駐在妻をグローバル人材に<海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察より>

キャリアについて考える

当サイトの立ち上げメンバーでもある中原美由己(アメリカ在住)が2011年に国際ビジネス研究学会で発表した論文内の様々な調査データを出来るだけわかりやすく紹介するシリーズ。

第5回目(最終回)は、「駐在妻をグローバル人材に」です。

「グローバル人材」の育成といった言葉を耳にする機会が増えてきている昨今ですが、そもそも「グローバル人材」というのはどういう人たちのことをいうのでしょうか。

経済産業省の資料によると、グローバル人材を以下のように定義しています。

“グローバル化が進展している世界の中で、主体的に物事を考え、多様なバックグラウンドをもつ同僚、取引先、顧客等に自分の考えを分かりやすく伝え、文化的・歴史的なバックグラウンドに由来する価値観や特性の差異を乗り越えて、相手の立場に立って互いを理解し、更にはそうした差異からそれぞれの強みを引き出して活用し、相乗効果を生み出して、新しい価値を生み出すことができる人材。”(経済産業省(2010.4)『産学人材育成パートナーシップ グローバル人材育成委員会 報告書~産学官でグローバル人材の育成を~』p.31)

また、「グローバル人材」に共通して求められる能力として、「社会人基礎力」・「外国語でのコミュニケーション能力」・「異文化理解・活用力」の三つを挙げています。

出所:経済産業省『産学人材育成パートナーシップ グローバル人材育成委員会報告書
~産学官でグローバル人材の育成を~概要』p.7

ここから話題を駐在妻に転じ、最後に駐在妻のグローバル人材としての可能性について考えてみたいと思います。

以下は、元駐在妻を対象に行った調査結果の一部ですが、この調査によると、企業での勤務経験のある人が大半でした。

調査方法は以下の通りです。

・楽天リサーチ株式会社のネットリサーチを利用
・2010年7月23日から27日の5日間
・現在日本在住の20歳から59歳までの配偶者の海外転勤に伴う海外帯同経験者である既婚女性(元駐在妻)を対象

【今までにご経験された仕事の就業形態について選んでください。(いくつでも)】

駐在妻は、企業での勤務経験のある人が大半であることや、これまで4回に分けて見てきたように、語学力が飛躍的に向上してること(第2回目「駐在妻の語学力を知る」)そして、異文化適応能力が向上していること(第3回目「駐在妻の異文化適応能力を知る」)は、グローバル人材に共通して求められる能力、「社会人基礎力」・「外国語でのコミュニケーション能力」・「異文化理解・活用力」を有している可能性が高いのではないでしょうか。

 

・・・論文より抜粋・・・

語学能力が高いだけでは、企業で活躍できる人材とは限らないのと同様に、異文化適応能力が高いだけでも、企業内で活躍できるとは限らない。当然、企業内で仕事をしていく上で基礎的な能力や仕事経験も必要となるが、本稿の調査結果によると、海外帯同配偶者は、就業経験のある人がほとんどであるため(全体の98.3%)、「グローバル人材」に求められる能力の一つである「社会人基礎力」 も有している可能性がある。しかしながら、海外帯同配偶者は帰国後、日本企業内で海外での経験を活かしながら就業している人は、ごくわずかである。(中略)

海外派遣勤務者の場合、勤務地は海外へ変われども、人間関係など大きく変わることなく、ビジネス環境での生活が続く。一方の海外帯同配偶者は、様々な生活の変化に見舞われる。また、本稿の調査では、約4割の海外帯同配偶者は、海外での生活を積極的に望んでいなかったという結果であった。海外帯同配偶者は海外帯同による様々な変化が大きいことから、身体的・精神的に健康な状態を保ちつつ、異文化適応能力を高めるためには、滞在国での日々の生活をどのように過ごすかが非常に大事なポイントである。海外帯同は海外での生活が前提となるため、海外生活を望んでいなかった人であっても、自己啓発を促すなどの動機付けにより、意欲を刺激し、海外生活に対して前向きな気持ちに向かせ、異文化適応能力や語学能力向上のためのモチベーションを上げる仕組みを設けることである。例えば、海外派遣勤務者の所属する企業から、海外帯同期間を通して帰国後の就業に向けた何らかのサポートを受けることなどである。それと同時に、海外帯同配偶者自身も、海外での滞在経験を通して、異文化適応能力や語学能力に磨きを掛けることが「グローバル人材」として活躍できる可能性を高めることにもつながる、ということを自覚することも大事なポイントである。

海外帯同配偶者の異文化適応能力を向上させることは、ただ単に、海外帯同から帰国後の就業を促すためだけのものではない。海外派遣勤務者の「グローバル勤務の成功は、派遣者とその配偶者の異文化適応力に関連が深い」 (*ブラック,J.S.・H.B.グレガーゼン・M.E.メンデンホール・L.K.ストロー(白木三秀・永井裕久・梅澤隆 監訳)(2001)『海外派遣とグローバルビジネス-異文化マネジメント戦略-』、83ページ) と言われている。すなわち、海外帯同配偶者の異文化適応能力を高めることは、海外派遣勤務者のグローバル勤務の成功にもつながるとされている。

海外帯同配偶者の異文化適応能力を高めることにより、海外派遣勤務者の異文化適応能力がより一層高まるとするならば、日本企業のグローバル展開がさらに促進されることが考えられる。さらに、海外帯同配偶者の「グローバル人材」としての潜在性がより一層顕在化し、日本企業の内なる国際化を推進する人材として活躍できる可能性を高めることにもつながるであろう。

 

 

詳細については、以下を参照ください。

海外帯同配偶者の異文化適応能力についての一考察―グローバル人材としての潜在可能性に関する研究―(中原美由己)|国際ビジネス研究

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaibs/3/2/3_KJ00007729880/_article/-char/ja/

また、論文に掲載しきれなかった数々の調査データや、駐在妻経験者へのアンケートやインタビューから得た様々な「本音」や「生の声」などを掲載している本が、Amazonで購入可能です。

『夫の海外赴任を「自分ごと」にする:グローバル駐在妻の選択―“転機”をチャンスに-』
https://www.amazon.co.jp/dp/4815006911/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1532352327&sr=1-1

も、是非ご覧ください。

第1回 駐在妻のリアルな気持ちを知る
第2回 駐在妻の語学力を知る
第3回 駐在妻の異文化適応力を知る
第4回 駐在妻のキャリア(仕事)を考える

駐妻caféでは、駐在妻自身が元気に活動できるサポートを、随時行っていますので、是非ご活用ください。

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