バンコクに滞在中、第二子を出産されたM.U.さんのインタビューです。
自己紹介をお願いします
M.U.です。2014年8月から、タイのバンコクに住んでいます。
妊婦健診~出産まで、簡単に流れ(スケジュール)を教えてください。
2018年9月に長男を出産し、2021年10月に長女を出産しました。
妊娠時は2回ともバンコクの病院で妊婦健診を受診し、出産しました。
妊婦健診の流れを教えてください。
長男はバムルン病院、長女はサミティベート病院にてお世話になりました。
長男出産後に引越しをしたので、長女の際は違う病院を選びました。
どちらも日本人がよく利用する病院で、自宅からの近さを重視しました。
健診は、日本とほぼ同じスケジュールでした。
診察は毎回、尿検査→体温測定→血圧を測定後、エコーで赤ちゃんのチェックという流れです。
妊娠週数に応じて、血液検査が追加されました。
どちらの病院も日本語通訳の方がついてくれるので、気軽に質問や相談ができて安心でした。
タイでは出生前診断が一般的なようです。私は高齢出産に該当する年齢だったため、非常に強く診断を勧められました。(実際に長男、長女妊娠時どちらも検査を受けました)
コロナ禍での妊婦検診で何か制約などはありましたか?
健診時は常にマスクを着用する必要がありました。
妊娠38週以降は、毎週病院でPCR検査を行うよう指示がありました。
妊娠中に新型コロナウイルスに感染されたとのことですが、妊娠何か月のころでしたか?
長女の妊娠6カ月の頃です。夫と長男も感染していました。
感染したことで、どのような特別措置が必要になりましたか?
夫と息子は非常に軽症でしたが、私は喉の違和感、鼻の痛み、嗅覚障害などの症状がありました。
当時バンコクでは新型コロナウイルス陽性者は、入院、施設隔離、自宅隔離のいずれかの措置が必須となっていました。病院のコロナ病床は、満床に近い状態でした。しかし私が妊婦ということと、夫の会社の人事部の協力もあり、症状は軽いながらも家族全員ですぐに入院が決まりました。
入院中は1日2回検温と酸素飽和度のチェック、医師の問診があり、症状に応じた薬を飲んでいました。6日ほど入院して、症状もおさまりつつあり、最初のPCR検査陽性から2週間ほどたったので、全員退院することができました。
感染したことで、健診に関わる特別な対応などありましたか?
入院先が健診で通っていた総合病院だったので、入院中に担当の産婦人科医が、防護服を着て赤ちゃんの心音チェックに来てくれました。幸い、入院中にも赤ちゃんの状態が悪化することはなく、影響はありませんでした。
次の健診の日程は、退院から3週間後に変更されました。そのため、前回の健診から約1カ月間隔が空いてしまいました。安定期とはいえ約1カ月ぶりにエコーで元気に動く赤ちゃんの姿を見たときには、とてもほっとしました。
どのような不安や心配がありましたか?
妊娠中期での感染で症状も非常に軽かったので、「赤ちゃんや出産への影響はあまりないだろう」と診断された点は安心しました。ただ妊婦ということで、肺のレントゲン検査ができず、自身の容態が急変するかもしれないという心配が常にありました。喉、鼻、嗅覚異常の後遺症への不安がとても大きく、心配が尽きませんでした。
でも今感染することで、「生まれてくる赤ちゃんにも少しばかり免疫が作られるのでは」とポジティブに考えるようにしました。2カ月後には嗅覚も戻り、本当に安心しました。
隔離中、何かサポートは受けましたか?
退院後も、1週間の自宅隔離が必要でした。その間は、フードデリバリーサービスや生鮮食品の宅配サービスをフル活用しました。夫も追加で2週間の出社停止(在宅勤務)となり、長男のお世話を代わってもらい、私は心身ともに養生することができました。
なぜ、海外での出産を選ばれたのですか?不安はありましたか?
長男をバンコクで出産した経験があり、現地の医療体制に安心感がありました。日本人が多く利用する病院なので、出産後のサービスや赤ちゃんグッズのプレゼントなども充実していました。
また、コロナ禍で帰国は大変難しい状況の上、日本の病院は特に海外居住者の新規受け入れなどがとても厳しい印象でした。実家のある東京は産院が少ない上に、コロナ感染者数も多かったので、帰る方が危険と判断し、長女もバンコクで出産することにしました。
コロナ禍での出産で制約はありましたか?
