本帰国エピソード vol.5 ~マレーシアからの本帰国は〇〇のような気持ち~

クアラルンプール

マレーシアに約2年滞在し、本帰国したYさんへのインタビューです。本帰国が決まってから行ったこと、本帰国後に感じた逆カルチャーショック、滞在生活で感じたことなどをお聞きしました。
Yさんは、本帰国後の逆カルチャーショックが大きかったといいます。本帰国後にモヤモヤが晴れないと感じている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。

自己紹介をお願いします。

Yです。2016年6月からマレーシアのクアラルンプールに滞在し、2018年5月に本帰国しました。

本帰国が決まった当時の様子を教えてください。

あと1年は滞在予定だと聞いていたため、急な話にとても驚きました。2月に内示が出て、3月には夫だけ先に日本へ、私と子どもは5月に本帰国しました。私より先に本帰国する予定の知人から、不要品処分の方法(ガレージセールなど)や本帰国に向けてやることを教えてもらいました。
また、一時帰国時に帰国準備ガイドを購入していたので、それを見ながら準備を進めていきました。

本帰国が決まってからの帰国準備や現地での生活等で、「これをやっておけばよかった」と後から思ったことはありますか?

本帰国に向けては、ミチエさん(当サイトの運営責任者・飯沼ミチエ)のコーチングセッションを受けて、やりたいことの棚卸しを行いました。そのため現地でやりたいことはできる限りやることができて、今振り返ると心残りはありません。

反省点は、現地での生活が名残惜しかったので、お友だちと会ったりお別れのプレゼントを買ったりすることに主軸を置いていたことです。
帰国後の住環境や子どもの幼稚園をどうするかなどについて、もっとしっかり考えられていたらよかったなと思います。現地で知り合ったお友だちとは、帰国後なかなか会えなくなるもののご縁は続くので、これからはじまる日本での生活に向けて、気持ちの切り替えができていたらよかったと思います。

また、本帰国時に逆カルチャーショックが起きることや、新しい街に適応するまでに心理的負担がかかること、アイデンティティロスの可能性があることをあらかじめ知っていたらよかったです。

本帰国時の困ったエピソードがあれば教えてください。

一番困ったのは、新居として決めたマンションの住環境が想定していたのと違い、なかなか新生活に馴染めなかったことです。先に本帰国した夫が内見し、写真や動画を送ってくれたのですが、やはり自分の目で見てから賃貸契約をした方がよかったなと思いました。

マンション自体はきれいでよかったのですが、立地が繁華街に近かったため、マレーシアでの落ち着いた住宅街とのギャップが大きかったです。もし、土地勘がある街に住んでいたら、それほどストレスを感じずに済んだのかもしれません。(徐々に新しい街にも慣れることができました。)
お子さんがいらっしゃる場合は、本帰国時に未就学児であっても、住む予定の街について治安や学区の評判、暮らしやすさを調べた方がよいと思います。

本帰国後に渡航前との価値観の変化を感じたことはありますか?

私の場合は、急な本帰国による精神的ショックが大きかったと思います。そのため、マレーシアと日本との違いをいろいろな場面で感じやすかったのかもしれません。

本帰国直後から1年間ほど気になったのは

・皆がきちんとルールを守っていていろいろなことが予定通りに進むけれど、寛容さがないこと
・子連れだと「すみません」と言う機会が多いこと
・低価格のレストランでも店員さんが丁寧すぎて賃金に見合っていないと感じること
・電車の中で皆が日本語で話すので、会話が耳に入りすぎて違和感を覚えること
・美容整形や脱毛などの広告が子どもでも見える電車内に貼られていること
・人にどう見られるかを気にしがちなこと

などです。

上記については本帰国して2年ほど経った頃から、あまり気にならなくなっていきました。
きっかけは駐妻カフェ(現:駐在ファミリーカフェ)の運営メンバー内で、本帰国後の思いをシェアしたことでした。皆さん似たような経験があり、本帰国後の生活の中で「日本人なのにこんなことをしちゃった」というあるあるエピソードを、大笑いしながら話し合えたのが、精神的ショックを消化できたきっかけだったように思います。

本帰国してから感じるマレーシア生活のよかったところ、影響を受けたと感じるところはありますか?

マレーシア生活でよかったのは、大らかで細かいことは気にしないこと、子どもに対する目が温かいこと、自分を大切にする人が多いことです。
特にこれからも大事にしていきたいのは、自分を大切にすることです。

また、色々な宗教の人たちが共生している社会だったので、自分が知らない価値観があること、たとえ理解できなくても知ろうとして受け入れることの大切さも学びました。
本帰国してからも、相手のことが理解できなくて衝突しそうな時は、「なぜ相手はその言動をしているのか」価値観や背景を知ろうと努力するようになりました。

お子さんの転入先は、どのように探しましたか?

元々、子どもの転入先は日本の幼稚園を考えていたので、本帰国が決まってから自治体のホームページなどで探しました。
住む街が決まってから、本帰国直前に知人の紹介でインド系インターの幼稚部が同じ区内にあることを知り、本帰国して落ち着いてから問い合わせをしました。

ご自身の帰国後の再就職について、教えてください。

就職活動に関する準備はいつから始めましたか?

