海外で出産しました【ドイツ・フランクフルト】

ドイツ・フランクフルトに滞在中、第2子を出産されたAさんのインタビューです。

自己紹介をお願いします

Aです。2018年10月からドイツ・フランクフルトに住んでいます。3歳の息子(日本で出産)と0歳の娘(フランクフルトで出産)がいます。

妊娠検診~出産まで、簡単に流れ(スケジュール)を教えてください。

渡独から約半年後に妊娠し、2019年4月に日本語通訳の方がいらっしゃるDr. Sabetのクリニックを受診しました。

その後、妊娠4カ月頃にヘバメに申し込みをしました。ヘバメとは助産師のことで、ドイツにはヘバメが自宅を訪問して赤ちゃんと産後の母親のケアをしてくれる制度があります。カバーされる訪問回数は加入している保険により異なりますが、保険も適用されます。また、ドイツでは妊婦検診はクリニックで行いますが、出産は病院で行うため、妊娠9カ月頃に出産する病院を決め、分娩予約をしました。病院によっては英語での見学会もありますが、日本人の知り合いの体験談や口コミでSachsenhausen病院に決め、妊娠35週に分娩予約し、2019年12月に出産しました。

妊婦検診の流れを教えてください

検診の頻度や内容は、基本的に日本とさほど変わりませんが、毎回の尿検査、体重・血圧測定に加え、血液検査(指先に小さな針を刺して出血させ、ヘモグロビン値を測る)がありました。初診時は子宮頸がん、乳がんの検査もありました(1年以内に同検査を受けていない場合)。

30週からは毎回20分間のCTG(お腹にモニターをつけて、赤ちゃんの心拍や子宮の収縮具合を測るもの)の測定があります。

海外と日本で妊婦検診に違いがあったら、教えてください

日本だとほぼ毎回エコー検査があると思うのですが、ドイツでは加入している保険によって保険でカバーされるエコー検査の回数が異なります(法定保険の場合は3回、プライベート保険の場合は大抵毎回)。自己負担でエコー検査を追加で受けることも可能です。

また、フレッシュチーズや生ハムをよく食べる文化だからか、トキソプラズマの抗体検査もありました(保険によっては自費)。

内診台には日本の産婦人科にあるような目隠しのカーテンはありません。下着などを脱ぐスペースから内診台までの移動、そして内診後のエコー検査も目隠しがない状態で行われるので、気になる方はスカートで行ったほうがいいかもしれません。

海外での妊婦検診で、不安や心配なことはありましたか?

何か異常があったときや大事な検査結果については、もちろん先生が説明してくれるのですが、毎回の検診結果は母子手帳にドイツ語で記載されるので、何を検査されてどういう結果だったのか、病院への申し送り事項など、パッと見ただけではよく分からず、少し不安でした。

出産までの流れを教えてください

当日の朝、陣痛が始まり、通訳さんに電話して病院に連絡してもらい、夫の車で病院(Krankenhaus Sachsenhausen)に向かいました。

もともと検診時からお世話になっていた通訳さんに出産時も通訳してもらう予定だったのですが、通訳さんの体調不良でお願いできなくなり、代理の通訳さんも休暇中だったため、通訳なしでの出産となりました。分娩予約時にドイツ語があまり話せないことを伝えていたためか、英語の話せる医師・助産師さんが担当してくださいました。

昼過ぎに子宮口が6センチほど開いたところで分娩室に移動し、助産師さんの勧めで笑気麻酔を使用しました。笑気とは「亜酸化窒素」の別名で、このガスを吸った患者さんが、笑ったような表情になることからそう呼ばれるようになったそうです。酸素マスクのようなマスクをつけてガスを吸い込みます。「笑気麻酔を使ったら爆笑しながら出産した」という友人がいたので、最初は弱めでお願いしたのですが、全然効かず、後半は「もっと強くして!」と懇願していました(笑)。

その後、「お産が進むから」と、人工破膜により人工的に破水させました。

分娩時は、日本だと分娩台に足を置く台があって、そこに足をのせていきむスタイルが多いと思うのですが、医師と助産師に片足ずつ抱え込まれ、二人の腹筋を踏み込むスタイルでした。最初は「人様のお腹を……」と躊躇しましたが、そう思ったのは最初だけで、遠慮なく思いっきり蹴り込ませていただきました。

臍の緒は夫に切ってもらいました。ドイツでは臍の緒を残しておく文化がありません。長めに切っておかないと臍の緒が残らないのですが、もうこの時は力尽きていたため、すっかり忘れて普通に切ってしまいました。

なぜ、海外での出産を選ばれたのですか?不安はありましたか?

