キャリアは自分の手でつかみに行く! イギリス駐在妻が現地フルタイム勤務に挑戦

ご主人のイギリス駐在同行を機に、息子さんたちは寄宿学校へ、ご自身は現地就労を選択。
専業主婦、大学での学び直し、日本での再就職、そしてイギリスでの就労と、ライフステージに応じてパワフルにキャリアを切り開くNaomiさんのインタビューです。
自己紹介をお願いします。
Naomiと申します。
夫の駐在により、家族でロンドンに来て2年が過ぎました。渡英当時、高校2年と中学3年の息子2人を連れてきました。この年代の子どもを連れての駐在は、かなり珍しいと思います。
日本では新卒で10年間、大手電機メーカーのマーケティング職として働き、出産後、子どもが保育園に入れないという理由で一旦退職しました。10年ほど前に夫の留学に伴いロサンゼルスに2年間滞在、その後日本での専業主婦、大学での学び直しを経て、2018年に留学への機運を醸成することを目的とする国家プロジェクト『トビタテ!留学JAPAN』事務局に再就職しました。
渡英にあたり退職し、渡英後はそれまでの経験を活かし、留学カウンセラーとして現地のエージェントに勤務しました。
大学での学び直しとはどのようなものだったのでしょうか?
長いブランク明けの再就職に先立って、2016年10月から、明治大学のスマートキャリアプログラムを半年間ほど受講しました。
これは女性の社会復帰・キャリアアップを支援するビジネスプログラムで、「マーケティング」や「財務」といったビジネスの基本から、「事業企画」「商品企画」など、実際に企業に提案するゼミ形式の授業まで、大変有意義なプログラムで構成されていました。
こちらの受講が、再就職への足がかりとなったのはまちがいありません。
日本での再就職への道のりを、具体的に教えてください。
大学でのプログラム修了後、再就職活動を開始しましたが、ブランクのある女性にとっての再就職は、簡単にはいかないと覚悟して臨みました。自身で探した求人情報をもとに2社ほど応募しましたが、残念ながら採用までには至りませんでした。
そんなときに、友人から「ブランクはあってもいいので、働くことへの意欲や情熱がある人を探しているのだけど、どうか?」と話をいただき、文部科学省にある『トビタテ!留学JAPAN』事務局へ応募することになりました。
私の職務履歴書には、過去に企業に所属していたときの経歴だけでなく、海外駐在中の活動や帰国後の日本でのPTA活動なども大いに盛り込んであり(笑)、実際の面接でも、それらの活動について多くの時間を使って説明したことを記憶しています。
留学を促進するプロジェクトであったこと、海外での生活なども評価していただき、採用されることになりました。

努力の末に手に入れられた再就職だったのですね。そこから渡英を決意されるまでの過程は、どのようなものでしたか?
仕事も軌道に乗り、責任ある仕事も任されるようになった頃、夫のロンドン駐在の話がありました。同行するか、単身赴任を選ぶか、仕事を辞めることはもちろん、当時中学3年と高校2年だった息子たちをどうするのか、大変悩みました。
しかしながら、私自身が留学を促進する国家プロジェクトで働く中で、留学がどれほど子どもたちを大きく成長させるのかということを実感していたので、家族で渡英することを前提に準備を進めることにしました。
そこで難しいのが、現地での学校選びです。子どもが小さいころにロサンゼルスに駐在した際は、悩まず現地校へ編入させましたが、今回は、年齢的にも大学進学やその後の進路に大きく影響するため、夫の本帰国の時期に関わらず、息子たち自身の意思で留学を継続できるように、ボーディングスクールを前提に学校選びをすることにしました。
詳細はこちらの記事をご覧ください:海外でボーディングスクール(寄宿学校)に通いました【イギリス・ロンドン】
渡航後、現地で仕事を始めた理由やきっかけを教えてください。
渡英を決めると、子どもたちの転校の準備、夫の送り出し、また引っ越し直前まで働きながらの荷造りなど、想像を絶する忙しさが待っていました。それらを乗り越え無事にロンドンへ着いた後は、大きなことを成し遂げた達成感と同時に、底知れぬ脱力感に見舞われました。
その後は、多くの駐在妻が抱える「私ってなんなんだろう…」という思いにとらわれました。
しかし、苦労して再就職した仕事を辞めてきたこともあり、なんとか仕事を続けたい気持ちが強かったことから、ほどなく自らを奮い立たせ、自分の力を活かす道を探すことにしました。
今回の渡英では、息子たちをボーディングスクール(寄宿学校)へ編入させたため、普段は夫と2人の生活となり、時間にかなり余裕がありました。
幸い、英国の帯同ビザは就職することが可能だったので、夫の勤務先にも確認した上で就職活動を開始しました。まずは、人材派遣会社への登録とともに、ボランティア等の仕事を探し始めました。
今思い出しても、動き出すまでの鬱々とした時間が、精神的にいちばん苦しかったと思います。
どのように、またどのような条件で仕事を探し、見つけましたか?
