コロナ禍で深めた自分と家族のキャリア〜変化を楽しむ!中国駐在家族の3年間〜

上海

コロナ禍で一時帰国を余儀なくされ、2年間母子のみで一時的な日本滞在を続けているE.Sさん。自分ではどうすることもできない環境変化の中で、「変化を楽しめる自分、家族」になれたと実感しているといいます。先の見通せない環境変化の中で、家族生活・自分自身のキャリアをどのように育んできたのか、今もなお進行中である駐在妻生活の軌跡をお伺いしました。

自己紹介をお願いします。

2019年4月から、夫の海外勤務に同行し、当時4歳の子どもと3人で中国・上海にて生活していました。その後、新型コロナウィルス感染拡大の影響で2020年1月に一時帰国、半年後に夫は中国へ戻り、母子のみ渡航待ちの状態のままで約2年が経過して現在に至ります。
日本での一時帰国滞在中に、食育関連の資格を取得し、現在は地元の給食会社にて、管理栄養士として保育園・幼稚園給食の運営に携わっています。

10カ月間の上海生活~自分と向き合う時間と様々な刺激を受けて得た、新たな視点~

ー駐在妻生活のスタートはどのようなものでしたか?

新卒から12年間勤めた食品メーカーを退職しての渡航でした。まだまだ挑戦したいこともある中での退職には、かなり葛藤がありました。

現地では、新生活への期待とともに、仕事を手放した喪失感や、5年という夫の任期中に、「自分も次のキャリアに繋がる何かを残さなければ」という焦りがありました。

また、夫は平日ほぼ出張で不在。家事・子育て・家族のサポート中心の生活は、これまでの会社員として外部と関わる仕事とはジャンルの違う大変さやプレッシャーがありました。慣れない環境での体調不良や子どもの心身の不安定さなどに悩まされる日々でした。

そこから海外生活を楽しめるようになっていったことにはきっかけなどあるのですか?

渡航前に、オンラインで渡航前オリエンテーションに参加しました。そこでは具体的なゴール設定をしたり、先輩駐在妻の方々とお話しする機会があったりと、心の準備をすることができました。また、オリエンテーションで学んだ内容のおかげで、渡航後も体調や気持ちが不安定な自分を受け入れ、早めに気持ちを切り替えることができたと思います。

現地では、駐妻カフェのメンバーとしてオンラインでのボランティア活動にチャレンジしました。サイト作りを通じて、世界中の仲間と海外生活ならではの「モヤモヤ」や「あるある」の共有ができたり、刺激や励みをもらうことができました。

そして、体調不良がきっかけで学び始めた薬膳や中医学、趣味の料理やお菓子作りがきっかけで開催した現地友人ファミリーとの交流会やイベントなどを通じて、新たな出会いやコミュニケーションが生まれ、少しずつ世界が広がっていきました。

ーたくさんの活動や交流があったんですね。海外生活の中で、キャリアについても考える機会はありましたか?

日々の生活の中で、食を通じて異文化を学んだり、新たな価値観に触れたり、コミュニケーションが生まれることの楽しさを体感し、
「やっぱりこの先も食の分野で、家族や子育てをサポートする活動をしていきたい」という”自分の軸”が明確になりました。

渡航前までは仕事優先で、保育園頼みだった育児も、子どもと向き合う時間が倍増したことで、大変さとともに、その成長を見届けられる喜びや有り難さ、関わり方の大切さに改めて気づくことができました。

また、駐妻カフェでの活動を通じて、運営メンバーやゲストの考え方、働き方、生き方に触れ、たくさんの気づきやヒントを得ることができました。滞在国のお国柄、不安定な通信状態ではあったものの、オンラインでの活動の可能性を探ることができたのも大きかったです。

こうして、刺激や気付きを得る機会、自分と向き合う時間、この2つが得られたことで、自分のキャリアや家族との過ごし方についても新たな視点で考えることができるようになりました。

