知っておきたい、女性ホルモンのお悩み別Q&A -現役女性医師監修!海外在住日本人のための健康講座シリーズvol1:女性ホルモン(後編)

更年期の対策&治療

今回、PMSに次いで質問が多かったのが更年期について。

更年期とは閉経の前後5年間の10年のことを指し、すべての女性に訪れます。
ただ更年期障害として強く症状がでるかどうかは人それぞれ。
閉経後の体の変化としては、エストロゲンの分泌が著しく減るため、そのプラスの作用がなくなります。
その結果、

  • 肌のシミ・シワが一気に増える
  • 髪の質が変わり、ツヤがなくなる
  • 血圧が上がる
  • 血中コレステロール値が上がり、動脈硬化が進む

といった症状が現れます。

こうした変化は、ホルモンの分泌量の低下に関連して生じるため、ほぼすべての方に起こります。
ただこの変化が徐々に起こるか、急激に起こるかは個人差があります。
急激に起こる場合はちょっときついと感じる方が多いようです。

また更年期はすべての人に訪れますが、更年期障害として症状が出るのは全体の30%ほど。
人によって症状が違うというのが、不安を増強させる要因かもしれません。

【更年期障害の代表的な症状】

  • ホットフラッシュ(急に暑くなり、上半身に汗が吹き出てしまう症状)
  • 目眩、耳鳴りなどの内耳症状
  • 疲労感
  • 眠気
  • 物忘れ
  • 肌の乾燥
  • 糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病など

これを前提に、皆さんからいただいた質問とサチコ先生からのご回答を順にご覧ください。

Aさん
更年期の症状は人によって違うと聞きますが、自分はどんな症状が出るのか気になります。更年期障害は遺伝すると聞きましたが本当ですか?
サチコ先生
遺伝しますが100%ではありません。
更年期障害が発症する原因は遺伝・生活習慣・環境(住んでいる場所など)が三分の一ずつだと言われています。なので、遺伝する可能性は30%程度です。
ただ髪質や肌質など、元々体質がお母様と似ている方は、比較的遺伝する可能性が高いので、ぜひお母様やおばあ様の話を聞いてみてください。
自分の今後の予測を立てるのに役に立つはずです。
Aさん
自分でできる更年期の対策はありますか?
サチコ先生
<PMS・PMDD・月経困難症を軽減させる6つの方法>でご説明した運動と食事に関する内容は、更年期にも役に立ちます。
自分でできることのメインとなるため、ぜひ心がけてください。
サチコ先生
その他、薬局などで売っているサプリメントも役に立ちます。
更年期対策のサプリメントはエストロゲンと同じような働きをする物質を配合し、その働きを補うように作られています。ホルモン補充療法と同じ考え方ですね。
例えば有名なのはエクオールという物質。
エクオールが配合されたサプリメントは海外でも薬局で手に入るので、更年期障害でちょっとつらいという方は試していただくのもひとつの策だと思います。

※エクオールについて:エクオールとは、大豆イソフラボンを乳酸菌発酵させて作られる物質。
エクオールは体の中に入ってエストロゲンと同じ働きをするとされています。そのため、エクオールを摂ることで、閉経で分泌が止まってしまったエストロゲンの働きを補うことができます。

Bさん
更年期には大豆を食べた方がいいと聞きます。大豆があまり手に入らない地域の場合、どうすればいいでしょうか?
サチコ先生
実は大豆を食べても、更年期障害に効果があるかどうかは体質によって違うんです。
とある腸内細菌を持っている人は大豆イソフラボンをエクオールに変えることができます。この腸内細菌を持っているかどうかは体質によって違います。よく
「更年期には大豆を食べた方がいい!」
と聞きますが、体内でエクオールを作れるかどうかによって、大豆を食べて調子がよくなる場合と変わらない場合があります。
エクオールを作れる方は更年期の症状は非常に軽いし、作れない方は重い傾向があると言われています。
体質の問題は個人の努力ではどうすることもできないので、そういう方はサプリメントやホルモン剤で補いつつ、更年期のつらい時期をうまく乗り切ってもらうのが解決方法になるでしょう。
Bさん
更年期障害が起きた場合、海外在住でも適切な治療、ケアが受けられるのでしょうか?
サチコ先生
更年期障害は日本人に限ったことではないので、海外にいてももちろん治療を受けることができます。
更年期障害が起きた場合の代表的な治療はホルモン補充療法。ホルモン剤でエストロゲンを補う治療法で、症状の緩和を目指します。
大まかな薬の配合・スタンスは日本と海外で差はないと思われます。
ただ商品によっては日本の薬事法で承認されていないものもあり、海外と比べると日本のホルモン剤は選択の幅がせまいです。
サチコ先生
閉経後の治療では”とにかく足りないものを補う!”という考えがメインです。そのため、閉経前の女性が内服する低容量ピルと、閉経後の女性が内服する補充療法用のピルとでは、エストロゲンの量が違います。サプリメントでも各成分の含有量やバランスが違うので必ずその時期にあったものを使用しましょう♪

※【補足情報】ホルモン剤を使った治療について

ホルモン剤を使った治療にはふたつのパターンがあります。
ひとつは更年期のホルモン補充療法、もうひとつは第二次性徴から更年期までの方のピルの内服およびIUDやIUSと言われるデバイスの子宮内留置です。ホルモン剤による治療を行う理由は多岐にわたります。

以前はエストロゲン単剤で処方され、子宮がん・乳がんのリスクが上がると言われていました。
けれど、現在では少量のプロゲステロンと少量のエストロゲンを混ぜた複合剤に切り替わってきています。
そして、子宮体癌は複合剤を飲めば発症率は高くならず、乳がんも内服5年以内であればリスクは高くならないと言われています。

ホルモン剤には女性ホルモンそのものだったり、前駆物質(女性ホルモンの元になる物質)が入っていたり、薬の種類によって使われている原料には違いがあります。ただ、体に入った時の働き方はどの薬を飲んでもほぼ同じです。

いずれにせよ、薬の効き具合や副反応は人によって異なるので、受診をして薬の量や種類を調整していく必要があります。

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