本帰国後に再就職と教室運営!いつでもどこでもいくつになってもできる仕事を選ぶ〈前編〉

約1年間のイギリス帯同生活を経て、本帰国をされているKさん。現在は、人材派遣会社で営業アシスタントとして働きつつ、週末はオンラインお菓子教室を開催されています。駐在妻になる前とは異なる道を歩み始めるまでのイギリス生活のこと、そして帰国後のことをお聞きしました。
前編・後編の2回に分けてお伝えします。

自己紹介をお願いします

Kと申します。
2019~2020年の約1年間、イギリスのランカスターという田舎で過ごしました。コロナ禍で予定より前倒しの2020年4月に帰国。現在は大阪に在住し、3歳の娘と夫の3人暮らしです。

渡英までは8年間(保険会社で3年、広告代理店で5年)、法人・個人向けの営業職を経験し、その後、育児休業を取得。復帰直前で夫の海外赴任が決まり退職しました。

海外生活中にキャリアコンサルタントに興味を持ち、今は人材派遣会社の社員として営業アシスタントをしています。また週末に、オンラインで手軽に作れるお菓子のレッスンをしています。

今回は帯同生活を経て、2つの仕事(就労と教室運営)をはじめるに至った経緯をお話しします。

なぜ今のお仕事を選ばれたのですか?

渡英前から、本帰国後のキャリアに対しては不安や焦りを感じていました。仕事に情熱を注いでいたのに、退職して帯同家族となった瞬間に自分の「肩書き」がなくなった気がして、とても落ち込みました。「専業主婦となりキャリアブランクができてしまう」「帰国後には今より年齢を重ねている」「帰国後は育児と仕事を両立しなければならない」。帰国後の再就職のことを考えるとさまざまな障壁が浮かび上がり、「これまでの頑張りはすべて無駄になってしまうのではないか」とまで考えるようになりました。

そんな中、『いつ、どこに行っても、いくつになってもできる仕事』なら、今後また夫の駐在に同行する機会があっても続けられるのではないかと考えるようになりました。

そう考えていた時に駐在妻向けのキャリア支援会社やオンラインのキャリアカウンセリングを知り、キャリアコンサルタントの仕事に興味を持ちました。「自身の葛藤もきっと仕事に活きるはず」と感じ、帰国後はキャリアコンサルタントにつながる仕事をしようと決めました。そして選んだのが人材派遣会社の営業アシスタントの仕事です。

オンラインお菓子教室は、本帰国して約1年後から始めました。職場や保育園にも恵まれて少し時間や気持ちに余裕が生まれ、『いつ、どこに行っても、いくつになってもできる仕事』の軸をもう一つ作りたいと感じたからです。
渡英以前からぼんやりと描いていた「身体にやさしいお菓子で、がんばる女性のリフレッシュや息抜きに貢献したい」という思いを形にしました。

『いつ、どこに行っても、いくつになってもできる』というコンセプトに合う仕事はさまざまですが、私は対面での会話を大切にしたいので、この2つの仕事を選びました。

今のお仕事に影響を与えたイギリス生活は、どのように過ごされていたのですか?

住んでいた地域には娘と同じくらいの年齢の子どもを持つ日本人家族はおらず、夫の会社関係でも同世代の駐在家族はいませんでした。また、多国籍な環境なのに英語がまともに話せなかった私は自信がなく、外で一言も発さない日もありました。駐在妻ってキラキラした人たちと見られがちですが、実際は孤独感や疎外感がとても大きいです。また、イギリスと日本の時差によって日本に住む家族や友人との連絡が取りづらい状況だったことも孤独を感じる要因の一つでした。

さらに生活が始まったばかりの頃は「駐在員の奥さん」「1歳の娘さんのお母さん」と紹介されることが多く、とてもくやしい思いをしました。退職したことで自分の肩書きがなくなったと感じたことに加え、専業主婦という立場がはじめてだったので、家事だけをする自分にどうしても満足ができませんでした。

 駐在員の妻としての生活だけでなく、何かを得て帰国したい。

 イギリス生活中に出会う人にきちんと自己紹介ができる自分でいたい。

そのために、自分ありきのアクションをたくさん積もうと決めました。
イギリス生活に慣れてからは毎日予定を入れて過ごしました。予定は自分一人でも誰かと一緒でも何でもよく、営業の仕事でアポイントの調整をするかのように分刻み。とにかく前向きに駐在生活を満喫するためです。今振り返ると帰国後のキャリアに対する焦りもあったと思います。

具体的にどのようなことをして過ごされたのですか?