また、個人事業主としての働き方、企業や組織に所属する働き方、どちらにも魅力を見出すことができるようになり、帰国後のキャリアに関して選択肢の幅が広がりました。

そんなときに、2020年新型コロナウィルスの感染拡大が起こりましたよね。

春節で3泊4日の予定だった一時帰国が、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、中国へ戻ることができなくなりました。ようやく慣れ始めた生活が一転しました。

しばらくして上海の住居は、住人不在のままオーナー都合により売却され、同じマンションで家族みたいにいつも一緒にいた心許せる友人たちと、バイバイも言えずにお別れすることになりました。

日本で4度目となる娘の転園もコロナ禍で受け入れ先が見つからず、家族でマンスリータイプのワンルームやアパートを転々としながら、ひたすらステイホームに耐える日々が続きました。

その半年後、夫は単身で中国へ戻ったのですが、会社の組織編成により別の都市へ異動になり、家族VISAは停止したまま、私たち母子は中国で戻る場所がなくなり、家族バラバラの生活がスタートしました。

上海で過ごした10カ月間は、まるで幻のようになったのです。

中国 上海の景色

日本での一時帰国生活 ~ワークキャリア構築のための資格取得と就労、そして不妊治療~

明日の生活がどうなるか分からない、そんな日々だったんですね。どのような気持ちで過ごされていたんですか?

中国に、こんなことわざがあります。

「人間万事塞翁が馬」(人生における幸不幸は予測しがたいということ)。

海外生活をスタートしたときから、大きな環境変化、生活スタイルの変化を経験していた私たち。まさしくよいことも悪いことも、そして同じ環境がずっとは続かないことも、身をもって理解しました。

だからこそ、「失ったもの、手放したものにとらわれず、今ここにあるものを大切に、今できることにチャレンジしよう!」そんな風に気持ちを切り替えて過ごすことができました。環境を受け入れ変化を楽しもうとする力が育っていたように思います。

ステイホーム中は、考えを整理する時間が持てたこともあり、最終的に地元に戻り住むことを決め、地元での生活が落ち着いてきてから、「日本にいるからこそできることをしよう」と動きだしました。

日本にいるからこそできることとして選んだことについて教えてください。

学生の頃から、「子どもの健康や生活環境の向上に関わる仕事をしたい」という思いで栄養士になったこともあり、まずは食育の資格取得と教室開講を目標に、勉強をはじめました。コロナ禍だったからこそ、普段は対面のみの講座がオンラインで受講できました。

また、実務経験と実践の場として給食の現場での仕事を探しました。

さらにこのとき、検査で妊娠のタイムリミットが迫っていることが分かり、第二子の不妊治療もスタートしました。
夫が中国へ戻る直前のVISA申請不備により渡航が1カ月延びた間の、奇跡的なタイミングでした。

仕事は、地元の給食会社に決まりました。

会社の代表の方には面接の際、現在一時帰国中で短期間の就業になる可能性があること、不妊治療中であることを正直に話しました。

不確定な状況ではあるものの、これまでの企業での就労実績や駐妻カフェメンバーとしてのオンラインでの活動経験などと併せて、仕事の先にある目標や想いに共感を得ることができ、採用していただきました。

就活中、キャリアコンサルタントの方とお話しする機会を得たことで、自己理解が深まり、キャリアプランに貴重なアドバイスをいただけたのも、大きな後押しとなりました。

栄養士としての経験を積みながら、次の事業展開を見据えた業務改革や、リモート打合せを導入した在宅ワークという新たな働き方の構築など、今の私だからこそできることに取り組んでいます。

その後、不妊治療を経て何とか第二子を授かり、産前産後休暇をいただいて、現在は在宅での仕事を再開しています。

学生時代からの活動、これまでの就業経験、そして海外生活で得た新たな視点や経験すべてが、私のキャリアとして繋がっていると感じています。

中国渡航から今までの3年間のたくさんの出会いとご縁に、感謝の気持ちでいっぱいです。

薬膳茶

ー駐妻カフェで開催した「腸活のオンラインカフェ」についても、どんな想いで企画をしたのか聞きたいです。

2021年冬に、駐妻カフェメンバーに声をかけてもらい、管理栄養士&元駐在妻という立場で、腸活をテーマとしたオンラインカフェの企画に参加しました。

私自身も心身の不調による辛さを経験したことから、参加者が海外生活を少しでも楽しむお手伝いができればという気持ちで、協力しました。

この企画を通じて、食や健康についての学びを深めることができ、また「今後もオンラインで自分にできることを続けていきたい」とモチベーションがあがる貴重な機会となりました。

ーSさんの活動に対して、ご家族の反応はいかがでしたか?

