【帰国後インタビュー vol.9】子ども3人・両実家は遠方…それでも「自分らしさを取り戻せた」コロナ禍での再就職 

総合職として銀行に勤務されていたペコさん。海外赴任への同行に伴い会社を退職されましたが、専業主婦としての自分がどうしても受け入れられずに苦しんだといいます。6年間の海外生活の後、新型コロナウイルス(以下、コロナウイルス)の影響で急遽本帰国し、この度、銀行に総合職として再就職されました。6年間のブランク、3人の幼い子持ち、両実家が遠方という状況ながら、コロナ禍で見事に再就職を決められたペコさんに、これまでの経緯を伺いました。

「専業主婦」としての自分が受け入れられない苦しみ

── これまでのキャリア変遷について教えてください。

大学卒業後、メガバンクの総合職として7年間法人営業をしていました。夫の香港への海外赴任を機に入籍し、仕事を続けるか悩んだ末に、配偶者転勤復職制度(配偶者の転勤を理由に退職した場合に、一定期間内であれば復職できる制度)を利用して退職しました。

その後、香港に3年(2014-2017年)、中国の深圳に2年半(2017-2020年)滞在しました。現在、夫とやんちゃ盛りの子ども1男2女(5歳、3歳、1歳)の5人家族です。コロナウイルスの影響により母子で一時帰国中に夫の帰国辞令が出たため、中国の自宅に戻れぬまま本帰国となりました。本帰国が決定した後すぐに再就職活動を開始し、現在は別の銀行で働き始めて約2カ月が経過したところです。

── 駐在妻時代の現地での過ごし方について教えてください。

仕事を辞めて香港へ引越した当初は子どももおらず、夫は仕事が多忙でほぼ不在、友達はまったくいないという環境でした。そんな中、海外生活への不安よりも「専業主婦」という自分自身を受け入れることができず苦しみました。そして夫の勧めもあり中国語を学ぶために現地の大学と、英会話スクールへ通いはじめました。復職にも役立つと考えて始めた語学学習でしたが、大学で多国籍なクラスメイトと共に学び、学生の頃できなかった留学気分を味わえたのはよい経験でした。

外で働くことが全てではないと思いつつ、現地でアルバイトを始めようと思っていた矢先に第1子を妊娠し、日本で里帰り出産をしました。それからは自分にとって駐妻期間を「自主的に取得した産休育休期間」と位置付け、「今しかできない海外生活を楽しもう」と自分自身に言い聞かせて過ごすようにしていました。

その後、第2子を妊娠した際は香港で出産予定でしたが、妊娠9ヶ月目に夫の中国転勤が決まり、急遽日本で里帰り出産をすることになりました。飛行機搭乗が可能な妊娠週数のリミットもあり、友人との別れや思い出作りをする間もなく、内示後2週間で現地を離れました。自分自身ではコントロールできないことが多い転勤妻の立場を改めて痛感しました。

第2子出産後に滞在した中国では、香港で学んでいた中国語を実際に使う機会に恵まれました。多くの中国人と交流ができたのはうれしかったです。また現地では日本人の友人にも恵まれて、家族同士の親密な関係も築くことができました。

復職期限が切れ、常につきまとうキャリアへの不安

徐々に5年という前職への復職期限が迫る中、夫の任期は当面残っていることから、母子で先行帰国し復職することを検討しはじめました。ただ両実家とも遠方で頼れない中で、完全にワンオペで仕事復帰することに大きな不安を感じていました。

そんな矢先に第3子の妊娠が分かりました。「今は復職よりも、家族一緒に過ごすことが大事な時期であるという知らせだ」と感じる一方、復職期限が切れて本帰国後に戻る職場を失い、新たな仕事を探すことへの不安が常につきまとうようになりました。

3人目出産後は子育てに翻弄されつつ、帰国後に少しでも役立つ資格を取ろうと語学学習に励みました。ヘルパー(中国でいうアイさん)に家事や子どもの世話の一部をお願いし、勉強や友人とのランチなどの時間を確保していました。育児以外の時間を持つことで気分転換ができたのは大変ありがたかったです。

── 再就職に向けて、行動を開始したのはいつ頃ですか?具体的にどの様なアクションをとっていったのでしょうか?