働きたい気持ちは強かったものの、英語も得意ではなく、また英語を使って仕事をした経験もなかったため、まずは日本人向けの日系人材派遣会社に登録をしました。
自宅から通える勤務先であること、パートでもフルタイムでも構わない、という条件で登録したと思います。職種は特に指定しませんでした。
ほどなく、日系大手商社の事務職を斡旋されましたが、自分がその仕事をしているイメージがどうしてもわかず、そのときは断念しました。
その後、日本人向けのコミュニティサイトで、現地留学エージェントのインターンシップ募集記事を見つけました。
そこで、『無給インターンシップでもいいので、海外で働いてみたい』という気持ちで話を聞きに行ったところ、「留学カウンセラーの枠がちょうど空くので、やってみないか?」という提案をいただき、前職の留学関連の仕事についていた経験もあったので、挑戦することにしました。
もちろん、英語を使う業務やフルタイムで働くことへの不安もありましたが、「挑戦せずして成長なし」と肝に銘じ、お引き受けすることにしました。

お仕事内容や働く環境はどのようなものでしたか?
勤務先はセントラルロンドンにあり、世界中に展開している留学エージェント(本社は東京)の現地法人でした。留学カウンセラーとして、これから留学をされる方の学校選び、各種手配、渡英後のサポートなど、一貫した留学生のサポートが主な業務でした。
それ以外には、会社のホームページの作成や各イベントの企画運営、また学校やホームステイ先の新規開拓など、多岐にわたる業務を経験できたことは、とてもよい経験になりました。
オフィスには、社員が私を含めて3~4名、インターンシップが2~3名という規模でしたが、留学生が訪れることも多く、常に活気のある職場でした。
勤務自体は、月~金の週5日11時から17時。仕事の後は、職場の仲間と食事やミュージカルを観に行くなど、充実した時間を過ごすことができました。
実際に取り組んでみての感想や今の心境は?
最初は、電話に出るだけでも手に汗を握る状態でした。今思い返しても、よくやったなと思います。
当初は英語でビジネスメールを書くことすらままならない状態でしたが、習うより慣れろで、数をこなすうちに少しずつ抵抗もなくなっていきました。夫とのLINEのやり取りを英語にするなど(笑)、自宅でもなるべく英語に触れる機会を増やしたこともよかったかもしれません。
また、実際にボーディングスクールへ息子たちを通わせていることもあり、同じような親御さんからのご相談に関しては、説得力を持って対応できたと思います。これまでの経験や今の経験を生かすことのできる仕事に巡り合えたことは、とてもラッキーでした。
現状の自分の能力でこなせる仕事をするより、少し無理をしても上を目指した方が人間は成長できると思います。少しずつ経験を重ねていくうちに、いつの間にか、出張やワークショップへの参加などもこなせるようになりました。
最終的に中高生留学の主担当となり、英国留学に関して、かなり知識がついたと感じています。
前職の日本から留学生を送り出す仕事、そして現地で留学生を受け入れる業務を通して、留学というものの価値を改めて感じ、また実際に留学生が大きく成長する姿を目にすることができたのは、大変有意義な経験になりました。
駐在妻の友人たちに、海外での教育についてアドバイスを求められることがあり、まだまだ知られていないことがたくさんあると気づきました。
今は長期で日本に一時帰国しなければならない予定があり一旦退職しましたが、今後はこの経験を踏まえ、どこにいても、また他の国に住むことになっても、そしていくつになっても自分らしく仕事ができるよう、私なりに日本人の留学促進に貢献していく道を、起業を含めて探していきたいと思っています。
この経験から得られたものがあれば教えてください。
まずは、『海外で働く』という目標を達成できたことに、大きな喜びを感じました。
「駐在妻だからキャリアはあきらめるしかない…」と思っていた時もありましたが、一歩動きだしたおかげで、やりたい仕事に巡り合えたことから、やはり動いてみることが大切だと感じました。
あとはあきらめない精神力、そして困難をも楽しむポジティブさでしょうか。
自分でどうにもならない部分(=駐在自体)を嘆いても仕方ないので、その中で、いかに自分を成長させることができるかを常に意識することで、限られた時間を有効に使うことができます。
せっかく海外で生活しているのですから、「その時にしかできないことをやってみる!」という心がけひとつで、充実度が変わってくると思います。
また仕事を通じて、英語力や海外の人との折衝力、もともと得意ではあったコミュニケーション力は、さらにアップしたと思います。
この取組みに対して家族の反応はどうでしたか? 何か協力を求めるようなことはされましたか?