過ごし方は大きく分けて5つです(ビザの関係で現地就労をすることはできませんでした)。
①英語学習
②日本語を教えるボランティア
③カフェでの手作りお菓子提供のボランティア
④娘とキッズイベントやプレイルームへの参加
⑤一人時間の満喫(街の散策、カフェ巡り、ショッピング)

それぞれについてお話します。

①英語学習
英語は超初級レベルだったため、夫の会社の補助制度を利用して語学学校へ週に一度通っていました。グループレッスンはレベルに個人差がある上、話さない時間がもったいないと感じたため、マンツーマンレッスンも組み込みました。また、一日中家にこもってTOEICのテスト問題を教材代わりにスピーキングの勉強をし続け、日常会話は何とか話せたり聞けたりするようになりました。

②日本語を教えるボランティア
語学学校がきっかけとなり、1人の高校生に1~2週間に一度日本語を教えることになりました。ある日、語学学校の先生から「日本語を学びたい生徒がいる」と声をかけていただいたのです。日本語教師の資格を持っておらず手探りでしたが、相手が日本の芸能や音楽に興味があったので、堅苦しい授業ではなく楽しみながらできる授業になるよう心掛けました。私としても一つの「役割」ができたように感じ、とてもやりがいを感じて生活にもハリが出ました。

③カフェでの手作りお菓子提供のボランティア
地域の掲示板で、近所のカフェが゛baker=お菓子を作る人゛をボランティアで募集しているチラシを目にし、「今できること」として迷わず応募しました。これが今のオンラインお菓子教室に繋がる経験になっています。

④娘とキッズイベントやプレイルームへの参加
近所にあった公共図書館で週に一度30分間、幼児向けに歌を歌うイベントがあり、当時1歳の娘と一緒に参加していました。
最初は周囲が歌う英語の歌詞にまったくついていけませんでしたが、家でも練習し、次第にイギリスの童謡を20曲以上歌えるようになりました。日本でも聞きなじみのある音楽があったり親切な方が歌詞カードを配ってくれたりしたことも練習の励みになりました。

こうなると楽しみながら参加できるので私たちの笑顔も増え、次第に声をかけてくれるママ友ができました。カフェでランチをしたり家を訪問したりする仲になったこともよい思い出です。
同世代の子どもがいる日本人家族がまったくいなかったので、自然と外国人の方々と仲良くなりました。「文化が違うことは新たな世界を知れること」とポジティブに捉えていたので、気持ちも楽に過ごせました。

⑤一人時間の満喫(街の散策、カフェ巡り、ショッピング)
私一人の時間もとても大切で、娘をナーサリーに預けている間は子連れでは行けないようなお店やカフェでゆっくりしたり、ひたすら英語の勉強や街の掲示板を見て興味のあるイベントを探したり、スーパーでは日本と陳列や商品の違いを感じながらじっくり回ったりして、イギリスにいることを堪能していました。

オンラインお菓子教室運営につながるきっかけになったボランティアについて詳しく教えてください。

渡英した後はビザの関係で就労ができなかったため、ボランティアでできることを探していた中で偶然見つけたのが、このお菓子作りのボランティアでした。

ボランティアの活動場所は、公共図書館で定期的に開催される寄付制のカフェ。寄付をしたら、ボランティアが提供するケーキやドリンクを無料で楽しめるシステムです。私はそこで、寄付をされた方に自分が作ったお菓子を提供したり、ドリンクを作ったり、ウェイターのようなことをしていました。

2、3回目までは立っているだけで精一杯。まずはお菓子の提供以前に、カフェスタッフとの関係作りから始めました。各スタッフの名前や出身地、会話した話題を携帯電話にメモし、次は見返してからカフェに向かうようにしたところ、相手も私のことを覚えてくれて子どもの本をプレゼントしてくれたり、お気に入りのカフェへ連れていってくれたりするようになりました。言葉が完璧でなくても、「あなたに興味がある」という姿勢をみせることは世界共通でよろこばれるのだと改めて気がつきました

活動回数を重ねるごとに私も慣れてきて、日本特有の「抹茶味」のお菓子を作ったり、生地が濃厚で重ためのケーキが多いイギリスで、あえて軽い食感の「シフォンケーキ」を作ったりして、少しでも「日本人の私だから作れるお菓子」を持っていけるように心がけました。
結果、スタッフ、お客様ともにとてもよろこんでくださいました。その時の皆さんの顔は今でも鮮明に覚えています。
活動は帰国まで約半年間続けました。

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