アメリカ駐在から見えた貧困、難民問題〜実録!駐在妻のホンネ〜

~実録!駐在妻のホンネ~ 現在進行形の駐妻生活をのぞき見するコラム 第3回

現在進行形の駐妻生活をのぞき見するコラムの第3回目です。

夫の転勤によりアメリカ、カリフォルニア州に人生ではじめて海外移住したリーです。

ただいま5カ月目を迎えました。

新型コロナウイルスの影響によりまだまだ自宅退避が続きそうです。英語を勉強中のため、日本の番組を英語字幕で見ることにより、少しでも英語力アップを目指している今日このごろです。

<前回までのコラム>

第1回 孤独からの解放

第2回 遺書を書いた日

直面した貧困の現実

アメリカで日本の番組を見るためには様々なツールがあるようです。私はドラマや映画を見ることができるNetflixを契約しています。アメリカと日本のNetflixでは扱っている作品が違っています。アメリカNetflixの日本語番組数は、日本Netflixほど多くありません。その中で真っ先に見たのが”テラスハウス”です。英語字幕が表示されるように設定し、「この場面の会話ではこの英語が使われるのか」と学んでいます。日本の文化を垣間見れるところがアメリカ人にも人気のようです。

次に、アメリカに来て知り合った在米友人の勧めでNetflixの”ハイパーハードボイルドグルメリポート”を見はじめました。これは世界各国の人々が何を食べているのかを報道するドキュメンタリーグルメ番組です。私が住んでいるカリフォルニア州の話も出てきました。

カリフォルニア州ロサンゼルスのギャングが食べている食事のリポートです。ギャングとは非行集団と表現されることもあります。ギャングの普段の生活の様子も放送されました。私の家から車で1時間くらいの距離にいる彼らは、いつでも危険と隣り合わせで決して裕福とは言えない生活をしていました。

また別の放送では、シリアからヨーロッパへ徒歩で移動し、イタリアを目指している難民の少年の食事も紹介されました。その少年は、かれこれ2年くらい難民生活をしていると話していました。少年の近くにいた30代の難民の男性は、約5年ほど難民生活をしていると話していました。彼らが食べていたものは支援団体が提供するパンやクラッカー、パスタなどで、食事は1日2回とのことです。

これらを見ていると、英語を勉強するために見ていたということを忘れてしまうほどの衝撃がありました。字幕を追うことがいつしか映像だけを追っている自分がいました。

私も、難民暮らしを5年もしている彼と同じ30代です。もし私が今、5年間も難民生活をすることになったとしたら、想像しきれないくらいの恐怖や飢えを感じるだろうと思います。日本で暮らしていたころ、「難民」と聞けば社会科の教科書に載っていた、どこか遠い国の話としか考えませんでした。

ハイウェイの様子

アメリカのロサンゼルス空港に家族ではじめて降り立った日、到着ロビーを出てタクシーを待っている間にもホームレスとおぼしき人を見かけました。アメリカ生活がはじまって最寄りのスーパーへ行けば、タバコか薬かわからないものを吸っている老人を見ました。身なりはホームレス風で目はうつろでした。

スーパーの入り口で、「食べ物 服 お金 ください」と英語で殴り書きされた段ボール紙を持った母子を見たこともあります。母親は30代、子どもは5歳くらい、南米系の親子に見えました。また海へ家族3人でドライブに行った帰り、ハイウェイから一般道へ入る交差点で信号待ちをしていると、30代くらいの男性が「お金」と英語で書かれた紙を持って私たちの車へ近づいてきたこともありました。私たちの後ろの車の人が、紙幣を渡しているところを見ました。

子どもと公園へ散歩に行く途中には、バス停の椅子によく腰をかけているホームレス、コンビニの前にも寝ている人、公園に着いても洗濯物を干して寝ている人がいました。

スーパーマーケット入り口

そういえば6年前に旅行で行ったアテネでも、テラス席で外食をしていると、楽器を持った子供たちが勝手に演奏をはじめお金をせがまれました。街を散策しているときには、造花のバラを持った婦人に無理やりそのバラを押しつけられお金を請求されそうになりました。

日本にいれば飢えている人がこれほど積極的には近寄ってはきません。社会科の勉強の時間も、旅行中も、貧困を見たのに頭の中をただ通り過ぎた場面でしかありませんでした。しかし駐在妻として生活していると、社会科の教科書に載っていたどこか遠い国の「貧困」「難民」の姿が、目の前の現実としてありました。

難民について調べると、紛争や人権侵害などから自分の命を守るためにやむを得ず母国を追われ、逃げざるをえない人たちのことです。世界には日本の人口の半数を超える人々が故郷を追われているそうです。

教科書で習った当時のように、その方たちへ向けて私ができることはないのかもしれません。はたまた彼らのために今私ができることは、限られているのかもしれません。できることはそう多くないと思います。しかし関心を持つこと、考えること、調べることが重要だと思いました。

UNHCR(国際連合の難民問題に関する機関)が発表した「Forced Displacement in 2018」より国別の難民受入数

トルコ   370万人

パキスタン 140万人

ウガンダ  120万人

 

アメリカ  3.5万人

 

日本 42人

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の経済活動が停滞してしまいました。アメリカ労働省労働統計局が発表した2020年4月のアメリカの失業率は14.7%と、世界恐慌以降最悪の数値となっています。貧困状態になる人がさらに増えると予想されます。自分ができることを日々考え行動しようと思います。

2020.5.9記

注)このコラムは2020年5月9日に書いたものです。テラスハウスに出演中だった故木村花さんへ心からのご冥福をお祈りいたします。

▼学校法人産業能率大学総合研究所のシリーズ「各国の駐在妻が見た、新型コロナと現地の今」に執筆しました。

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