積極的に引き受けるようにしました。どれも心配性で完璧主義な性格ゆえの行動だったのですが、プロジェクトを進めていく上でメンバーからありがとうと言ってもらえる機会が多かったです。自分では弱みだと思っていた性格が、使い方によっては強みにもなり得ると認識できました。

②コミュニケーション力
もともと対面での人の雰囲気、表情、声のトーンに敏感だった私は、コロナ禍で当たり前になった非対面での働き方に難しさを感じることもよくありました。ママボノでは、海外から参加しているのは私だけだったこともあり、誰に対しても積極的に言葉で伝えるということを常に意識していました。また、画面越しでは伝える手段が限られるからこそ、言葉選びには気をつけるようにしていました。それを続けたことでフルリモートに対する苦手意識も自然となくなり、本音は雰囲気ではなく「言葉で伝え合うもの」という本来あるべき姿への軌道修正もできました。

③言語化力
私が所属していたママボノのチームでは、お互いの魅力や強みを普段から伝え合うことが多く、最後の寄せ書きでも心が温かくなるメッセージをたくさんいただきました。そこで初めて、私は言語化が得意だということに気がつきました。
実は育休から復職した後、さまざまな原因が積み重なって心身のバランスを崩して1年間休職した経験があります。心理カウンセラーとの面談やメンタルに関する書籍を通して感じたことや思い出したことを事細かにノートに書き出し、自分の感情と徹底的に向き合いました。もともと軽い趣味だったジャーナリング1が、今では自分の感情を消化する習慣となり、心身の健康を表すバロメーターになっています。同じ失敗を繰り返さないためにも、自分が本当にやりたいことや大切にしたい価値観を「言語化したい」という気持ちで続けているのですが、それがすでに得意分野になっているということには自分一人では気づけなかったと思います。

人を頼る大切さに気づいた

個人がそれぞれの得意分野を活かすこと、活かせる環境を整えることで、チームとして高いパフォーマンスが発揮できることを実感しました。

例えば、チラシの作成はデザインが得意なメンバーにお願いしました。デザインに不慣れで完璧主義な私がやると、最初から細かいところにこだわりすぎて時間がかかり、その後の修正にも時間を取られてしまうと思ったからです。得意なメンバーに作ってもらったものをチームでブラッシュアップするほうが自分には向いていました。人を頼ることが、限られた時間内でチームとしてのベストを尽くすことに繋がったと思っています。

また、家庭内でも気づいたことがあります。
日本で子どもを保育園に通わせていたころ、子どもの面倒を見ながらオンラインミーティングに入るのは大の苦手でした。今回はインターが休みの日でも、ママボノのミーティングを問題なくこなすことができました。(子どもが大きくなったというのもありますが)子どもがミーティングの最中の過ごし方を事前に考えて準備し、その間も子どもが一人で過ごすことができるようになったことで、家族というチームにとっての成功体験にもなりました。

もともと人を頼ることが苦手で、公私ともに自分が頑張らなければ!と思い込みがちだった私にとって、この気づきはとても意味のあるものでした。

働くことは自分の要素の「一つ」だと再認識できた

育休から復帰してからは子どもの体調不良などで急に仕事を休むことも多く、職場にも子どもにも常に申し訳なさを感じていました。周りに迷惑をかけないために何事にもブレーキをかける癖がつき、すべてが中途半端で達成感もなく、自分が何をしているのか分からなくなりました。自分の生きがいが仕事に偏っていた妊娠前のマインドからアップデートできていなかったのだと思います。

今回ママボノに参加していた期間中に、以下の活動も継続していました。

  • アドラー式子育て講座の受講
  • 駐在ファミリーカフェのボランティア
  • 学校行事のボランティア
  • ジムでの運動

夫は海外出張続きだったため、結果的にフルタイム勤務・ワンオペ育児のような3カ月間でした。それでも、自分の「好き」という直感を優先してあえて欲張りました。

そのボランティアを続ける中で、何か困難に感じたことはありましたか?また、それをどのように乗り越えましたか?