夫は、いつも応援をしてくれていました。とは言え、やはり離れて過ごす時間が長くなるほど、お互いの状況を理解し気遣うことは難しく、すれ違いや1人で悩みを抱え込むことも多くなっていました。そんなときは、あきらめずに(なるべく素直に)、気持ちを伝えるようにしました。

私自身がやりたいことに挑戦を続けることで、「離れている時間もマイナスではない。お互いに今できることを頑張ろう」という共感が芽生え、前向きでいられるようになったと思います。

また、資格取得に関しては、1日だけ県外へ通う必要があったのですが、実家の両親も私の想いを理解し、娘を預かってサポートしてくれました。

そして、娘は「ママならできるよ、やりたいことを頑張ってね!」と一番に背中を押してくれました。

そんな娘も、何度も引っ越しや転園を繰り返し、不安を抱えながらも、新しい場所で出会いや挑戦を楽しんで、自分の居場所を築いてくれています。

夫婦で一緒に前を向けたとき、成長した娘の姿を見られたときは、「これまで信念をを持って仕事している私の姿をちゃんと見ていてくれていたんだな」、「今まで家族で一緒に頑張ってきてよかった」と思える瞬間でした。

お互いの状況や気持ちを伝え合うこと、家族とのコミュニケーションの大切さに改めて気付くことができました。

中国 上海の食風景

まとめ

ーこの3年間の駐在妻生活を振り返ってみて、どう感じますか?

大変なこともたくさんありましたが、中国への渡航は、私たち家族にとって、とても貴重な経験で、大きな成長の機会となりました。

キャリアは仕事そのものだけではなく、自分と家族が経験したこと全ての積み重ねなんだと捉えられるようになり、

「何をしたいか何になりたいか」だけではなく、「どんな自分でいたいか」を考えるようになったことが、

手放すものの多かったこの3年間で得られた、何より大きな視点です。
この先、生活がどう変化しても、そのたびに一気一憂せず、「変化に強い自分と家族でいたい、子どもたちもそう育てたい」と思っています。

ー今後の展望について教えてください。

現在は、栄養士業務とは別で、食育のトレーナーとして我が子に対して自宅教室をスタートしています。専門知識や技術のアップデートをしつつ、今後オンラインも活用しながら少しずつ食育の活動の場を広げていきたいと思っています。 そして、日本にいても海外にいても、食を通じて家族の健康や子育てのサポートをする活動をライフワークとして続けていけたらと考えています。

駐在妻の方へのエールをお願いします。

変化に柔軟に過ごすため、まずは心身の健康が第一です。バランスの良い食生活はもちろん、海外生活で特に大切だと感じるのは、アウトプットの場をもつこと。家族でも友人でも、オンラインで繋がる第三者でも、誰かと気持ちやアイデアやスキルをシェアすることをおすすめします。

駐妻カフェでも、オンラインカフェやさまざまな企画が用意されているので、自分に合った場所や方法を見つけられるといいですね。

そして、「やってみたい」「好き」という直感を大切にし、行動をしてみること。そのときの自分に必要な人や居るべき場所に、きっと繋がっていくと思います。

まだまだ出口の見えないこのコロナ禍、様々な課題やモヤモヤを抱えながらの生活を送られている方が多いと思いますが、どうか笑顔で過ごせますように。私のこの経験が少しでもお役に立てたらうれしいです。

いせやん

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三重県生まれ。食品加工メーカーでの商品開発を経て、大学機関で人事・教育部門向けのコンサルティング営業として勤務。 2018年夫の海外赴任に伴い退職し、台湾に...

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