「誘われたら断らない」モットーから始まった日本語講師ボランティアで得られたもの

日本人駐在妻がほとんどいない街に住みながらも、内に籠らず、積極的に現地での交流を広げて、そのご縁で日本語講師をすることになったMさんへのインタビューです。

自己紹介をお願いします

中国の地方都市に夫婦で滞在し、現在で約1年半になります。
日本では、メーカーで海外営業事務、人材サービス業でコーディネーター等に従事していました。

日本語を教えるための資格も経験もありませんでしたが、2018年12月から約4カ月間、夫の勤める会社の現地の方を対象に、ボランティアで日本語を教えることになりました。

 

どのようなきっかけで日本語講師をされることになったのですか?

私が滞在している地域は日本人が少なく、私の他に駐在妻がいません。
そもそも外国人が少なく、現地の方も共働き家庭が多いためか、大学や語学学校など大人が何かを学んだりできる場がなかなか見つかりませんでした。
とにかく「人と交流したい」「コミュニティに入りたい」という思いの毎日でした。

そのため、夫が勤める会社の食事会やイベントに誘われる機会があれば、積極的に参加するようにしていました。「誘われたら断らない」をモットーにしているうちに、次第に夫抜きでも現地の人との交流が広がるようになりました。日系企業なので日本語が堪能な人たちが多く、語学面で助けてもらえたことも大きいです。

そうして仲良くなった人達から「みんなに日本語を教えてあげたら?」という話が上がりました。当初は「日本人だからって簡単にできることではないし、絶対に無理!」と、あまり考えもせずに断ったのですが、徐々に話が具体的になり、実現することになりました。

「初めて日本へ行く人たちに日本のルールや簡単な挨拶を教えて」という気軽な依頼だったので、「それならできるかも」と引き受けることにしたんです。ところが、そこから「次はぜひ日本語の授業を」という流れになり、結局は、15~18名の中国人を対象に、1時間の授業を週2回、4カ月間に渡って行うことになりました。

 

 

実際に日本語を教えるために、どのような努力や取り組みをされましたか?

教えることに関しては、本当に経験も知識も自信もゼロでした。でも「できる限りのことをしよう!」と自分なりに色々と調べて取り組みました。

まず、何より日本語の教え方が全くわからなかったので、個人レッスンで教えた経験がある方に話を聞いたり、ネットで日本語教師の方のサイトを探して、それらを参考に準備を進めました。

また、「教える日本語」を学ぶために、教師のための文法書や参考書、日本語教師資格取得のための参考書などを日本で入手し、読み込みました。授業では、中国で一番メジャーだと言われる日本語学習の教科書を使用しました。文法説明などは全て中国語で記載されているものです。まずは五十音から始め、そのうちに仕事で使用する日本語や挨拶を取り入れるなどして、実際にすぐに使ってもらえるよう工夫しました。

授業の前には毎回、必ず時間を計って自宅で予行演習をしました。最初のうちは授業の準備にものすごく時間がかかってしまい、毎回締め切りに追われるような感じでしたね。

自分が考えた授業内容については、日本語研修チームのメンバーにはよく相談するようにしました。「次の授業の目標は?授業のペースはどうか?」など、求められるものとズレがないかをよく確認するようにしていましたね。

授業が進んでいく中で、「私の方法は正しいのか」「うまく教えられているか」と不安になることもありましたが、最後の方は「この中で一番日本語をわかっているのは自分だから大丈夫!」と開き直って取り組んでいました(苦笑)。

 

当初はあまり興味がなかったとのことですが、取り組み始めて何が変わりましたか?

日本での仕事はまったく別の業種でしたし、誰かに何かを教えること自体が初めてで。ましてや外国人に対して日本語を教えるなんて考えたこともなく、正直なところ当初は消極的な気持ちでした。

実際に、日本語を教えるのは簡単なことではありませんでした。どのような内容の授業にするか、相談するうちに当初の予定と変わっていくこともあり(これは中国あるあるかもしれません!)、準備には手間も時間もかかりました。しかし、その分得るものも大きく、終わった時の感想は「楽しかった!」でした。

誰かと相談しながら資料を作って準備を進めるというのは、久しぶりに仕事をする感覚が味わえて楽しかったですし、「日本人だからこそ役に立てることがある」と初めて実感できたことでもありました。

また、授業で使用した教科書は中国語で書かれているので読むだけでも時間がかかりましたが、おかげで自分にとっても日本語と中国語両方の勉強になりました。この教科書では新しい発見も多く、なかなか興味深くて面白かったです。興味も自信もなかったことでも、始めてみたら面白くなる、引き込まれる、ということはあるものですね。

 

 

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