帰国後、家族の生活が落ち着いてから仕事を探しました。

本帰国後に下の子を妊娠し、妊娠中に業務委託案件の紹介サービスに登録しました。2019年6月に出産し、同年10月から簡単な事務作業のフルリモート案件で稼働を開始しました。

その後も、元の会社に復帰するのではなく、業務委託で仕事を始めました。

業務委託でのお仕事について、教えてください。

下の子が1歳になる年の4月に認証保育園(東京都独自の基準を満たした園)に預けることができたので、それ以降は1年ほど業務委託で仕事を続けました。
認可保育園は勤務時間が短かったため落ちてしまいましたが、認証保育園は働いていることさえ証明できれば入園できたので助かりました。本帰国後、保育園に入れるかどうか不安な方は、諦めずに調べて見学に行ってみてほしいです。
その後、都内での引っ越しを経て保育園を探し直し、今は別の認証保育園に通わせています。(現在は区の方針が変わり保育料の補助金が出るようになりました。)

現在のお仕事はいかがですか?

現在は2021年から受電業務をフルリモートで行っています。雇用形態はパートで、業務内容はソフトウェアの利用サポートです。この仕事に応募したのは、フルリモートで働けることと、仕事内容に関心が持てたからです。

電話業務はずっと避けていましたが、業務委託で短期の架電業務を行ったところ、思いのほか楽しく、前職の営業経験も生きることが分かりました。

キャリアカウンセラーの方から「やりたいこと、できること、社会から求められること、この3つの要素が重なるところに仕事が見つかる」と言われたことがあります。できることを増やせるよう、日々コツコツ働きたいと思っています。

最後に。
海外生活は、Yさんやご家族にとってどんな期間だったと感じますか?

マレーシアでの生活は、今振り返るとまるで夏休みのような日々だったと思います。2年間でしたが、いろいろな場所に行き、たくさんの人に出会い、毎日がとても充実していました。留学ではなく駐在ファミリーとして滞在したからこそ、生活者の目線・母や妻の目線で様々な経験ができました。

マレーシアに渡航したばかりの頃、駐在経験が長い人事の方に「今日から人生の夏休みのはじまりですよ。存分に楽しんでくださいね。」と言われました。その時は、不安でいっぱいで「海外生活=夏休み」というワードがしっくり来ず、滞在中も日々の生活に精一杯で毎日が夏休みだとは思えませんでした。でも、今になってあの時「人生の夏休み」と仰っていた方の気持ちがよく分かります。楽しいことだけではなく、大変なことや挑戦することがあって、終わってみると自分が以前より成長している、そんな駐在同行期間はやはり大人の夏休みだったのかもしれません。

私にとって海外生活はとても楽しいものでしたが、滞在中に楽しかった分、本帰国後の逆カルチャーショックに苦しむことになりました。
本帰国後、そのつらさを経験者以外に伝えることは本当に難しかったです。夫は先に本帰国し働きはじめていて、私とは違った大変さを味わっていました。そのため、私が本帰国後の精神的不調を訴えても、一緒に海外生活を送っていた夫にさえ、中々伝わらなかったのです。お互いに気持ちを理解する余裕や、大変さを理解するための知識がなかったように思います。

私が本帰国によるアイデンティティロスを他人に伝える言葉をずっと探してたどり着いた答えは、「駐在国は例えるなら期間限定の恋人のようなもので、本帰国は失恋のようなものだった」ということです。

駐在経験のない友人に
「もしも、『今から数か月後に外国人と数年間限定で付き合ってください。とても好きになっても彼と結婚することはできません。どんなに離れたくなくても約束の年数が経ったら元の生活に戻ってください。彼と付き合うにあたり日本での仕事は辞めてもらいますが、住む場所も生活費も保証します。』って言われたらどう思う?」
と冗談まじりに話したとしたら、
「何それ?訳が分からないしリスクが高すぎない?」と言って笑うのではないかと思います。
「そうだよね、外国人の恋人を滞在国に置き換えて考えてみて。駐在に同行する人ってこのくらい無茶なことを要求されているの。場合によっては何年滞在するかも分からないし、突然任期が終わったり、急に別の国に行ったりすることもあるんだよ。」
と伝えたら、相手は返す言葉に困るかもしれません。
結婚や出産、キャリアについて考える大切な時期に、絶対に結婚できない(=駐在国に永住できない)ことが決まっていて、場合によっては何年一緒にいるか分からない相手と過ごすとしたら、とてもリスクが高く戸惑うと思います。駐在に同行している配偶者はそれくらい大きな負担を背負って日々奮闘しています。

滞在国で過ごす日々にも、本帰国後の体験にも、きっと皆さんそれぞれの物語があると思います。これから渡航する方も、本帰国を控えた方も、どうか日々奮闘されているご自分の心と身体を何よりも大切になさってください。
ご自身にとってかけがえのない思い出がたくさん作れますように。

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