最初は迷いましたが、

  • 里帰りすると、上の子がしばらく幼稚園に通えなくなり、父親とも会えなくなってしまうこと
  • 夫に出産に立ち会ってもらい、産後も赤ちゃんと過ごしてほしかったこと
  • お腹の大きな状態で上の子を連れて日本に帰国、そして、産後小さい子ども二人を連れてドイツに戻ってくるのが不安だったこと
  • こちらで妊娠したママ友たちは、ほぼ皆んなフランクフルトで出産しており、経験豊富な通訳の方がいらっしゃったこと

から、フランクフルトで出産することに決めました。

結果論ではありますが、産後2~3カ月でコロナが流行し始めて渡航制限が課されるようになったので、今となってはこちらで出産しておいて本当によかったです。

海外と日本で出産に関して、違いはありましたか?

無痛・和痛分娩の盛んなドイツですが、和痛分娩に関しては、特に事前の申し込みも必要なく、様々な種類・強さの麻酔を当日に医師や助産師さんと相談しながら使用できます。私は当初、完全自然分娩のつもりでしたが、助産師さんの勧めで、笑気麻酔を使用しました。

また、これはドイツに限らず海外あるあるだと思いますが、分娩室では妊婦の足元側に立会者用の椅子が置いてあります。旦那さんに会陰接合までばっちり見られたと言う人もいたので、旦那さんに立ち会ってもらう場合、見られたくなければ事前に頭側に立ってもらうよう話しておいた方がよいです。

病室は個室・ファミリールーム(父親+事前に許可を取れば子どもも宿泊可)・二人部屋があり、病室内にトイレとシャワールームがあります。二人部屋は日本のようなカーテンや仕切りはなく、オープンなので、相部屋になった方の旦那さんが面会に来ているときは授乳や着替えがしづらかったです。

出産費用・入院費用は基本的に保険でカバーされるので、退院時の精算はありませんでした。借りていたベビー用のベッドなどを返却するだけで、スムーズすぎてびっくりしました。

海外出産してよかったこと、困ったことについて教えてください。

<よかったこと>

こちらで出産して一番よかったのは、生まれたての状態でカンガルーケアをさせてもらえたことです。生まれてすぐ、臍の緒が繋がったまま、まだ胎脂でべとべとの状態の赤ちゃんを抱かせてもらえるのですが、生まれたての我が子は湯気が出ていそうなほど温かくて、いまだにその時の感触が忘れられないくらい感動しました。一人目を日本で出産した時もカンガルーケアをしてもらいましたが、ある程度きれいに洗ってもらってからの抱っこだったので、まったく感触が違いました。

また、こちらはよくも悪くも放任主義で、自分から質問やお願いをしない限り、諸々の指導はありません。でも、お願いするととても親切に対応してくれます。一人目を日本で出産したときは、入院中も検診だけでなく沐浴指導や母乳指導、調乳指導など何かと忙しかったのですが、こちらではとてもゆったりと過ごせました。

<困ったこと>

ドイツで出産した方々が口をそろえて言うのが、食事の質素さです。ドイツではカルテスエッセン(冷たい食事)と言って、夕食に火を通ったものを食べない文化があります。病院食はまさしくそれで、温かい食事は昼食のみ。夕食はパンとチーズ、ピクルス、フルーツだけです。それも毎回自分でカフェテリアまで取りに行かなくてはいけません。もちろんお祝い膳なんてありません。入院バッグに詰め込んだおやつと、夫が面会時に持ってきてくれた差し入れでしのぎました。

また、私はドイツ語があまり話せないので、入院中、英語ができる助産師さんがいない時は困りました。夜勤は比較的若くて英語の話せる助産師さんが多かったのですが、昼間は英語が通じる助産師さんはあまりいなかったです。

出産前後に、特別にお手伝いはお願いされましたか?

産前・産後の合計2カ月弱、日本から実両親に来てもらいました。

また、退院後に計6回ヘバメに自宅訪問してもらいました。

その時の準備などについて、教えてください

<実両親>

安定期に入った頃にドイツで出産すると決め、そのタイミングで実母に相談しました。最初は母だけ来てくれる予定だったのですが、英語も不得意で一人で海外に行くのもはじめてで不安がっていた母を見て、父も同行してくれることになりました。

上の子が予定日より早く生まれたので、少し余裕をもって予定日の約2週間前に来てもらい、私が入院中に両親が困らないよう、上の子の幼稚園やスーパーなどに一緒に出かけて生活に慣れてもらえるようにしました。

<ヘバメ>

ドイツの大都市ではヘバメが不足しており、特に夏休み・クリスマスの時期は深刻です。私は出産予定日が12月上旬だったので、妊娠3カ月あたりから探し始め、こちらで出産した友人に、日本人向けに両親学級を開いていて日本人に慣れており、英語を話せるヘバメを紹介してもらい、産後ケアのお願いをしました。

