中国・長沙でお子さんがインターナショナルスクール(幼稚園)に通っている、ひとみさんへのインタビューです。学校の選び方、入園までの流れ、幼稚園での過ごし方などについてお聞きしました。
自己紹介をお願いします。
ひとみです。現在4歳になる娘がいます。
2019年4月から中国・湖南省長沙に住んでいます(そのうち11カ月間は、コロナの影響で日本に一時帰国していました)。
日本では娘を0歳から保育園に通わせていました。赴任先にはインターナショナルスクール(以下インター)の幼稚園があるので、娘の預け先に関しては問題ないと考え、夫の海外赴任に同行することを決めました。

お子さまはどのような幼稚園に通っていますか?その選択をされた経緯を教えてください。
2019年10月から、事前に調べていた長沙市で唯一のインターのナーサリー(最年少組)に通わせ始めました。
本当は渡航後すぐの5月頃から入園させたかったのですが、このインターには3歳以下の子どもは入学させられないという規則があり、当時2歳だった娘はまだ入園することができませんでした。
そこで、渡航から2カ月後の2019年6月から、マンションに併設されていた英語と中国語のバイリンガル幼稚園に入れました。2歳でも預かってくれるクラスがあったからです。
本社がアメリカでグローバルに展開するバイリンガル幼稚園ですが、生徒は地元中国のお金持ちの子どもばかりで、およそ100名の生徒のうち、外国人は娘と韓国人のハーフの子の2人だけで、流暢な英語を話すのは副校長だけでした。
娘は英語と中国語の両方が飛び交うこの幼稚園に馴染めず、毎日泣き叫んで、登園を嫌がっていました。秋から私の大学への通学が始まると登園時間が大学の授業に間に合わないことから、9月に娘が3歳になるのを待ち、2019年10月から1学年スキップの状態で、現在通っているインターへ転園しました。ここには日本人の子が4人いました。
本来は8月時点で3歳の子どもが入る学年の組に、スキップで入園させてもらえたのは、「どうしても今年度から通わせたい」と学校側と直接面談して交渉したからです。まずは3歳を過ぎているという入園の必須条件をクリアし、集団生活の経験が十分にあるなどの場合には同様に対応してもらえる可能性があるのではと思います。

円状に座っての活動が多かったです。
どんな情報を参考にされましたか?実際に見学する機会はありましたか?
夫の同僚で、すでに赴任中のご家族のお話が一番参考になりました。私と娘に先駆けて主人が赴任していたので、渡航前に現地へ下見がてら遊びに行った際に、そのご家族からお話を伺えました。渡航後すぐにあった文化祭の日にインターの下見もさせてもらえました。
実際に通わせてみて、よかったことは何ですか?
幼稚園から高校まで全学年で国際バカロレア(IB)認定を受けているインターで、東京にいても、幼稚園教育からIBを取り入れている園は数えるほどしかないので、とてもラッキーでした。
日本人が1人でもいるのといないのとはぜんぜん違うようで、バイリンガル幼稚園の時とは比べものにならないスピードで学校生活に慣れていきました。クラスのおよそ8割は外国籍の中国人ですが、欧州系の子どももいれば、アフリカ系の子どももいて多様性を感じられます。前述の通り、国際バカロレア(IB)認定校だったこともすばらしい教育環境だと感じています。
あっという間に日常生活で多くの英単語を取り入れるようになったほど、娘が飛躍的に英語を吸収できたこともよかったと思っています。
さらに、頻繁に開催される発表会でコスプレを楽しむようになってきたこともよかったことの一つです。担任の先生からは「学校では彼女が声を発するのを聞くことはありません!」と心配されていますが、自宅ではお友達の話もするし、学校生活を楽しめているようです。
期待や予想と違っていたことはありましたか?
個人的に残念だったのは、月に2回ほどあるクラスイベントや学校行事に親の参加が必要で忙しいことです。
また、暮らしているうちに都市化に伴う渋滞の悪化が加速し、車で片道30分だった通学時間が50分かかってしまうようになり、親子ともに負担が大きくなっています。
日本との違いで戸惑ったことがあれば、教えてください。
- 親の行事参加の多さ
- なんでも前日にWeChat(中国で使われているメッセンジャーアプリ)で連絡がきて準備の時間がないこと
- アプリを用いて自分で制服を発注すること
- 昼寝の時間が全学年あること
- WeChatのグループで中国人のお母さん同士が中国語で世間話をチャットすること
などなど、他にも日本と違うことはたくさんありますが、どうにかなることばかりです。
幼稚園選びについて、お子さまとはどのような相談をされましたか?また、通われたお子さまの感想はいかがですか?
選択肢がないので相談しようがありませんでしたが、親の都合での転園という環境の変化を経験させたことを、当初は申し訳なく思っていました。でも結果的に転園したことで娘の情緒が安定し、インターを気に入っているのでよかったです。

入園前に、お子さまは必要となる言語の学習はされましたか?
2歳だったので、日本語もおぼつかない状況でしたが、赴任が決まってからはYouTubeで世界的に英語教育に利用されているCocomelonという動画をたくさん見せていました。英語の基本の歌を網羅していますし、出てくるアニメの様子がまさにインターのナーサリーそのもので、インターでの生活にすっと馴染める助けになったと思います。
入園前に、語学学習以外でやっておいてよかったこと、やっておけばよかったことがあれば、教えてください。
海外赴任の子育てについて、10冊ほどの本を読みあさりました。その中でも特に参考になったのは、中島和子さんが書かれた「言葉と教育 海外で子どもを育てている保護者のみなさまへ」という本です。幅広い内容が網羅されていますが、「大事なことは夫婦で子どもの教育についてよく話し合い方針を決めておく」という内容です。
特に2〜3歳という幼児の場合は、母語の形成をどうするかについて、しっかりと対策した方がよいと考えています。我が家は、1歳半から毎晩3冊の読み聞かせをして就寝するという生活習慣ができあがっていたので、それをそのまま活用できたのもよかったです。
お子さまの今後の学校、教育について、どのようにお考えですか?
本帰国後は、今後も日本で生活することを前提とした教育環境を与えるのか、世界を見据えた教育環境を与えるのか、選択しなくてはならないと思っています。
前者ならば公立小学校で日本社会における多様性を学び、中学受験で大学まである私立を受験させたいです。後者ならば、インターナショナルスクールに通わせるつもりで、自宅から通学圏内のインターで目途を立てているところに入れるつもりです。
日本の大学の多くはインターの高校を出ても大学受験資格がないため、選択肢が狭まってしまう点は、社会の制度として今後の変革に期待したいです。
これから海外で幼稚園・学校選びをされる方へメッセージをお願いします。
環境は、親が子どもに与えることのできる最高の教育だと考えています。私のように選択肢がないに等しい場合も多々あると思いますが、事前の情報収集や、入学後も継続的に様々な選択肢を検討するなど、親の時間と労力で補えることもたくさんあると思います。
どんな環境を選んでも「その選択を“正解”にできるのは自分自身だけ」というつもりでいれば、気楽に取り組んでいけると思います。