海外から帰国し、小学校に通っています【アメリカ現地校→日本公立小学校(帰国子女支援学級あり)】

実際に通わせてみて、よかったことは何ですか?

治安のよい日本では親がそれほど関わる必要なく、子どもたちが自分たちだけで通学できたり、放課後を過ごしたりできることです。地元の学校ならではの近所のつながりがあるので、外遊びや習いごとのつながりから顔見知りが徐々に増えていったのは、親の私もうれしいことでした。親同士で大らかに子どもたちを見守ることができています。

帰国子女支援学級があるよさは、子どもたちも保護者も帰国した子どもに慣れていることと、専門のサポート(専用の教室がある、専任の担当の先生がいる、課題に応じた個別の指導を受けられるなど)を受けられることです。学校にこの学級があることは、在学生や保護者に周知されているので、帰国した子どものことを自然に受け入れる空気があります。

息子は通っていませんが、自分の所属するクラスから帰国子女支援学級に通い、専任の先生の指導を受けている子どもも多くいます。本人と保護者、支援学級専任の先生とクラス担任の先生で相談しながら、いつ、どの程度通級するのかを決めます。海外の学校では学ばなかった漢字や理科・社会などの学力のサポートを少人数で受けることができます。

子ども同士は海外で使っていた言語でおしゃべりしていることもあります。リラックスして話したいことを話し、一息つける場があることでとても助けられていると聞きます。

帰国子女支援学級の保護者会活動もあり、学校の行事にイベントブースを出したり、帰国した子どもたちの特性を広く知ってもらうためのニュースレターを作成したりしています。現在は新型コロナウイルスの影響で活動は制限されていますが、親として分かり合えることが多く、互いに支え合う関係であることが心強いです。子どもがこの学級に通級していなくても、希望すればこの保護者会に参加することができます。

専任の先生は「帰国後の子どもと家庭のあるある」をよくご存知ですが、他の先生方はそうでないこともあります。このような学級のあるなしに関わらず、困っていることや不安に思うことは遠慮せずに学校へ相談するとよいと思います。

海外の学校や生活との違いで戸惑ったことはありますか? 親として、お子さまをフォローしたり、気をつけていたことがあれば教えてください。

まず戸惑ったのが、子どもの一人歩きでした。日本では学校の登下校をはじめ、習いごとや友だちと遊びに行く時も子ども一人で出かけますが、アメリカでは子どもだけで外出することは許されていないため、その経験がありませんでした。はじめは息子も、ランドセルを背負って一人で歩く友だちを茫然と眺めていました。

そこで、私と一緒に通学路を歩いてみたり、防犯ブザーを使う練習をしたり、子ども用の携帯電話を持たせたりしました。細かな心配りの行き届いた日本のよいものは、どんどん活用するとよいと思います。また、登下校中に友達のお家の方に声をかけてもらうこともあるので、地域に顔見知りがいることはとても心強いと思っています。

学校の学習指導が細かくきっちりしていることにも少々戸惑いました。赤ペンで隅々まで訂正されている平仮名ノートを見ると、親子ともに直す前から疲れました(笑)。

気をつけていたことは、息子の話をよく聞くことでしょうか。現地校の生活もそうでしたが、日本の学校もよいことばかりではないし、嫌なことやおもしろくないこともあります。息子の話すことを否定せずに「そう思うんだね」と聞くことは、帰国後も今も心がけていると言えるかもしれません。そのことで息子が自分なりに折り合いをつけていくのを助けるのが親の役割だと思っています。

帰国後の学校選びについて、お子さまとどのような相談をされましたか? また、通われたお子さまはどんな感想をお持ちですか?

学校選びについては相談していません。帯同生活の大きなポイントと言える「帰国時期」について、幸い我が家はあらかじめ分かっていたので、「7歳になる時に日本へ帰り、日本の(公立)小学校へ行く」と本人が早くから理解していました。

息子は公立小学校を楽しんでいます。馴染むのも、とても早かったです。給食がおいしくて、体育が楽しいそうです。

日本の体育は跳び箱などの用具がそろっていたり、走り幅跳びを計測したりと、本格的な器具を使い、それなりに技術を得ることができるので、それを楽しいと言います。アメリカと日本では体育の目標が違うので、どちらがよいというものではないと思いますが、息子には合っているのだと思います。

一方で窮屈さを感じることもあるようです。体育に関して言えば、日本の小学校には指定された体操着があり、寒い冬場でも本人の意思とは関わりのない服装の決まりがありました。このことについて息子が「変だよ」と指摘したので、先生に相談すると、自分の体感に合った服装で運動できるよう見直してくれました。息子がそう感じたことは、現地校の価値観に触れたからかもしれないと思っています。

日本の学校に転入するにあたり、準備されたことはありますか?

