2008年から2011年まで、駐在妻としてオーストラリアのシドニーに滞在していた三橋聡子さん。現在は、心理カウンセラーと書道教室の運営という2つの仕事をされています。
5学年ずつ年の離れた3人のお子さんを持ち、10年以上主婦だった聡子さんが、帰国後に個人事業主として働くことになったきっかけや経緯をおうかがいしました。
このインタビューは、2019年7月5日に開催したオンラインカフェ、駐在妻経験者に聞く「キャリアのジャングルジムをのぼるために今できること」個人事業主編として、参加者の皆さんに公開してお届けしたものです。
※前半は、以下記事をご参照ください。
カウンセラーと並行して、書道講師へ
-カウンセラーとして活動する一方で、書道教室の運営はどのような理由で始められたのでしょうか。
とあるセミナーで隣に座った方が書道講師とわかりました。子どもに教えられるけど、教える場所がないし集客もわからないということで、お手伝いしたいという気持ちが芽生えました。
ちょうどわが家の長女が小学2〜3年生のころでしたから、まずは長女のお友達に声をかけてみて、書道のワークショップを始めることにしました。
彼女が書道の先生をして、私はワークショップを開ける場所を探したり、子どものお友達を誘ったりするという役割分担で、ワークショップ代を彼女と私で折半していました。ある建設会社の社長さんが事務所の応接室を安く貸してくださったので、2カ月に1回、3カ月に1回、と不定期に開催していました。
「次のワークショップはいつ?参加したい!」という声をたくさんいただいたので、私が集客や管理を行い、彼女は先生の仕事に注力するという役割分担で進めることにしました。
-徐々に生徒数が増えていったのですね。
コツコツと集客を続けて生徒が増えて行くにつれ、「ワークショプではなくて書道教室をしてほしい」という声も出てきました。しかし、「子どもの書道教室は汚れそう」という声もあって、なかなか開催OKの場所が見つかりませんでした。
子どもがお寺の盆踊りの練習に参加していたとき、住職さんに何気なくその話をしたのです。そうしたら「うちを使えばいいじゃないですか」と言ってくださって。
お寺の一角をお借りすることができ、そこで書道教室を開催できることになりました。「思いを口に出してみるものだ!」と感じましたね。
-その後、聡子さんご自身も書道の先生の資格を取得されたそうですね。
生徒が増えるにつれ、月1回が月2回になり毎週になり…と、お稽古の日も増えていきました。
最初、講師は彼女1人だったのですが、彼女に時間を作ってもらい、私も月に何度かお稽古をつけてもらいました。子どものときに書道をしていたこともあり、嫌いではなかったのです。約半年で初等科師範を取り、今は中等部・高等部師範を取得しました。彼女の育休・産休中は、私と書道家仲間で教室を切り盛りしていました。
現在、50名ほどの子どもたちに教えています。また最近では、ママ向けに書道講師養成コースをスタートさせました。
-なぜママ向けに書道講師養成コースを作ったのですか。
講師資格を取得するために書道のお稽古を続けていましたが、私自身、子育てと仕事の合間のお稽古で上達していくことに充実感を得ていました。
この充実感と、子育ての合間や一段落したときに書道講師として働ける可能性をママたちに提供したくて、ママ向けの書道講師養成コースを開講しました。
半年後に小学生に指導できる初等部師範を取得するのを目標に掲げていますが、生徒さんには師範になったあとに、私の教室で働ける機会があるということはお伝えしています。
生徒さんの中には駐在妻だった方もいます。またどこかで駐在妻になることがあったら、ボランティアでもいいので、書道を通じて居場所を作りたいとおっしゃっていました。
自分の資質を生かすために仕事を2つ持つという選択もアリ
-カウンセラーと書道教室の先生、2つの仕事を持っていることについてどう感じていますか。
仕事を選ぶうえで、自分の資質に向き合うということは、とても大切だと思います。
私は人に会うのもお話をするのも好きですし、カウンセラーとしてママたちのお手伝いができることをとてもうれしく思います。
子どもたちの書道教室なので大変なときも正直ありますが、それすら楽しいと感じられるので、自分の強みを活かせていると思います。
そして、書道教室には中学生もいますが、彼らはお稽古の合間に勉強や部活動のことも話してくれます。そんなときに、子どもにも寄り添えるカウンセラーとしての役割も果たせているのかなと感じています。
毎月発行している教室便りでは「心理カウンセラーで書道講師です」とお伝えしていて、よもやま話のなかにその要素を少し取り入れています。
-全く違う2つの職業ですが、うまく相乗効果が得られているということですね! 貴重なお話をありがとうございました。
公開インタビュー後の質疑応答
オンラインカフェ当日にご参加いただいた方から頂戴した聡子さんへの質問とその回答をご紹介します。
Q: 会社員になりたいと思ったことはありますか?
