海外で日本人学校から現地校へ転入しました【イギリス ・ロンドン】(後編)

イギリス・ロンドンで、二人のお子さんの日本人学校から現地校への転入を決めたT.O.さん。

前編はこちらの記事をご覧ください。

後編では、お子さんたちとの向き合い方を中心にお話いただきました。

日本との違いで戸惑ったことがあれば、教えてください。

現地校は校内での忘れ物や紛失物について、ほとんど関与しませんでした。制服や水筒を忘れたときには、落とし物ボックスに入れられるまで待つしかなく、見つからないことも多々ありました。日本との文化の違いだなと感じました。

またパジャマで登校したり、テーマを決めて仮装して登校したりする機会が多く、衣装を準備するのがちょっと大変でした(もちろん仮装せずに制服で登校しても問題はありません)。

学校選びについて、お子さまとはどのような相談をされましたか?また、通われたお子さまの感想はいかがですか?

子どもたちには、夫から「イギリスでしかできない経験をしてほしい」ということを説明してもらいました。子どもたちは父親を尊敬しており、彼の言葉は真剣に受け止めると考えたからです。

特に長男に関して言えば、日本の同級生の中に中学受験に挑戦している子も多かったので、「その子たちと同じように何かに挑戦しよう」ということをよく話しました。そうしたことが功を奏したのか、長男は納得して現地校へ移ることができました。日本人学校でとても楽しそうに過ごしていたので、親としては葛藤もあったのですが、「今しかできない経験をする」ということを優先しました。

長男は保育園の発表会では舞台で大泣きするような子で、正直、言葉の通じない中で中学校生活が送れるかかなり心配でした。しかし本人なりに「帰国までに少しでも英語を上達させる」という目標を持っていたようで、愚痴を言いながらも暗いうちから(イギリスの冬の朝は暗いです)バスに乗って通学していました。日本では一人で電車もバスも乗ったことはありませんでした。

長男の意外なたくましさを知ることができたことが、転入での何よりの収穫でした。

納得して転校した長男とは違い、次男は最後まで転校したくないと言っていましたが、ここでは親の方針を通しました。そのため次男は、しばらく日本の勉強にも英語の勉強にも意欲がわかず、投げやりな姿勢になっていました(笑)。半年が過ぎたころにはクラスでのできごとを話してくれるようになりましたが、それでもイギリスの学校より日本の学習塾の方が楽しかったそうです。

入学・転入前に、お子さまは必要となる言語の学習はされましたか?

日本にいる時:

兄弟で家庭教師に英語を教わっていました。しかし途中で兄弟げんかをはじめたりと、ほとんど英語の習得にはつながりませんでした。

長男は英語の文法を学ぶ学習塾に半年ほど通いましたが、ほとんど話せず、英文も読めませんでした。ただ多少の単語は記憶に残ったようで、渡英してから英語でのやりとりの中で思い出していたそうです。

渡英してから:

日本人学校に通っているときは少しでもイギリスとの接点を持たせようと、博物館でのイベントに参加したり、イギリス人が先生の絵画教室や学習塾(日本での公文のようなところ)に通わせたりました。どちらも日本語を話す先生も生徒もいなかったので、英語を少しでも身につける機会になるかと思いましたが、やはり短時間で何かを得ることは難しかったです。学校というメインの時間を過ごすことが一番だと思い至りました。

入学してから:

イギリスの学校は、英語が母国語でない生徒の扱いに慣れており、受け入れ態勢も整っています。具体的には、小学校でも中学校でもEALと呼ばれる英語の補習クラスがあり、英語が話せない生徒を集め、少人数で補習をしてくれます。ただ学校によってはこうしたクラスがないところもあるので、入学前に確認が必要です。

中学生で英語を話せない日本人が現地校に行くというのはあまり聞いたことがなく、参考にできる経験談もなく不安でした。しかし実際に通ってみると、少ないながらも日本人の転入生もいて、日本人以外で英語が苦手な生徒も多く通学していることがわかりました。

