オーストラリアに約8年滞在し、本帰国したSさんへのインタビューです。本帰国が決まってから行ったこと、本帰国後に感じた逆カルチャーショック、再就職活動で感じたことなどをお聞きしました。
自己紹介をお願いします。
Sです。2012年から2019年までオーストラリアに滞在しました。
本帰国が決まって感じたことや、行ったことを教えてください。
滞在期間が長くなるにつれ「そろそろ本帰国かも」と言われていましたがはっきりとは決まらず、子どもの現地校の新学年の準備を進めていたところで本帰国が決まりました。日本でいうと4月を迎える直前といったイメージです。
新学期がはじまって1ヵ月で引っ越しすることになり、そのタイミングに納得できませんでした。モヤモヤを抱えながらもママ友に本帰国を報告したところ、「残念だね、仕方ないね」と同情してくれる日本人ママと、「会社に言って何とかしてもらったら」という欧米人ママとのギャップを感じました。
個人的には不満はあるものの、こればかりはどうしようもないという気持ちだったので、欧米人ママのコメントにはハッとさせられました。
逆カルチャーショックはありましたか。
逆カルチャーショックは大きかったです。帰国してすぐのホテル生活は一時帰国気分で過ごしていましたが、住む家を決めて日本の生活が本格的に始まると、さまざまなことにストレスを感じるようになりました。
どこに行っても人がたくさんいて、ベビーカーを押して歩くことにとても気を遣いました。エレベーターが満員で乗れなかったり、階段しかなく持ち上げて運ぶしかなかったり。オーストラリアでは経験のないことでした。
またスーパーのレジ周辺の注意書きが気になったり、カフェで席を確保するルールが違ったりして戸惑いました。お店の丁寧すぎる接客やマニュアルを暗記しているかのような対応、バスや電車のアナウンスの多さ、看板だらけの街、明るすぎる電気など、挙げればきりがありません。
子どもはすぐに慣れた様子でしたが、現地校と違って日本の幼稚園では靴を履き替え、集団でまっすぐに並び、体操座りをすることには違和感があったようです。
私は、長年自分が生きてきた日本で、しかも時々一時帰国をしていたのに、こんなにも日本の生活がストレスに感じるとは驚きでした。
こういったストレスを話すと、「海外がいい・日本が悪い」と主張しているような気がしてあまり周囲に明かせませんでした。どちらが優れているとか、日本にいたくないとか主張しているわけではないのですが、「海外に住んでいたの、いいね」などと声をかけられると、「逆カルチャーショックでストレスなんですよ」なんて言える雰囲気ではなかったのです。
もし、逆カルチャーショックという言葉とその意味を知っていれば、もう少し自分を客観的に理解でき、ストレスを軽減できたのかなと思います。
時間が経つにつれて日本の生活に慣れましたが、本帰国から数年が経った今でも違和感を抱くことはあります。これは自分が海外生活に順応して、海外のよさも知れたからこそだと考えるようにしています。多少ストレスがありながらも生活できているということで、就職の面接などで自己アピールするときは「長所は適応力があることです」とネタにしています。
再就職、キャリアチェンジに関してはいかがでしたか?
日本での生活がはじまり、子どもが幼稚園に通うようになって再就職を考えました。今思えば焦る必要はないのに、当時は早く仕事がしたい、社会に出たいと思っていました。帰国から半年弱でパートタイムの仕事をはじめましたが、日中は仕事に頭を使うおかげで、逆カルチャーショックは少し和らいだ気がします。
仕事を探す際は、求職サイトやマザーズハローワークなどを活用しました。ブランクがあるのに加え、家事育児と仕事の両立にも自信がなかったので、できるだけ家の近くでという条件を優先しました。結果的に自分で直接連絡したところに決まりましたが、マザーズハローワークにはお世話になりました。給料の相場や働きやすい会社の見分け方、履歴書の書き方も教えてもらった上に、「必ず決まるから大丈夫」と精神的にも支えてもらいました。
これから本帰国される方へメッセージをお願いします。
海外生活は本当に貴重な時間でした。2回の出産と育児で慌ただしい日々でしたが、その間にいろいろな人に出会い、楽しいことや困ったことも経験して自分がバージョンアップしたと信じています。海外に行く前の自分と比べると確実にたくましく、柔軟性のある人間になっています。
本帰国に関するストレスは大きかったですが、自分の心と体を大切にすることが最優先だと思います。無理に適応しようとしなくても、本帰国のストレスは時間が経てば軽減されていきます。
再就職に関しては、決まるまでいくつか採用担当者から話を聞いたり、面接を受けたり、不採用になったりもして、落ち込むこともありました。ダメでも相手(会社)と自分の相性の問題で、自分に非があったわけじゃないし、いろんなことを乗り越えてきた自分だから「これくらい大丈夫」と言い聞かせていました。こう思えることも海外生活のおかげだと思います。
これからも海外で生活して得たことに誇りと自信を持って、やりたいことをあきらめないで人生を楽しんでいきたいと思います。