地域のニーズを探るため、地域住民や町会の関係者とのヒアリングを進めていた際の出来事です。

お話を伺っていく中で、「支援内容の根底にある本質的な課題を解決するには、イベント以外でやるべきことがあるのではないか?」という壁にぶつかったことがあります。
プロジェクトも中盤に差し掛かったところで、具体的なイベント案が固まりつつあったころです。

まずはチーム全員でこれまでの資料や活動を徹底的に整理し直しました。もともと町会からママボノに対して共有されていた町会が抱える課題と、ヒアリングで浮かび上がってきた町会の本質的な課題の間にあるギャップを明確にしました。サービスグラントの担当者とも相談しながらママボノとしてのゴールを改めて確認し、町会役員の皆さんとのコミュニケーションを密に取るようにしました。

その結果、町会が抱える本質的な課題解決への第一歩となるイベントに仕上げることができました。さらにママボノ終了後も町会や地域住民が主体となって発展させながら続けられる内容になっています。準備段階でメンバーで出し合った原案も無駄にならず、活かされる形になっています。

誰一人欠けてもこの結論には辿りつかなかったと思います。全員でこの壁を乗り越えられたことが大きな達成感にも繋がり、チーム一丸となって課題に取り組むことの素晴らしさを身に染みて感じました。

今後のキャリアにおいて、ボランティアの経験をどのように生かしたいと思われますか?
キャリアにプラスになると思われていることはありますか?

ママボノを通して気づいたことはたくさんあるのですが、最も強く感じたのは「私はチームで働くことが好きだから堂々と働きたい」ということでした。いつかやってくる本帰国では、息子が感じるであろう逆カルチャーショックや小一の壁を一緒に乗り越えながら仕事を再開することになります。もしそこで、育休から復帰したときのように育児と仕事の両立に自信を失いそうになっても、これらの気づきが私の原動力になると思います。

また、今まで気づいていなかった自分の強みが具体的なエピソードとともに言語化できたこともとても貴重な経験でした。仕事に復帰する際にはその強みを意識して使うことで、人に任せる(お願いする)部分と自分が頑張る部分とのメリハリを付けたいと思っています。

これからボランティアを始めようと考えている方に伝えたいことはありますか?

駐在に同行することによって、働いていた会社でのキャリアは中断され、同僚との差も開いていきます。一方で夫は毎週のように海外出張で各国を飛び回り、どんどんキャリアを積んでいきます。もちろん夫にしか分からない大変さやプレッシャーもあると思います。ただ、海外との仕事に生きがいを感じていた自分だからこそ、自分だけが社会から取り残されているような孤独感や、このモヤモヤとした気持ちを完全に消化するのは難しいというのが正直なところです。

でも今回ママボノに参加してみて、自分の人生というもっと大きな観点から、この駐在同行期間をプラスの経験にできるかどうかは「自分自身で選ぶことができる」ということを実感しました。

一つの会社でしか働いたことのない私が、未経験の分野でも少しはお役に立つことができました。「ママである」という共通点しかなかったメンバーと、これからも大切にしたい関係性を築けたことが私の心の糧になりました。ここで満足するのではなく、新しいことに挑戦し続けていくことが本帰国後の私らしいキャリアに必ず活きると思っています。

ボランティアやプロボノ活動は社会に貢献するためというイメージが強かったのですが、自分自身を見直すきっかけにもなるということを初めて知りました。もし気になっている方や、始めてみたいけど不安だなと感じている方がいらっしゃったら、まずは思い切ってチャレンジしてみてほしいと思います。もし失敗することがあったとしても、それはきっと自分を成長させてくれる唯一無二の経験になると信じています。

  1. 思考や感情を紙やノートに書き出すことで心を整理し、自己理解やストレス軽減を促す「書く瞑想」の習慣 ↩︎