コロナウイルスの影響により母子で一時帰国中に夫の帰国辞令が出た翌日から、インターネットの転職サイトなどを活用し、情報収集をはじめました。転職サイトへの登録や履歴書作成といった具体的な就職活動は、新居に到着した3週間後から開始しました。引越し作業に加えて、コロナ禍で上の子の幼稚園の休園が続いたため、活動ペースはゆっくりめでした。

大手と中小の転職エージェント4社に登録しましたが、実際には大手2社のキャリアコンサルタントの方と直接お話しし、市況などの情報をいただきながら具体的な方向性を探りました。

未就園児が家に2人…コロナ禍でなければ成し得なかった就職活動

── 応募企業の選び方、アプローチの仕方、面接など、応募から内定取得までのプロセスはどのように進められたのでしょうか?

転職エージェントからの推薦を含め、興味のある企業に応募しつつ、履歴書や職務経歴書を作成しはじめました。

当初は自身の経験やスキルを顧みず、せっかくの転職なので「やってみたいこと」「興味ある企業」を優先し、大手有名企業に応募していました。しかしブランクが長いことや、他の候補者と比べて経験不足といった理由で書類選考で落とされることが続きました。

「自分は母としての価値しかなく、社会では必要とされていないのか」と一時的に落ち込みましたが、気を取り直して経験のない業種のベンチャーなど中小企業を含めて検討をはじめました。

ベンチャー企業や他業種への興味も深かったものの、ブランクがあるとはいえ銀行特有の固さや意識が自分の中で定着していること、また土日休みという点もあり、同じ金融業界の方が自分に合っていると感じるようになりました。そういった「自分自身の経験(金融法人営業)」と「ワークライフバランス」を考慮して、経験のある金融業を中心に、総合職だけなく一般職も含めて幅広くエントリーするようにしました。

その結果、金融系4社の書類選考が通過しました。コロナ禍により、最終面接以外はほぼWeb面接だったので、夫の在宅勤務中に子どもを見てもらい、20-60分程度のWeb面接を自宅で実施できたのは助かりました。正直、コロナ禍でなければ未就園児2人を抱えて、すべて対面面接による選考は成し得なかったと思います。

求職活動を開始して2カ月ほど経過し、銀行2社(総合職と一般職)から内定をいただきました。在宅勤務が多く総合職への転換が可能な一般職と、在宅少なめながら業務の幅広さや給与水準が高い総合職のどちらで働くか非常に悩みました。

最終的には今後長く働きたいことや、前職と同じ法人営業の総合職で働き始める方が自分自身には合っていると考え、総合職として再就職することに決めました。ワーキングマザーが少なく勤務時間が長めの支店勤務ではなく、フレキシブルな働き方ができる本部採用へと考慮してくれた点も決断の一因でした。

面接は嘘のない範囲で、自信を持って前向きな回答を

── 面接時によく聞かれた質問や印象に残った点などあれば教えてください。

  • 今後、夫が再び海外転勤する可能性はあるのか。また、その時は仕事を続けるのかどうか。
  • (子ども3人がいることから)近くに実家など頼れる家族がいるのかどうか。
  • 子どもの保育園など預け先は決まっているか。
  • 海外生活でしかできない経験はできたか、またどのように過ごしていたか。
  • なぜ前の職場に戻らないのか。

上記のような点はほとんどの企業から質問されました。

── なかなか答えにくい質問もあったようですが、具体的にはどのようにお答えされたのでしょうか?

夫の海外転勤については、人事の見通しが立たないとした上で、今度は自分自身のキャリアの優先度を高めてまずは単身赴任を軸に考えたいと答えました。

子どもの預け先に関しては、認可外も含め探しているので、3人同じ園にこだわらなければ保育園は確保できる見込みであること、また実家は遠方だが、いざとなれば近くの親戚や民間サービスを頼って乗り切る予定であると伝えました。

海外生活については、中国語や英語の語学学習(TOEIC、HSKなどの資格取得)や日本語を教えるなど異文化コミュニケーションに注力していたこと、また日経新聞など経済誌を毎日読みビジネスの世界から取り残されないよう、新しい情報を確保するように努めていたことを話しました。