お手伝いをお願いしてよかったこと、困ったことについて教えてください

<実両親>

とにかく出産時の上の子のことが心配だったのですが、今でも出産時のことを聞くと「おじいちゃん、おばあちゃんがいたから寂しくなかった!」と言うので、息子に寂しい思いをさせずにすんだことが一番よかったです。そのように息子と接してくれた両親に感謝しています。

退院してからも、家事・育児を手伝ってもらえたのはもちろん、ドイツの寒い冬の中、生まれたばかりの赤ちゃんを連れて息子の幼稚園の送り迎えをしなくてすんだことも本当に助かりました。

<ヘバメ>

第二子だったので、赤ちゃんのお世話についてはある程度はわかっていましたが、ドイツ式のお世話方法を教えてもらえて興味深かったです。中でも乳頭ケアのための紅茶パック(ぬるま湯に浸して絞った紅茶のティーバッグを胸にあてておく)はびっくりしましたが、とてもよく効いたので、これから出産される方にはぜひ試してもらいたいです!

また、「これから数日はお母さんの気持ちが落ち込みやすい」「この1~2週間は赤ちゃんのガスがたまりやすい」など、その時々の母体のホルモンバランスや赤ちゃんの体調についてアドバイスをしてもらえたので、助かりました。

もし、また出産するとしたら、海外出産を選びますか?

はい。妊娠中に特に異常や問題がなければ、またドイツで出産したいです。

海外での妊婦検診、出産費用は日本より高いと聞きますが、いかがでしたか?

どの保険に加入しているかにもよりますが、検診費用も出産費用も基本的にほぼ保険でカバーされます。私の場合、追加でエコー検査とトキソプラズマ抗体検査、NT検査(超音波で赤ちゃんの首の後ろのむくみを測定してダウン症などの可能性をチェックするもの)を自己負担しましたが、それ以外はすべて保険でカバーされました。プライベート保険の場合は、私が自己負担した検査もすべてカバーされることが多いです。

また、私は受けませんでしたが、出生前診断(NIPT)も日本の3~5分の1ほどの値段で受けることができます。

妊娠、出産、産後を通じて、必要なものはどのように揃えましたか?日本で調達した方がいいものはありましたか?

消耗品以外は、基本的に第一子の時に使用したものと、こちらの友人から譲ってもらったもので対応できました。

ベビー服:ドイツでも買えますが、カバーオールは足先まで覆うタイプが主流だったり、頭からかぶるタイプ、背中にボタンがあるタイプのものが多いので、個人的には月齢が小さいうちは、前ボタンの日本のカバーオールが着せやすいと思います。肌着も、ドイツのものは頭からかぶるタイプのものが多いです。

ベビーフード:ドイツのベビーフードはほとんどがBio(オーガニック)で種類が豊富ですが、離乳食用のお出汁やうどんを日本から持ってきてもらいました。

哺乳瓶:ドイツが本場のNUKの哺乳瓶を購入できますが、娘には合わなかったようで、Pigeonの哺乳瓶を日本から持ってきてもらって助かりました。

また、ベビー用品ではありませんが、ドイツでは出生届を提出する際に、両親の婚姻証明が必要となるため、日本の戸籍謄本とそのドイツ語訳(認証付)が必要です。戸籍謄本の取り寄せと翻訳にそれなりの時間がかかるため、早めに戸籍謄本を取り寄せる必要があります。

住んでいる国ならではの習慣や困った経験はありますか?どのように対処されましたか?

こちらの水は硬水なので、赤ちゃんは週に一回しか沐浴をさせません。ヘバメにもそのように指導されます。最初は「そうはいっても……」と思いましたが、空気が乾燥しているので、暑い時期以外は臭いが気になったり、髪や肌がべたべたしたりすることはありませんでした。何より楽です!

また、日照量が少ないので、ビタミンD生成のためとリフレッシュのために、産後すぐに散歩するようヘバメに勧められたのには驚きました(しかも寒~いドイツの冬に……)。ちなみに赤ちゃんは退院時にビタミンD剤を処方され、毎日飲ませます。

妊娠から子育て期間を通じて、なかなか相談できる場所もなく困った件などありましたか?もしあった場合、どのように解決または対処されましたか?

経験豊富な日本語通訳、ヘバメ、こちらで出産経験のあるママ友もたくさんいたので、特にありませんでした。

これから妊婦検診〜出産を迎える方にメッセージをお願いします。

異国での妊娠・出産、それに加えコロナの影響もあり、不安に思われることも多いと思いますが、私は娘のおかげでとても貴重な経験をさせてもらったと思っています!

こちらで妊娠・出産された日本人は私以外にもたくさんいますし、日本人の方が主催している妊婦さんの会もあります。安心してマタニティライフを満喫していただけたらなと思います。

運営メンバーM
Aさんのドイツ・フランクフルトでの幼稚園選び体験談もぜひご覧ください。また、世界中の駐在妻とオンラインでお話をするオンラインカフェについての情報も掲載しています。
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