駐在妻のキャリア(仕事)を考える<海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察より>

当サイトの立ち上げメンバーでもある中原美由己(アメリカ在住)が2011年に国際ビジネス研究学会で発表した論文内の様々な調査データを出来るだけわかりやすく紹介するシリーズ。

第4回目は、「駐在妻のキャリア(仕事)を考える」です。

以下は、元駐在妻に対して行った調査のうち、就業についての調査結果をまとめたものです。

 

調査方法は以下の通りです。

・楽天リサーチ株式会社のネットリサーチを利用
・2010年7月23日から27日の5日間
・現在日本在住の20歳から59歳までの配偶者の海外転勤に伴う海外帯同経験者である既婚女性(元駐在妻)を対象

 

 

【海外帯同するまでは仕事をしていましたか。仕事をしていた場合、その時の就業形態をお答えください。】

 

【現在は仕事をしていますか。仕事をしている場合、現在の就業形態をお答えください。】

【帰国後、海外での経験を何かの形で活かしたいと思いますか。また活かしていますか。】

上記調査結果のうち、海外での経験を既に活かしている・活かすつもりである・活かせるところがない、と回答している169名の方々がどのように活かしている・活かすつもりである・どういうところであれば活かしたいと感じているか、を以下の表にまとめました。

海外帯同前の有職者比率が70.2%となっており、海外帯同のために一旦仕事を辞めざるを得ない人が7割以上という結果でした。一方、海外帯同から帰国後、働いている人は4割程度でした。

また、海外帯同から帰国後に海外での経験を何かの形で活かしたいかどうかという質問に対しては、活かすつもりである(25.7%)が最も多い反面、何に活かせばよいのかわからない(16.3%)や活かすところがない(13.7%)と感じている人も多く、駐在妻の中には、海外経験を何かで活かしたいと思いながらも、活かせていない人が多いという結果でした。帯同期間中、どのようなことをすれば帰国後の就業に結びつくかがわからないからではないでしょうか。

 

・・・論文より抜粋・・・

海外帯同は海外での生活が前提となるため、海外生活を望んでいなかった人であっても、自己啓発を促すなどの動機付けにより、意欲を刺激し、海外生活に対して前向きな気持ちに向かせ、異文化適応能力や語学能力向上のためのモチベーションを上げる仕組みを設けることである。例えば、海外派遣勤務者の所属する企業から、海外帯同期間を通して帰国後の就業に向けた何らかのサポートを受けることなどである。それと同時に、海外帯同配偶者自身も、海外での滞在経験を通して、異文化適応能力や語学能力に磨きを掛けることが「グローバル人材」として活躍できる可能性を高めることにもつながる、ということを自覚することも大事なポイントである

 

詳細については、以下を参照ください。

海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察―グローバル人材としての潜在可能性に関する研究―(中原美由己)|国際ビジネス研究

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaibs/3/2/3_KJ00007729880/_article/-char/ja/

 

第1回目の「駐在妻のリアルな気持ちを知る」でお伝えしました通り、駐在妻は、海外帯同中は、「楽しい」と感じながら過ごしている人が比較的多いですが、一方で、「不安」、「つらさ」、「大変さ」という気持ちも同時に持ち合わせていました。これらの不安要素を取り除き、且つ、更に肯定的な要素を増大させることにより、駐在妻への一層の異文化適応能力ならびに語学能力を向上させる動機づけにつながるのではないでしょうか。

『心理学者のフレデリック・ハーツバーグによると、人間の欲求には、「衛生(維持)要因」と「意欲(動機)要因」の二要因があるとしている。「衛生(維持)要因」は「不満足要因」とも表現され、また、「意欲(動機)要因」は「満足要因」とも表現されている。これらは相互に無関係であるため、不満足な要因を解消したとしても積極的に満足をもたらすものではない。すなわち、不安要素を取り除くだけではなく、「意欲(動機)要因」を刺激することにより、モチベーションが向上する、とされている 。』(ハーシィ,P.・K.H.ブランチャード・D.E.ジョンソン(山本成二・山本あずさ訳)(2000)『行動科学の展開-人的資源の活用-』pp.76-79)』

不安の中には、言葉の問題や現地での日本人コミュニティーへの順応、生活習慣への戸惑いといったある程度の「時間を経る」ことで解決していけるものもある一方、子供の教育面や帰国後の就労といった、現地での生活では解決が難しいものもあります。

駐在ファミリーカフェでは、今後更に帰国後の駐在妻の体験談を増やすなど、駐在妻の可能性と選択肢を増やすための活動を広げていきたいと考えています。たくさんの事例に触れることで、帰国後の選択のイメージがしやすくなり、「そのためには海外生活をどのように過ごすか」というプラン作りや、またモチベーションアップにもつながっていきます。

論文に掲載しきれなかった数々の調査データや、駐在妻経験者へのアンケートやインタビューから得た様々な「本音」や「生の声」などを掲載している本が、Amazonで購入可能です。

『夫の海外赴任を「自分ごと」にする:グローバル駐在妻の選択―“転機”をチャンスに-』
https://www.amazon.co.jp/dp/4815006911/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1532352327&sr=1-1

も、是非ご覧ください。

 

いよいよ次回が最終回。

第5回 駐在妻をグローバル人材に

どうぞお楽しみに!

駐在ファミリーカフェでは、駐在妻自身が元気に活動できるサポートを、随時行っていますので、是非ご活用ください。

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