~実録!駐在妻のホンネ~ 現在進行形の駐妻生活をのぞき見するコラム 第2回
現在進行形の駐妻生活をのぞき見するコラムの第2回目です。
夫の転勤によりアメリカ、カリフォルニア州に人生ではじめて海外移住したリーです。
ただいま4カ月目を迎えました。
新型コロナウイルスの影響により、少しだけ慣れたアメリカ生活も180度変わってしまいました。
前回の記事を先に読みたい方はコチラ:第1回 孤独からの解放
遺書を書いた日
2020年3月19日、カリフォルニア州には自宅退避令(Stay at home order)が出されました。自宅退避とはいっても、生活必需品の買い出しや、他人と6フィート離れていれば散歩も許されています。夫の会社からは、無期限の在宅勤務指示が出ました。
夫とは別の会社に勤める近所の日本人駐在家族には、駐在員を含めた家族全員の日本への一時帰国指示が出ました。また別の会社に勤める家族には、帯同家族のみ日本への一時帰国指示推奨という指示が出ました。会社によって指示も様々、時期も様々です。
誰がいつどこで感染するかわからない状況に加え、駐在家族にはいつ一時帰国指示が出されるかわかりません。日本では、3月26日に米国からの入国者に対する検疫強化が決定されました。日本人を含む米国全域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所で14日間待機し、その間は日本国内において公共交通機関を使用しないことを要請するものです。
世界がこんな状況になるなんて誰が予想できたでしょうか。
1歳になる娘と多い時で1日に2回行っていた公園も、週に1回になりました。週末に家族3人で行っていた日系スーパーへの買い出しは、夫が1人で行くことになりました。マスクなんてする習慣がない欧米人が、マスクを着用しているのです。私にはその光景が異様に映り、たまにの買い出しの際には足早になってしまいます。
4月8日現在、カリフォルニア州政府が公表している州内感染者数は16,957人です。死者は442人です。ウイルスの特性についてはまだ全容解明されていませんが、感染経路が不明な人もいるし、発症してから急激に症状が悪化し、自分が新型コロナウイルスに感染していると結果が出る前に亡くなった人もいるとのことです。
もし日本にいる自分の親が感染して症状が悪化しても、すぐには帰国できないだろうし、帰国できたとしても2週間は待機しなければならないので、すぐには会えません。それを考えると、日本にいる両親も、アメリカにいる自分たちも感染しないことを祈るしかありません。
世界のどこが安全だとも言えないこの状況で、万が一、感染してすぐに死に至るケースがあるのならば、私は遺書を書いておこうと思いました。遺書と言っても財産分与の内容ではありません。そもそも私に財産はありませんが。
娘と夫に伝えきれていないことがあります。娘はまだ1歳なので話もできません。でも、いつかわかるようになったら読んで欲しいと思い、手帳に書き出しました。
娘へ
生まれてきてくれてありがとう。
そして、とてもいい子でありがとう。
もし人生で迷うことがあったら、パパに従ってね。
パパはとても正しい人です。
もし人生で迷うことがあったら、じっくり悩むことも悪いことではないよ。
ママのように迷っても、パパと出会ってあなたを産んで、とても幸せな人生をおくることができます。あきらめないでね。
夫へ
いつもいつも助けてくれてありがとう。
私はとても人生が良くなりました。
いつも迷惑ばかりかけて、いつも助けてもらっていたね。
本当にありがとう。出会って約10年。
素敵な時間ばかりでした。
遺書を書こうと思い立ったのは、新型コロナウイルスがきっかけですが、駐在として外国にいるからこそ、今書いておきたいと思いました。もし感染すれば隔離され、誰とも会うことはできないでしょう。それが海外ならなおさら、言葉の壁もある。どんな状況に陥るか想像すらつきません。
自宅退避令が出されて1カ月が過ぎようとしています。たった1カ月ですが、四六時中、家族が一緒にいることでイライラしてしまうことが増えました。些細なことなのに琴線に触れる感覚すら覚えてしまうこともあります。
積み重なる小さなストレスが塊となって居すわり、ふとした瞬間にそれにつまずいてしまう。AFP通信社などが、外出自粛に伴い、世界的にDV被害が急増していると警鐘を鳴らしていることも軽視できません。また、子どもに対する虐待も懸念されます。
そんな張り詰める毎日の中、改めて遺書を書いてみると感謝の言葉が並びました。また、寝る前にふと、今日はどんな一日だったか振り返ることが、とても心を落ち着かせてくれました。その日に何か特別なことをしなくても、掃除を頑張ったとか、きれいな花が咲いていたなとか、気づきを振り返ることが次の日に繋がる気がしました。
日々のニュースを見ていると、人はいつ死を迎えるかわからないということを、とても意識させられます。それならば今できる範囲でしたいことをして、一緒にいたい人といなければ後悔します。一日も早い収束を願って、またいつか家族で自由に出かけられるようにと、今はひたすらに家にいるしかないと思うのです。
2020.4.16記
▼学校法人産業能率大学総合研究所のシリーズ「各国の駐在妻が見た、新型コロナと現地の今」に執筆しました。
▼アメリカ駐在から見えた貧困、難民問題〜実録!駐在妻のホンネ 第3回〜ぜひご覧ください!