会社員になろうと思えるタイミングがなかったですね。転勤が多い上、子どもも5学年ずつ離れているので、子育てが忙しかったのは事実です。
Q. 個人事業主でいるメリット・デメリットはなんですか?
自分で仕事の量や時間を、ある程度はコントロールできるという点が一番のメリットです。
デメリットは、自分が動かないと収入がゼロになるところでしょうか。
また、書道教室で事務だけを行っていたときは、「何屋さんなの?」と聞かれることも多かったです。当初は、自分はカウンセラーであって、書道教室の運営は本業ではなくお手伝いをしているという気持ちもあり、うまく説明できませんでした。
カウンセラーも書道教室も本腰を入れてする!と決めてからは、「カウンセラーが運営している書道教室」の看板を掲げる覚悟ができました。あいまいな気持ちで個人事業主になると、自分の仕事を説明しにくい場合も出てくるかもしれませんね。
Q. 個人事業主として仕事を継続できているのですね。
開業当初は、夫の扶養内で働くというイメージしかありませんでしたが、現在、健康保険は夫の扶養から外れて国民健康保険に移行しています。自分の中で、仕事に対する意識が成長しているという感覚がありますね。
働くことによって、自分のお財布を持つことができると同時に、自分の居場所を作ることもできます。
人生100年時代と言われていますが、少しでもお金を稼ぐ手段を持っているということは、大きな安心につながると思いますよ。
Q. 駐在経験が生きていると感じることはありますか。
駐在生活でママ同士のネットワークの作り方を学びました。日本にいるときはあまりママ友もいなくて、自分で壁を作っているところがありました。
でも海外でのママ友付き合いが楽しかったこともあり、日本に戻ってきても積極的に人の輪の中に入れるようになりました。ネットワークが広がると、個人事業主として仕事の面で相談できる人も増えますよ。
Q. 海外で経験できてよかったと感じることはありますか。
海外で出産を経験できたのはよかったです。通院も出産も通訳なしで臨んでみたのですが、「私はどこでも大丈夫だ!」という自信がつきました。
Q. 海外生活を経てたくましくなった実感はありますか。
サバイバル力はついたと思います。
なんでもチャレンジしてみて、それがダメになっても気にしない。大変なことの渦中にいるときは「これが経験値になる」なんて思えないかもしれないですが、笑い話や次につながる経験にはできるので。
意外と周りの人は自分の失敗なんておぼえていないし、失敗したからといって、自分がダメな人間というわけじゃないですから。
Q. 海外でやっておけばよかったことはありますか。
スキル的なことをいうなら、ブログを書くとか、誰かに話をするとか。自分の強みや、自分が今やっていることを相手に伝わるように話すためにはスキルが必要です。海外にいるときは時間もあったのだから、そのスキルを鍛えておけばよかったです。
Q. 自分の向き不向きにはどうやって気づけばいいのでしょうか。
コーチングや心理カウンセラーの講座を受けてみるといった方法で、自分の鏡になるものを見つけるのがよいのではないでしょうか。
私のカウンセリング講座を海外からオンラインで受講されている方もいらっしゃいますよ。
自分1人では自分のことはよくわからないものです。すごく落ち込んでいるときでなくても、コーチやカウンセラーを使ってほしいと思っています。
質疑応答は以上です。聡子さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!!
※本記事の前半は、以下よりご参照ください。
※ こちらの記事作成は青海 光さん(元インド駐在妻・現フリーランスライター)にご協力いただきました。