本帰国後の再就職を前にして、”キャリア迷子”になった私が見つけた踏み出し方とは <前編>

チリ

1度目の駐在同行で住んだアルジェリアでは現地生活を満喫し、本帰国後は未経験業界に再就職した美和子さん。現在は、仕事を辞めて2度目の駐在同行でチリにお住まいとのこと。

「海外生活中はキャリアのために特別なことはしなかったし、再就職活動ではやりたいことが見つからずに愕然とした」そんな美和子さんが見出した自分なりの仕事の見つけ方、そして、転勤族の妻として自身のキャリアにどう向き合っていくか……。2度目の海外生活中の今だからこそ振り返る当時の想いを伺いました。前中後編でお届けします。

―自己紹介をお願いします。

宇佐美美和子です。2010年から2013年までアルジェリアに住み、本帰国してから、派遣社員と正社員あわせて4年働きました。その後退職し、2018年からチリに住んでいます。

アルジェリア生活から本帰国まで ~転職サイトに登録して、愕然とした話~

―1度目の駐在先、アルジェリアに渡航したときの様子を教えてください。

30歳のときに夫のアルジェリア駐在に同行し、初めて駐在妻になりました。それまでは大学卒業後に就職した広告会社に勤務しており、夫の駐在をきっかけに結婚、そのまま専業主婦になりました。

渡航当初は、予想外になってしまった専業主婦に自分なりの意味を見い出せず、いわゆる”アイデンティティ・ロス”に陥りました。ですが、もともと強いキャリア志向があったわけでもないので、海外生活中に「キャリアのために勉強しなきゃ」とか「現地で何か活動しなきゃ」ということは、あまり考えませんでした。

そのうち、気の合う友人ができてランチやお茶をしたり、ひとりでゴルフや旅行に行ったり、「気楽な駐在妻生活」を謳歌していました。

―アルジェリアで「気楽な生活」というのが意外です。生活するだけでも大変なイメージがあるのですが?

アルジェリアは当時、駐在員のハードシップランクが高い国と言われていたとおり、確かに日常生活は大変でした。たとえば、当時はアジア系食材店がなく、日本からの食料送付もできなかったので、どうしても欲しいものはヨーロッパまで買い出しに行きました。また、テロのリスクが高く自由に外出ができないことや、出かけたいときは夫から車を借りる必要があり、とにかく不便でした。

でも、そのような制限のある生活環境のためか、現地の日本人の間には「戦友」みたいな結束力があって、幸い、私もよい人達に囲まれて楽しく過ごすことができました。

それと、日本で働いていたときのような忙しさや仕事のプレッシャーがなくなったことも、気楽でよかったです。先進国のような安全で綺麗でおしゃれなものはなかったけれど、太陽の昇る明るい時間から遊べて超最高!!といいながら満喫していました(笑)

アルジェリア街の様子

―それほど楽しかった海外生活が、本帰国後の再就職となると一転するのですね。きっかけがあったのですか?

夫からは「日本に帰ったらしっかり稼いでね!」と叱咤されていたこともあり、本帰国が近づいてきたある日、とりあえず転職サイトに登録したんです。それで、愕然としました。

「私、日本に帰ったら、何がしたいんだろう……」

特別なスキルや経験はないし、自分のやりたいこともよく分からない。普通は、これまでの経験をもとに仕事を探すのでしょうが、私は、今までやってきた仕事をまたやりたいと思えず、かといって、他に「やりたいこと」も「やれること」も見つけられなくて……。海外生活には満足していたものの、それ以降、再就職するまでは常にそんな不安と焦りがつきまとっていました。

―ふたたび同じ仕事に就こうとは考えなかったのですね?

実は以前から漠然と仕事を辞めたいと思っていたので、夫の駐在が決まったとき「渡りに船」という感じで退職したんです。仕事も職場環境もよかったのですが、広告業界への興味がさほど強くもないのに、ただ居続けている自分の状態に少し嫌気がさしていたのだと思います。でも、振り返ると、やむを得ずの退職に見せかけて「体よく逃げたかっただけだったな」と。なので、この退職には、しばらく心苦しさも残っていました。

それでも、再び広告業界に戻ろうとは思いませんでした。 せっかく仕事を辞めたのに「経験がある」ということに縛られて、好きではないことをまたやるのはもったいないと。

とはいえ、新しい仕事を探してもピンとくるものはなく……。それで、途方にくれたわけです。

―でも、そのときはなにもせず、そのまま本帰国されたのですね。

意識はしつつも、まだ真剣には向き合っていませんでした。転職サイトを見て、「えーー!どーーしよーーー!!」と焦ったけど、パソコンを閉じた途端に忘れた、みたいな(笑)。

本帰国の直前は、引越し準備だけではなく、旅行や買い物、送別会などであっという間に時間が過ぎてしまったので、結局それ以上は考えませんでした。

駐在妻の観光の様子

本帰国後に始めた再就職活動 ~何でもいいから、まずは一歩踏み出すこと~

ー本格的に働き方を考え、動き出したのは日本に戻った後なんですね。

はい。しばらくの間は、失業保険をもらいながらキャリアカウンセリングを受けたり、無料開催の講座の中からなんとなく目に留まったファイナンシャル・プランナーの資格講座を受講したりしました。それでも、これといってやりたいことが見つからなかったので、とりあえず派遣社員として金融機関で働くことにしました。

「どうせブランクができたなら、全然違うことをしたい」と考えていたので、新卒の就職活動の際に金融業界を受けていたことを思い出し応募しました。また、「未経験でいきなり正社員は無理だろう」と思い、派遣社員での募集を探しました。

振り返ると、ブランク明けのファーストステップとして、この選択はとてもよかったと思います。

ー具体的に、どういったことがよかったのですか?

