駐在妻の異文化適応能力を知る<海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察より>

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当サイトの立ち上げメンバーでもある中原美由己(アメリカ在住)が2011年に国際ビジネス研究学会で発表した論文内の様々な調査データを出来るだけわかりやすく紹介するシリーズ。

第3回目は、「駐在妻の異文化適応能力を知る」です。

以下は、元駐在妻に対して行った調査のうち、海外滞在経験を通して、異文化適応能力が身についたと感じている人の割合を示したものです。

 

調査方法は以下の通りです。

・楽天リサーチ株式会社のネットリサーチを利用
・2010年7月23日から27日の5日間
・現在日本在住の20歳から59歳までの配偶者の海外転勤に伴う海外帯同経験者である既婚女性(元駐在妻)を対象

調査結果の中で、「異文化適応能力が向上した」という項目に対して、75.0%もの人が、「とてもそう思う」または「そう思う」と回答しています。このことから、海外帯同配偶者自身、海外滞在経験を通して、異文化適応能力が身に付いたと感じている人が多い結果となっています。異文化に適応していく過程には、異文化に触れ、異文化の中で数々の経験をするなど、様々な段階を踏み、個人差はあるものの、ある程度の時間をかけて、異文化適応能力が向上していきます。

以下は、オランダの社会科学者ヘールト・ホフステードによる「文化変容のカーブ」について論文より抜粋しています。その中で記された、もといた文化的環境(日本)と同じくらい現在の文化的環境(滞在国)に適応している人の場合には、どちらの文化的環境(日本と滞在国)にも中立的な感情を持っています。すなわちこの図でいえば、(4b)の状態が異文化適応しているといえるのではないでしょうか。

 

・・・論文より抜粋・・・

異国での滞在は、多様な文化や価値観、考え方、コミュニケーションの方法などの違いに戸惑い、カルチャーショック を受けることが多いが、それと同時に、日本と異国との文化や価値観、考え方などの違いに気付く。カルチャーショックを乗り越えることにより、異文化との違いを理解し認め、それらを尊重することにより、自らも異国の習慣に、柔軟に対応できるようになる。

異国で滞在した経験のある人の中にも、異文化に適応できる人や適応できない人がいる。ヘールト・ホフステードによると、なじみのない文化的環境に足を踏み入れることになった人々は、図1.に示すような「文化変容のカーブ」を描くことが多い、としている。この図の中の第四段階である「安定した状態」には、さらに三つの状態がある。「環境が変わる前に比べて否定的な感情を抱いている人々もいる(4a)。〔中略〕もといた文化的環境と同じくらい現在の文化的環境に適応している人の場合には、以前に比べてとくに肯定的とも否定的ともいえないであろう(4b)。もとの文化的環境以上に現在の文化的環境に適応している人々もいる(4c)」(ホフステード, G.(岩井紀子・岩井八郎訳)(1995)『多文化社会-違いを学び共存への道を探る-』、223-224ページ)。これらの三つの状態の中で、(4b)の状態が、自国と異国のどちらの文化にも適応している、といえるのではないだろうか。(中略)

 

本稿の調査では、約4割の海外帯同配偶者は、海外での生活を積極的に望んでいなかったという結果であった。海外帯同配偶者は海外帯同による様々な変化が大きいことから、身体的・精神的に健康な状態を保ちつつ、異文化適応能力を高めるためには、滞在国での日々の生活をどのように過ごすかが非常に大事なポイントである。海外帯同は海外での生活が前提となるため、海外生活を望んでいなかった人であっても、自己啓発を促すなどの動機付けにより、意欲を刺激し、海外生活に対して前向きな気持ちに向かせ、異文化適応能力や語学能力向上のためのモチベーションを上げる仕組みを設けることである。(中略)

異文化適応には、ある程度の時間を必要とする。しかし、海外帯同期間は、海外派遣勤務者の海外派遣期間に大きく影響を受けるため、海外帯同配偶者自身が海外帯同期間を自ら決めるのは非常に難しい。また、海外帯同期間の活動についても様々な制限を受けることになる。たとえば、帯同期間中に、現地で就業するとしても、ワーキングビザの問題にとどまらず、働く期間が定まらない、などといった理由で、現地での就職活動も難航する、といったことや、何かを学ぶために、現地で大学へ通うとしても、帯同期間が定まらなければ、積極的な行動に移すことは難しい、といったことなどである。

しかし、海外帯同配偶者の多くは、様々な問題を自ら解決し、現地での生活に適応していく。本稿の調査結果によると、海外帯同配偶者のうち、67.0%の人は、「海外で居住したことにより(精神的に)強くなった」と感じている。様々な経験を経て、様々な環境の変化を乗り越え、海外帯同配偶者は、強くなり、そして成長している。

 

 

詳細については、以下を参照ください。

海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察―グローバル人材としての潜在可能性に関する研究―(中原美由己)|国際ビジネス研究

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaibs/3/2/3_KJ00007729880/_article/-char/ja/

また、論文に掲載しきれなかった数々の調査データや、駐在妻経験者へのアンケートやインタビューから得た様々な「本音」や「生の声」などを掲載している本が、Amazonで購入可能です。

『夫の海外赴任を「自分ごと」にする:グローバル駐在妻の選択―“転機”をチャンスに-』
https://www.amazon.co.jp/dp/4815006911/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1532352327&sr=1-1

も、是非ご覧ください。

今後、

第4回 駐在妻のキャリア(仕事)を考える
第5回 駐在妻をグローバル人材に

と続きます。どうぞお楽しみに!

駐妻caféでは、駐在妻自身が元気に活動できるサポートを、随時行っていますので、是非ご活用ください。

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