海外でハイリスク出産をしました【オーストラリア・パース】(後編)

パースの病院
海外での妊娠・出産(子育て体験談)

オーストラリア・パースで2度のハイリスク出産を経験されたSさん。

前編はこちらの記事をご覧ください。

後編では、リスクのあったSさんが海外での出産を決めた理由、Sさんの考える海外と日本での出産事情の違いについてお話いただきました。

このインタビューには、生まれた赤ちゃんが入院したり、手術を受けたりする描写や流産の記述が含まれます。そちらを踏まえて、お読みください。

第一子出産の際の困難な体験と2度の流産があったにも関わらず、第二子の日本での出産を選択されなかったのはなぜでしょうか?

そもそも第一子をパースで出産することにしたのは、

  • 夫の近くで出産したかったこと
  • 数カ月間母子のみで日本に滞在するのを避けたかったこと
  • 新生児期から夫と2人で育てたいという思いがあったこと
  • 実母が1カ月程度、現地に手伝いに来てくれるのを見込めたこと

などが理由にあります。

第二子もパースで産みたいと思えたのは、現地での出産と流産の経験が嫌なものではなかったからです。

第一子は、「腸回転異常」という病名で、医師からは「6000人に1人の確率」、「遺伝的なものではない」と説明されました。

この確率なら、また同じようなことが起こるとは思わなかったし、次は大丈夫だろうという楽観的な思いがありました。

また、言葉の壁はあったけれど、医師や助産師、その他の人々に親切にしていただき、医療レベルやシステムにも不満はありませんでした。入院生活も快適で、周りの友人にも恵まれていたので、この環境でもう一度出産したいと思いました。

逆に言うと、日本で産むメリットを見出せませんでした。第一子妊娠中の一時帰国時に、日本で妊婦健診を受ける機会がありましたが、結構大変でした。病院が非常に混んでいて狭く、待ち時間も長く、家から病院へのアクセスもよくなかったのです。それに比べると、パースの広々とおおらかな雰囲気が気に入っていました。

現地での妊娠生活を振り返ってみて、どのように思いますか?

第二子の妊娠生活は、日本だったら安静のために出産まで入院する必要があったと思います。しかし、パースの医師は特に何かを指示することはありませんでした。

インターネットで得た日本の情報とあまりにも違ったので、何か予防のためにできることはないかと尋ねましたが、「祈るだけ!」という返事でした。

医療レベルは日本並みに高いと思いますが、安静に関しては、考え方や文化の違いがあると思います。

私は日本のやり方を真似て、自分なりに静かに生活していました。いつ大出血が起きても対応できるように、外出をできるだけ控え、上の子は毎日デイケア(保育園)に入れることにしました。

また、生活サポートサービスを提供している「Yu&Mie Partners」を利用し、お惣菜を届けてもらっていました。買い物に出なくても日本の味を日本人女性が届けてくれて、とても心強かったです。

私は利用したことがありませんが、他にも「虹の会」という日本人のボランティアグループがあります。受診の付き添いや、さまざまな相談に乗ってくれるようです。

自分の身体を第一にしたことで、いろいろと費用はかかりましたが、何を優先するかを考えて、不測の事態が起きたときに後悔しないようにと思っていました。

妊娠後期に出血で2回入院しましたが、ママ友が差し入れをしてくれたり、上の子の心配をしてくれたり、本当にありがたいと感じました。普段から交流があった周りの方々に恵まれていたと思います。

海外と日本で出産後に関して、違いはありましたか?

私は日本で保健師をしていました。その際に、小さく生まれたり、病気や障害を持っている赤ちゃんの家庭訪問をしていました。ケースによっては、病院から区や保健所などの公的な機関に連絡があり、連携してお母さんと赤ちゃんをフォローしていました。

一方、パースでは個人に任されていて、待っていても支援の手は届きません。予防接種や乳児健診のお知らせも来ないので、自分で管理していく必要があります。何か心配なことがあれば「こういうことに困っている」「こういう助けを探している」と声を上げることが必要だと思います。

周囲の日本人や現地の人々、病院など、どこかに相談したり助けを求めたりすれば、そこから道はたくさん開けてくるような気がします。

また、細かい話になりますが、日本と違って、妊婦健診から各種検査、出産とその後のフォローなどが一カ所で済みません。

パースでは、まずGP(General Practitioner :一般開業医)に行き、産婦人科専門医に行き、超音波検査や血液検査はそれぞれの検査ができる施設に行き、病院で出産し、産後の健診はまた専門医が行います。その後もフォローが必要であればGPで受診となるので、色々な施設へ行く必要がありました。

私は車を運転して簡単に行くことができたので、それほど苦労はありませんでしたが、海外の地で妊婦があちこちに行かなければならないというのは、日本に比べたらハードルが高いかもしれません。

出産に関しては無痛分娩が多く、傷の痛みについても積極的に薬で緩和させていく方針でした。つわりのときも吐き気止め薬を処方されるなど、辛いことを我慢するようなことは求められていませんでした。全体的に、焦らずゆっくりと過ごし、本人の希望を聞く雰囲気がありました。

これから妊婦健診〜出産を迎える方にメッセージをお願いします

私は妊娠するまで特に大きな病気をしたことがなく、自分は健康だと思っていました。

日本で保健師という仕事をしていたので、妊娠・出産にはさまざまなケースがあると分かっていたつもりですが、まさか自分がこのような経験をするとは思っていませんでした。

しかし、妊娠・出産に関しては、誰一人として同じ経過をたどる人はいないと思います。たまたま私が妊娠して流産して、そしてハイリスク出産を経験しただけ。そして、それがたまたま海外で起きただけの話だと思います。誰にでも起こり得ることです。怖がらせるつもりはありませんが、うまくいくときもあれば、そうでないときもあると思っておくといいかもしれません。

先日、現地で出産した友人によると、新型コロナウイルスの影響で妊婦健診がオンライン診察になったとのことでした。エコーを見て赤ちゃんの心音を確認したかっただろうと思いますが、オンラインではできません。それもまた不安だったろうと思います。

国や地域、そしてタイミングによって状況は違うと思います。また、妊娠・出産は誰にとっても人生の一大イベント。それを海外で経験するにあたって、夫の会社関係の方や知人、日本人コミュニティ、そしてインターネットなどから必要な情報を収集し、できるだけ前向きに、なんとかなるさ!の気持ちを持って挑めたらと思います。

私はすでに本帰国していますが、海外でハイリスク妊娠・出産したという経験を今後に活かしていきたいと思いますし、少しでも誰かの役に立てたらいいなと思っています。

あとがき

決して順調とは言えない妊娠・出産を、海外という慣れない環境で体験したSさん。不安なことも心配なこともたくさんあったかと思いますが、周りの力を借り、一つひとつ困難に対応していく強さに、私自身も大きな勇気をもらうことができました。

Sさん、貴重な体験談をありがとうございました!

おすすめ記事10選より紹介

関連記事一覧