海外に滞在した6年間は3人の出産と育児が重なり慌ただしかったですが、所属の後ろ盾がない分、復職や転職を意識したスキルアップを図れたと自負しています。

以前に勤めていた会社は復職期限が切れていたのと、当時に募集していたキャリア採用の求人条件が自身の経験やスキルに合わなかったため応募しませんでした。

自分自身のスキルや家庭と仕事との両立など、初めてのことも多く内心不安だらけでしたが、それは一切見せないように、大きな嘘はつかない程度に自分自身にはできるという自信を持って、前向きな回答を心がけました。

保活はタイミングが重要!早め早めの行動を

── 再就職にあたって、ご家族の反応はいかがでしたか?

最初は夫には相談せずに仕事探しをはじめたのですが、夫は元々私が働きたいと考えていることは知っていたので、話した時にも驚きはありませんでした。夫は「これからの人生では長く働くことになる。今だけ子育てとの両立が大変だけれど、長い目で見たらブランクを早めに埋めたほうがよい。」と応援してくれました。

子ども3人は産まれてからずっと海外で育ち、周りのお母さん方は(育休中など一時的な状態を含めて)専業主婦の駐在妻ばかりだったので、お父さんだけが外で仕事をするものと思い込んでいました。これから私が仕事をすることが、少し不思議で実感は湧かない様子でしたね。

── 保活はどのように進められたのでしょうか?

上の子(当時5歳年中)は認可保育園の空きがあったのですが、下2人は認可の空きがありませんでした。近隣の地域を含めて、下の2人が同時に入園できる認可外保育園探しに注力しました。

最寄りの認可外保育園の0歳児のみ空きがずっと複数あったのですが、のんびりしていたら埋まってしまい、とりあえず早めに申込すべきだったと反省しました。結局、市内の認可外保育園にちょうど2人の空き枠が出てなんとか入園することに。最悪のケースとして覚悟していた3人ともバラバラの園になることは避けられましたが、保活はタイミングが重要だと実感しました。

来年度は上の子のきょうだいポイント、認可外保育園在園中、夫婦共にフルタイムなどの加点がされるので、3人が同じ認可保育園に入園できることを期待しています。

── 今後の中長期的なキャリアプランがあれば教えてください。

ようやく復職というリスタートラインに立てましたが、出産前と同じような働き方はできないですし、経験や年齢的に何度も転職を繰り返すようなキャリアアップは難しいでしょう。金融の中でもより専門性を多く身につけていきたいと考えています。海外経験や語学を生かして、いずれ国際業務に関わりたい気持ちもあります。

── もしまた旦那さまが海外赴任や地方転勤になったらどうされますか?

夫の赴任先(基本は海外)と子どもの年齢にもよりますが、今度は自分のキャリアの優先順位も上げて総合的に考えたいですね。具体的には、私の勤務先の海外拠点への異動も選択肢の一つであると思っています。

もし今度、海外赴任に同行する場合は、5年以内に復職できる配偶者転勤帯同制度を利用したいと考えています。

── 本帰国から再就職活動までを振り返って、大変だったこと、良かったこと、反省点などあれば教えてください。

コロナウイルスによる一時帰国中に本帰国辞令がでたことで、中国の自宅に戻れず荷物の整理もできないまま、夫任せの引越となりました。また緊急事態宣言で子どもの幼稚園も休園が続き、新居への移動もすぐにできず新生活の態勢を整えるまでに時間がかかったのは大変でした。

一方で、繰り返しになりますが、コロナ禍によりWeb面接での選考となり、在宅勤務の夫の協力を得ながら選考が比較的スムーズ に進んだのはありがたかったです。近所の保育園の一時預かりも最初は利用していましたが、コロナウイルスの影響により途中から受入不可となりました。

子ども3人の保育園探しは苦労しました。年度途中、かつ自分自身が本当に内定を獲得できるか弱腰だったこともあり、 保活スタートが遅れてしまいました。結果として上の子のみ認可保育園、下2人は認可外へ何とか入園という形になりましたが、保育園の空きはタイミングと運が大きいので、もう少し早くから情報収集をすべきだったと思います。