分娩時も常時マスク着用でした。自然分娩だったので、陣痛をこらえている時は少し息苦しかったです。
出産時の立ち会いは1名のみで、立ち会う人もPCR検査が必須でした。出産後の面会には、特に制約はありませんでしたが、マスク着用を求められました。
海外出産してよかったこと、困ったことについて教えてください。
よかったこと
海外で「出産」というライフイベントを経験できたことが、とてもよい思い出になりました。タイでは、妊娠や出産の痛みや辛さをできるだけ緩和する医療方針のようで、さまざまな薬でサポートしてもらえました。
専業主婦だったので、妊娠中の体調不良時もゆっくりと過ごせました。
タイでは赤ちゃんにとても寛容な人が多く、出産後も穏やかな環境で育児を行うことができています。
困った事
通訳さんが忙しい時は、健診を受けられるまで長く待たされることがありました。
妊娠の経過や注意点など、先生からは詳しく教えてもらえませんでした。
日本での妊娠、出産関連情報を参考にしながら、意識して質問を多くするようにしていました。
実際、長女出産の前に臨月の過ごし方を質問すると、念のため追加検査(NST、ノンストレステスト)を行うことになりました。結果、赤ちゃんから苦しそうなサインが出ていたため、急遽翌日に計画出産となりました。
わかっていることでも、念のため聞いておこうという意識でいて本当によかったです。
入院中や出産前後の上のお子さんの育児や家事はどうされましたか?特別なお手伝いをお願いしましたか?
長男を出産した際は、日本から母に2週間ほど手伝いにきてもらいましたが、今回の長女の出産時はコロナ禍でそれもできませんでした。
夫は在宅勤務が難しい業種・職種だったのですが、コロナ禍でタイでもリモートワークが普及したおかげで、今回は1カ月半ほど在宅勤務が可能になりました。長男の保育園送迎や家事の手伝いをしてくれて、とても助かりました。
掃除や洗濯は、週3回ほどお手伝いさんに来てもらっていました。
その時の準備などについて、教えてください
2018年長男出産時
母に来てもらいました。
出産予定日に合わせて、飛行機のチケットを手配しました。
予定日よりも早く出産となったため、タイ入国時の空港でのピックアップは夫にお願いしました。
母が泊まるための寝具の準備や、母の息抜きのために週末のホテルステイを手配しました。
2021年長女出産時
お手伝いさんをお願いしました。
同じコンドミニアムに、出産時期が近い駐在妻の友人がいて、タイ人のお手伝いさんを紹介してもらいました。
事前に面談をして、依頼内容や支払金額を取り決めておきました。
実際に家に来てもらう前に、雑巾・フローリングワイパー・洗剤などの掃除用具を揃えました。
不在時に1人で掃除してもらうこともあったので、その際は貴重品をセーフティボックスに収納するようにしました。
お手伝いをお願いしてよかったこと、困ったことについて教えてください
よかったこと
自分でするよりも圧倒的に丁寧で細かく掃除や片付けをしてくれるので、とても助かりました。赤ちゃんが這いまわったり、小さな物を口にしたり頃は特に、部屋が片付いていて床が綺麗な状態をキープできてよかったです。
困ったこと
突然の腹痛や発熱などの理由で、お手伝いさんが病欠をするときは困りました。やってもらおうと思っていた家事を自分がやらなければならないという、精神的ダメージが大きかったです(笑)。
それからは急なお休みは、なるべく前日までに連絡してもらうようにお願いしました。
妊娠、出産、産後を通じて、必要なものはどのように揃えましたか?日本で調達した方がいいものはありましたか?
基本的に現地で調達しました。
主に、赤ちゃん用品のセールイベント、デパート、通販サイトを利用しました。
質やデザインにこだわりたいものは、日本から親に送ってもらいました。
<日本から送ってもらった物>
妊娠時:おしゃれなマタニティ服、ガードル、下着類
出産時:産褥ショーツ
産後: 粉ミルク、レトルト離乳食、離乳食用の調味料や乾燥食材
日本のレトルト離乳食は、種類が大変豊富で、味も大変よく便利です。
現地のものは、種類が少なく、味も甘みが強いものが多い印象です。
住んでいる国ならではの習慣や困った経験はありますか?どのように対処されましたか?
子どもに対してお菓子をくれる人が多いです。
チョコレートやクッキーなど、1・2歳児に与えるには少し抵抗があるものは、その場ではありがたく受け取った後で、大人がいただくようにしています。
妊娠から子育て期間を通じて、困ったことはありましたか?どのように解決または対処されましたか?
長男の妊娠時は、海外で初めて出産することに、不安を感じることが多かったです。病院や日本人会が主催する両親学級に参加し、情報収集をしたり体験談を聞いたり、病院のサポートについて聞いたりして、少しずつ不安を解消しました。
出産後は、育児を1人で抱え込んでしまうことがよくありました。
その際は、日本人会や外国人主宰の子育て支援グループをよく利用しました。そこで他のお母さんたちと情報交換したり、たわいないおしゃべりをしたりして、息抜きをしていました。
これから妊婦検診〜出産を迎える方にメッセージをお願いします。
妊娠・出産という大きなライフイベントを海外で経験できることは、本当に大変ですが、貴重で素晴らしい経験だと思います。
子どもができてから、より幅広く滞在国のことや現地の人と関わることもできました。
何より大事なのは、自分と赤ちゃんの健康です。1人でいることが多い駐在妻という状況で、少しでも不安や気になることがあれば、積極的に家族や担当医に相談することが大事だと思います。
世界のどこにいても、赤ちゃんの誕生を多くの人が応援してくれます。
そして、そんな赤ちゃんをおなかで育てているお母さんが、いつも楽しく心穏やかに、海外での妊娠、出産を迎えられることを願っています!