1つめは、未経験でも比較的容易に仕事を見つけられたこと

派遣社員であれば、未経験でもわりと容易に仕事を見つけられるというメリットがありました。私の場合、登録した1週間後には仕事をはじめられたので、そのあっさり感に拍子抜けしたほどです。

2つめは、派遣社員でも経験を積むことができたこと

私の業務は、機関投資家向けの信託銀行で投資信託や年金ファンドを組成する外国証券の決済状況をレポートしたりモニタリングすることでした。上司に恵まれたこともあり、派遣社員でも定型業務だけでなく、それに付随するさまざまな仕事にも携わることができました。

「派遣は安い給料でコキ使われるだけ」そう捉える人もいるかもしれません。でも、私は派遣社員を選んだことで、容易に仕事に就け、その上で未経験業界で経験を積ませてもらえました。

自ら派遣社員も経験して気付いたのは、「必ずしも、正社員>派遣社員ではない」ということ。

女性の再就職は難しいとよくいわれます。でも、たとえ未経験でも、はじめの一歩から「正社員」にこだわらなければ、無理だと思っていたことが実現できるケースはたくさんあるでしょうどんな仕事でも、それが次のステップにつながるなら、必ず価値はあると思っています。

派遣社員から正社員へのステップアップ ~35歳元駐在妻の再チャレンジ~

ーよいキャリアの再スタートがきれたのですね。でも、1年で次のステップに移ったのはどうしてですか?

もともと再就職活動をはじめた頃に、自分のやりたいことを見出せなかった経緯から「まずは派遣社員として1年働いて、今後の働き方を考えよう」と決めていたので、その時期が来たという感じです。

その他に、フルタイム勤務のライフスタイルに心身共に慣れてきたことや、給料や働き方の裁量権の違いも意識するようになり、正社員での就職を考えるようになりました。

ただ、この時も、まだ自分のキャリアビジョンは描けていなかったので、今までに経験した仕事の延長線上で、「大変そうな方、分からないことが多い方を選ぼう」という自分なりの基準を設けて、金融業界の正社員を目指して転職活動をすることにしました。それで、日系金融機関の正社員になりました。

ー派遣時代の就労経験は、正社員への転職活動に活かされましたか?

半々ですね。 履歴書上では、1年なんて未経験扱いで、転職エージェントもエントリー段階で断られることばかり。登録したエージェントは5、6社ありましたがほぼ相手にされず、きちんと対応してくれたのは1、2社程度でした。

とはいえ、充分に活かせた部分もありました。 1年でも経験があったからこそ、業界や業務に関する知識や具体的なイメージを持てましたし、その仕事内容をしっかり見て、話を進めてくれるエージェントもありました。

なので、エージェントを決めてからは意外と早くて、3社にエントリーしたうち、2社と面接、1社から内定をいただけました。活動期間も1カ月程度だったので、スムーズだったと思います。

ー選考過程ではどのようなことを聞かれましたか? 特に評価された経験があれば教えてください。

基本的にこれまでの職歴です。

私の場合、以前就いていた広告営業の仕事、そして派遣時代に就いた金融の仕事の2つの話をしました。そのどちらかだけではダメで、いままでの経験の掛け合わせをアピールできたことが評価されたのだと思います。

海外生活中のことはほとんど聞かれず、せいぜい雑談程度でした。

むしろ、どの面接でも必ず聞かれて多少気まずかった質問は「今後も旦那さんが駐在する可能性はありますか?その場合は、また辞める予定ですか?」というもの。

駐在員は何度も海外赴任をするケースもあるので、企業側もやはり気にするポイントなのだと思います。我が家もふたたび駐在の予定があったので、「10年以内に駐在となる可能性があり、その場合は辞める予定。5年程度はいると思うが、人事的なことなので分からない」という趣旨を素直に伝えました。

ーアルジェリアというハードな環境を経てきた方なら、海外生活にも関心を持たれそうですが?

私には、雑談レベルがちょうど良かったです。海外生活中に、特に成し遂げたこともなかったので……。

海外生活でのエピソードは、私にとっては仕事上での経験や私自身のキャラクター・性格を知ってもらうための補完的な位置づけと捉えていたので、はじめから海外での経験を大々的にアピールするつもりはありませんでした。

危険地帯帰りの人にタフな一面を期待するかもしれませんが、私はそれについては基本的に今までの仕事上でのタフな一面を発揮した経験について話していました。

ーご主人の「次の駐在予定」を聞かれるのは困りますね。

そうですね。それだけに限った話ではありませんが、面接では「素直に答えるにはちょっと気まずい質問」というのはあると思います。

私は、多少盛ることはあっても嘘はつかないようにしていました。再就職の面接はマッチングだと考えているので、取り繕った嘘をついてあとから「話が違う」となるのはお互いのためにならないですし。

それと、プライベートな事情は面接する側からも聞きづらい話題なので、自分から可能な限りクリアに答えるようにしていました。企業側が、自分を採用する上で懸念となる事柄に対して、「私自身が、どのように認識しているか、対策やオプションを持っているかどうか」を見られていると捉えたからです。

時には、私自身のプライベートな事情も考慮してもらえるように、自ら開示したこともありますよ。もちろん、言い方や盛り方に気を付けながら(笑)。

ー駐在妻の再就職活動では、自身のことをどう捉えてどう話すか、工夫が必要そうですね。次は、正社員になった後の苦労話と、ふたたび退職することになった2度目の駐在時の様子を聞かせてください。

アルジェリア街の様子

<前編終わり>

中編後編はこちら

アーク

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メーカーで法人営業に従事した後、夫の海外駐在を機にキャリアチェンジしようと考え退職。海外生活中にキャリアコンサルタントの資格を取得し、転勤族妻でも充実したラ...

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