子どもはある程度大きくなると、いくら口で言っても、うるさがられるようにしかなりません。そんなときは、やはり親自身が頑張る姿を見せることが一番だと思っています。
うまくいっているところだけでなく、もがいて苦しみながらもあきらめない姿勢を見せることこそが大切だとも。
今回の渡英では、息子たちにも大変苦しい思いをさせたこともあり、私自身があきらめるわけにはいきませんでした。
息子たちは、中学3年と高校2年という時期にいきなり全寮制のボーディングスクールへ編入させられ、語学や生活はもちろん、勉強面でも大変な苦労を強いられたことでしょう。
特に最初の半年間ほどは、慣れない食事(けっして美味しくない……)や寮での規則正しい生活に苦労したようです。
しかし、寮には世界各国からの留学生もいて、1日24時間を共に過ごす中で、語学力の向上とともに、様々な価値観を肌で知り、心身ともにたくましく成長してくれました。
長い休みで自宅に戻っているときは、食事の準備をしてくれたことがありました。
また、あっという間に私より英語が上達した息子たちに、英訳をお願いしたこともありました。直接、言葉で私をねぎらってくれるようなことはありませんが、応援してくれていることは十分に伝わってきました。
夫は最初から働くことを応援してくれ、いつも一番の理解者であり、ときには厳しい意見を言ってくれる同士でもあります。当初は、どうして私ばかりが仕事を辞めなければならないの?と思っていました。しかし今となっては、こんな貴重な経験をさせてもらっていることに感謝の気持ちが大きいです。何より、今は家族の中で一番、英国好きになっています(笑)。

ぜひ、駐在妻の皆さんに向けたアドバイスを!
以前に、学び直しをした大学の恩師から『キャリアは自分の手でつかみにいく。前例がないことを切り開いてこそ価値がある。』という言葉をもらったことがあり、今も私を支える大切な言葉となっています。
100人いれば100通りの駐在妻生活があります。「前例がないから無理、能力がないから仕方ない」なんて言っていたら、あっという間に駐在生活は終わってしまいます。思うように進まず凹むことも多いですが、とことん落ち込んだら、まずは一歩前に進んでみることをおすすめします。そうすると、助けてくれる人や励ましてくれる仲間に出会い、思わぬ道が拓けることがありますよ。
海外で生活をするだけでも、十分大変なことです。そこに、何かひとつ自分らしいことに挑戦できたら、これからの人生においても大きな自信になることと思います。一緒にがんばりましょう!
<インタビュー後記>
退職、出産、転勤同行、専業主婦への転身など、さまざまなライフイベントを経験してこられたNaomiさん。学び直しを経て、ようやく手にした再就職さえも手放すことになりましたが、決してあきらめることなく現地での就労を手にされました。次々とやってくる転機に決断をせまられる中でも、「その状況の中で自分にできることを探し、信じて、行動すること」が大切なのだと思わされました。Naomiさん、貴重な体験談をどうもありがとうございました!