6年半ぶりの仕事で頭をフル回転!自分らしさを取り戻せた感覚

── 復職されてから、今感じられていることを教えてください。

復職し始めて2カ月があっという間に過ぎました。コロナウイルスの影響で夫婦ともに在宅勤務日数が増えていることもあり、自分だけで抱え込まず夫に助けられている部分もあります。

夫の仕事が忙しく帰宅が夜遅いため、朝の保育園送り、洗濯物畳み、朝食の片付けなど朝の家事は夫が担当しています。他はほとんどが私の担当ですが、衣類乾燥機、食洗機などで省力化を図っています。また、市のファミリーサポート制度を利用して、月に数回、子どもの送迎をサポーターさんにお願いしています。

駐在期間中、夫は多忙で夜遅く帰宅していたので、平日に子どもたちとご飯を食べることが一度もなかっただけでなく、顔を合わすこともほぼない状況でした。ヘルパーさんに頼りつつも私一人で家事育児をこなしていたことを思い返すと、私が働きはじめたことで、よい意味で新しい家族のかたちにシフトできたように思えます。

私は時短制度は利用していませんが、残業なしのフルタイムで働くことを事前にお伝えし、周りも理解してくれているので残業はほぼありません。1歳の3番目の子は発熱が多いのですが、私が在宅勤務に切り替えて対応しています。コロナ禍で家族の発熱時は出社禁止・在宅勤務が徹底されており、それはワーママか否かに関係なく他の同僚も同じ状態なので、あまり気にしないようにしています。

6年半ぶりの仕事はというと、同年代と比べてキャリア年数がほぼ半分しかなく、実力不足は常に感じています。また、業務に加えて受験すべき試験も多く頭もフル回転です。とはいえ、自身のブランクがあることを受け入れ、今はガツガツしすぎず自分のできる仕事に集中して定時内に終わらせるようにしています。

駐在中はお友達と毎日のようにランチやお買い物をし、家事はヘルパーさんがやってくれるという、今思えば夢のような生活でしたが、専業主婦の自分を受け入れきれず、仕事復帰ができるのかというモヤモヤがずっと心の奥にありました。

そのモヤモヤがなくなった今、忙しすぎて気持ちに余裕がある生活ではないものの、自分らしさを取り戻せた感覚があります。

全ての経験をプラスと捉え、行動を起こすことで次に繋がる

── 本帰国後の再就職に不安を感じている駐在妻へのアドバイスやエールをお願いします!

最初は再就職活動に不安を感じることが多いですが、まず転職サイトに登録するなど行動を起こせば自然と次のアクションに繋がっていきます。履歴書や職務経歴書の作成も、はじめは面倒に感じましたが、自分自身のキャリアを振り返り、整理するツールにもなりました。

私自身、「子ども3人・フルタイム・両実家が遠方」というハードな環境に加えて、6年ぶりの仕事ということで家庭の両立に大きな不安がありました。しかし、やってみないまま、働けるのかどうかと疑念を持ったままで育児に専念するのは自分にとって難しいと感じました。せっかくの復職のチャンスを逃さずに、まずはチャレンジしたいと思います。

駐在中はいつ本帰国になるか、または他国へスライドするか先が見えにくく、自分でコントロールできないことばかりで不安が多いと思います。そんな中でも、すべての海外経験は自分にプラスになると考えて、なるべく現地での生活を体験し、現地の人や日本人との交流を持つことが大事だと感じています。


<インタビュー後記>

私も元銀行員で、銀行の内情はある程度理解できるだけに、実家に頼れない状況で未就学児を3人抱え(1、3、5歳‼︎)、総合職として再就職する…その大変さは想像を絶します。

もちろん復職後の今、きっととても忙しく大変な日々をお過ごしのことでしょう。それでも「モヤモヤを抱えたまま育児に専念することは難しかった」「復職して自分らしさを取り戻せた」という力強い言葉に、ペコさんにとっての働くことの意義の大きさを感じました。

彼女の勇気とバイタリティに感銘を受けるとともに、そのチャレンジを受け入れるほどに企業側も変わりつつあるということをとてもうれしく感じました。