在米期間がとても短いので、日本語補習校へは通いませんでした。それに代わる勉強方法として、渡米前に日本で通っていた公文式教室の先生との通信教育で、国語と算数を細々と学習しました。微々たる学習量でしたが、馴染みある先生からフィードバックをもらえることは、親子ともに嬉しいことでした。鉛筆書きした教材を郵便でやり取りするというアナログな方法でしたが、慣れない鉛筆を握る息子と一緒に紙に向かったのは、今振り返るとよい時間でした。時間的にはゆとりのある帯同生活のよいところでもあったと思います。

上手とは言えない読み・書きでしたが、日本の小学校へ入っても不自由はなかったので、学校生活を前向きにとらえられた一つの理由だったかもしれません。

また、日本の小学校と言えばランドセルというイメージが強く、息子もカッコイイからと欲しがったので、帰国前にネットで購入手続きをしました。しかし、義務化されているわけではないので、息子の小学校ではリュックサックで通っている子どもも少しはいます。上履きや体操着は小学校に確認してから、バタバタとそろえました。

お子さまの語学学習はどうされていますか?

英語が少しできることに自信を持っているようで、勉強を続けたいそうです。

現在はオンライン英語塾と公文式でマイペースに勉強をしています。公文式の学習サポートは時々私がしていますが、英語塾のサポートは父親がしています。

新型コロナウイルスの影響でオンライン英語塾はとても充実しており、学習方法も費用も様々です。試してみて、違うなと感じたら変えてみるとよいと思います。息子もいろいろと試してみて、現在の英語塾が3つ目です。今後も生活スタイルや勉強したいことに応じて、変えていくつもりです。

語学は海外生活を通じて得られた貴重なものの一つですが、いろいろな人や価値観に出会えたことが何よりの財産だと思うので、この先も出会いを広げてやれたらいいなと思います。

余談ですが、私には子どもの教育に関わる仕事の経験があるので、子どもと一緒に勉強することに慣れていますし、力の抜き具合も知っています。それでも負担を感じることは多々あります。子育ては先の長い大仕事なので、親としてではなく一人の大人として満足できることや時間があってこそ頑張れるものだと思います。プロの力や他人の力を大いに使い、親である自分のことも大事にしながら子どもと向き合うことがとても大切だと感じています。

海外生活中に、お子さまとしておいてよかったと感じることはありますか?

そこでしかできないことをやってみたことです。コロナ禍前だったので現地校や地域のイベント、夫とつながりのある外国人の方との交流など、何でも息子と一緒に参加しました。親子で一緒に日本とは違う文化や価値観を感じとることができてよかったです。

コロナ禍では思うように外へ出て行けず、辛い思いをされている方がたくさんいらっしゃることと思います。でも、目に入るもの、耳にするものすべてが、今そこでしかできないことですから。在米中、失敗ばかりしてもう何もしたくなくなったときに「見てるだけでもいいんだ」という夫の一言に救われたことがありました。振り返ってみて私も強くそう思います。今住んでいる場所の空気を子どもと一緒に感じることだって、帰国してしまえばもう二度とできないことだったんだと改めて思っています。

日本に戻ったときに友だちと意気投合するネタになるので、Youtubeを見たりゲームをしたりしていたことがよかったという話も聞きます。息子の場合は、帰国して間もないころに友だちとのおしゃべりの中で、日本の人気テレビ番組の話題についていけないことがありました。でも、友だちに「だってお前、アメリカ人だもんな!」と言われ、息子が「そうなんだよ」と答えるというずっこけな会話が展開され、笑ってしまいました。子どもは子どもの中で柔軟にたくましくやっていくから、大丈夫なんだと思えた瞬間でした。

お子さまの今後の学校、教育について、どのようにお考えですか?

息子が頑張りたいと思うことを経済的、時間的に可能な範囲で応援したいです。 今は英語を好きでやりたいと言っていますが、年齢が上がれば自分の経験の少なさを実感するときが来るはずです。その時にどんな選択をしていくかは息子次第です。一緒に頑張れるうちは、せっかくだから楽しくやってみようと夫と話しています。息子の運んでくる新しい世界を親子で一緒に楽しめたらと思っています。

これから本帰国し、学校選びをされる方へメッセージをお願いします。

「帰国子女」という言葉はありますが、決して1つにはくくることのできない一人ひとりの違いがあります。どんな学校を選んだとしても、いいことばかりではないし悪いことばかりでもないと思います。世界中が大きく変わっている今だから、いろいろな学びの形も生まれており、選択の幅が広がりつつあります。どんな学校でも、学校は人生の一つの通過点であり、子どもにとっての居場所の一つであればよいと思っています。私の息子もオンライン英語塾が面白い、地域のサッカークラブが好き、近所の友だちと遊ぶことが楽しいと、学校以外のいろいろな場で育っています。

先のことを心配し過ぎずに、子どもの今熱中していることを応援してあげてよいのではないでしょうか。海外で過ごし、均質ではない多様な価値観に子どもも親も触れた経験は人生の財産であり、これからの日本の宝になるはずです。その親子の宝を大切にしていたいと私は思います。今できることを一生懸命やることで、きっと次の道は拓かれていくと思っています。成長と共にどんどん変化していく子どもとの人生を、柔軟に楽しみたいですね!

運営メンバーれいどん
「帰国後の学校選び」の体験談、第一弾です。こんな情報を知りたかった!と思われる方も多いのではないでしょうか。Rさん、本帰国後のお子さまの学校での様子、親の心構えなどを丁寧に教えていただき、ありがとうございました!

アメリカ・ボストンの生活情報

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