転入前に、語学学習以外でやっておいてよかったこと、やっておけばよかったことがあれば、教えてください。

現地の絵画教室や学習塾での習いごとは、子どもにとって英語に慣れる助けになったと思います。子どもたちも「現地校もこんな感じか」とイメージできるようになったのではないかと思います。

日本の学習塾の進路相談でも言われたのですが、やはりある程度大きいお子さんの場合は、本人の気持ちが大切だと感じました。

親として「英語ができないと中学校生活は難しいのでは」と気をもんでいたときに、塾の先生から「英語ができても大変です。その大変さをやり切れるかは最終的には本人のやる気なんですよ」と言われました。

長男は自分でも「英語を上達させたい」と思って現地校に転入したので、愚痴はいろいろと言っていましたが「もう行くのはやめる」と言ったことはなかったです。塾の先生の言葉通り、本人の「現地校での生活をやり切る」という気持ちが大きかったと思います。

多少なりとも、子ども自らが納得して選択するというプロセスを踏むと、本人も頑張れるのかなと思いました。ただ子どもが納得するのを待っていると、挑戦の機会を失うのもまた事実で、すべての子どもに万能な選択はないと感じます。

そのため、親が「挑戦してみて辛いのであれば撤回する」という気持ちを忘れないでいることが大切かなと思います。そして「やってみてダメなら、その選択を変えることもできるんだよ」と子どもに伝え、その上で今の挑戦を励ましてあげることが子どもの頑張りにつながるのではないかと感じています。

お子さまの今後の学校、教育について、どのようにお考えですか?

イギリスに来る前は「画一的だ」と批判的にとらえていた日本の教育の優れた点を、イギリスでの教育を経験したことによって、再確認することができました。

例えば、日本の学校では「子どもたちの能力をある一定のレベルまで、等しく引き上げる」という社会的な努力がなされていることです。

子どもたちが通っていた現地校では、体育が週に一回しかなく、日本人から見ると遊びの要素が多い内容でした。日本のように跳び箱を指導したり、短距離走のタイムを計ったりという「競技」を教えるということは、少なくとも子どもが通う小学校ではなかったように記憶しています(イギリスは中学校になるとガラリと厳しくなるので、また様子が変わるかもしれません)。

また、イギリスでは子どものあるがままを伸ばすという価値観で、子どもをよく褒めます。そこからさらに頑張って自分を高められるか、現状に満足してしまうかは個人、そして家庭の意識と努力にゆだねられていると感じました。

その点、日本は社会として「子どもは最低限ここまでできるようにする」という共通目標があります。学校がその能力獲得の大きな役割を果たしていると気づきました。

そのため英語はもちろんですが、子どもたちにはまず、日本での定められた勉強をしっかりやってほしいと思っています。

その上で、将来自らの意思でまた海外へ行ってみたいと思うようになったときには、大いに応援したいと思っています。

これから海外で学校選びをされる方にメッセージをお願いします。

「海外での時間をどのようなものにしたいか」という気持ちを家族で共有した上で学校選びをすると、その選択やそこで過ごす時間に納得ができるのではないかと思います。少なくとも我が家の場合は、この「目標の共有」が大きな助けとなりました。

滞在国によっても、子どもの希望や性格によっても、最善と思われる選択肢は異なると思います。実際に現地校での時間が長く、日本に戻るときのことを心配されている方もいらっしゃいます。万能な選択はないように感じます。

周りの選択はあくまでも参考程度にとどめ、家族で方向性を共有することが大切だと思います。迷ったら自分だけで抱え込まず、子ども本人を含め家族で話し合って答えを探っていけば、どんな経験からも必ず得るものはあると感じています。

あとがき

現地で二人のお子さんが進学や転入を経験する中で、いつもいちばん近くで見守っていたT.O.さんにも、様々な不安や迷いがあったことと思います。

それらを乗り越えてきたT.O.さんが語る「家族で気持ち、目標、方向性を共有することが大切」という言葉に、私自身も家族との向き合い方について考えさせられました。

T.O.さん、貴重な体験談をありがとうございました!