知っておきたい、女性ホルモンのお悩み別Q&A -現役女性医師監修!海外在住日本人のための健康講座シリーズvol1:女性ホルモン(後編)

産前産後のホルモン変化は驚くほど劇的!

駐在家族は、ライフステージがお子さんの誕生前後というケースも珍しくありません。今回、産前産後のホルモン変化のつらさについてもご質問・ご感想をいただきました。

産前産後のホルモン変化について、サチコ先生は
出産時のホルモン変化っていうのは非常に劇的で、男性では人生の最期にしか経験することがないと言われるほど大きな変化です。産後の女性の体に急激な変化が起きているのは間違いありません。”
と語られていました。
産前産後に起こるホルモンの変化は以下の通りです。

●着床後〜妊娠12週
<ホルモンの変化>プロゲステロンの分泌量が高い状態が続く。
※本来であれば排卵後、一気に減るプロゲステロンの分泌が減らない。
<症状>妊娠12週頃まで高温期が続く。PMSのような症状が長引く。

●妊娠期間全般(分娩まで)
<ホルモンの変化>エストロゲン・プロゲステロンともに着床後から分娩を迎えるまで緩やかに分泌が増え続ける。出産直前には非妊娠時と比べエストロゲンは10~100倍、プロゲステロンは15倍程度まで増える。(※大塚製薬HP参照)

●出産後
<ホルモンの変化>ここまで緩やかに増えてきたプロゲステロンとエストロゲンの分泌が一気に減る。
<症状>抜け毛が増える、むくみが減る(大量の発汗・排尿)、肌のカサつき、精神的な不安定さ(※)

※【補足情報】産後の精神的な不安定さについて
産後うつ
分娩後にみられるホルモン濃度(エストロゲン、プロゲステロン、甲状腺ホルモンなど)の急激な低下が引き金になり、パートナーと関係からくるストレス、周囲からのサポートの不足、妊娠に関連した問題(早産や先天異常など)、妊娠に関する葛藤(妊娠が計画外であったなど)などが複雑に絡み、発症することが多いようです。
自覚症状も

  • 極度の疲労感
  • 睡眠障害(過眠または不眠)
  • 頭痛および全身の痛み
  • 不安発作またはパニック発作
  • 食欲減退または過食
  • 無力感または絶望感
  • 罪悪感
  • 自殺念慮

など多岐にわたるため、本人も周囲も気付くのが遅れることがあります。
いつもと違う、と感じたら早めに周囲に相談、もしくは専門家にご相談ください。

Aさん
産前産後のつらさを少しでも和らげる方法はありますか?
サチコ先生
妊娠中や産後の場合は、症状に対してピルなどのホルモン剤を利用した治療は基本的に行いません。
産後はホルモンの変化に加えて、出産の疲れ・育児による生活の変化によるストレスがかかるため、多くの方が苦労される時期です。
睡眠を整えるのは難しいので、この時に起こる症状を和らげるための対策は、
・運動・食事といった生活習慣を少しでも改善すること
・代替療法を利用して自分をいかにストレスが少ない状況に持っていくか
の2点がポイントになります。
普段から運動量を確保しておくこと、腸をベストな状態にしておくことでその急激なホルモン変化を乗り切ることができます。
代替療法の中には欧米でよく用いられるアロマセラピーやハーブ療法などがあります。あとは聴覚優位の方だと好きな音楽を聴くのがアロマテラピーよりも効果がある場合もあります。
難しく考えすぎず、少しでもストレスを少なくして、コンディションを整えてみてください。

ホルモンバランスの乱れとはよく聞くけど、実はバランス問題ではない?!

アンケートをとった結果、多くの方から【ホルモンバランスの乱れ】についての質問が寄せられました。

それに対してサチコ先生からは意外な(?)回答をいただきました!
オンラインカフェにご参加くださった方からの質問と合わせて、詳しく見てみましょう。

Aさん
渡航してからホルモンバランスの乱れがひどいと感じます。どうやって対処すればいいですか?
サチコ先生
“ホルモンバランスの乱れ”という表現は、さまざまな場所で使われれているし、よく聞きます。
ただ実は医学的に見たとき、ホルモンバランスの乱れという言葉が何を指し示すのか、ちょっとよく分からないんです。
PMSなどの症状があるのは、きちんと女性ホルモンが分泌されている証拠です。ホルモンの分泌量は時期によって異なり、ホルモンの副反応でPMSなどの症状が現れます。自分がどこのフェーズにいるか、その時にどんな症状が出やすいのかを知っておくことが大切です。
Bさん
ホルモンバランスの乱れを可視化する方法はありますか?
サチコ先生
本当に「ホルモンバランスが乱れている」としたら、それはエストロゲンの分泌が不十分で排卵しないとか、排卵しないことでプロゲステロンが出ていないといった状態になります。
女性ホルモンが分泌されているかどうかを判断するためには、現状を具体的に把握することが必要です。
採血でも分かりますし、前半の<自分の状態・女性ホルモンのサイクルを知ろう>でお話した内容(基礎体温を測るなど)を実践し、排卵の有無を確認してみてください。
その上で必要があれば病院を受診することをおすすめします。
ただ、皆さんの仰る「ホルモンバランスの乱れ」を整えるには、食事、運動、睡眠を見直すことが一番の近道になります。シンプルですが、最も効果の高い方法だと思いますので、ぜひ今日からでも取り組んで頂きたいと思います。

あとがき

今回の記事をまとめてみて、当記事の編集者は
「閉経を迎えるまで、女性は毎月の月経サイクルや人生における女性ホルモンの分泌の変化を受けざるを得ないし、これからもしばらくは女性ホルモンに翻弄される時期は続くのかも……。」
と、改めて感じました。
ただ、一瞬ですべての悩みを解決することはできないとはいえ、何も知らずにいるのと知っているのでは心構えが違います。

今回のオンラインカフェを通じてサチコ先生が何度も繰り返していたメッセージ。
それは“自分を知ること、自分を労わることを忘れずに”ということ。

サチコ先生のお話を聞いていたら、医学的に見て抗えない症状ならば自分を責めたり、無理に個人の努力でどうにかしようとせず、「今はそんなタイミングだから仕方ない」と、潔く受け入れてもいいのかなと感じ、少し気が楽になりました。

ままならないことの多い海外生活。
正しい知識を持つことで、身も心も守っていきたいですね。
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。

●海外あんしん健康・医療相談(オンラインホームドクターサービス)のご紹介

今回、女性ホルモンに関して詳しく解説してくださったサチコ先生。
世界中に住む日本人を対象に健康相談や医療相談を受けるサービスを展開されています。
初回は相談無料なので、困ったことがあればぜひこちらにご相談ください!
◇Peace of Mind Medical Services
◇Instagram

【今までにあった相談例】

  • 子供に湿疹ができたけど、病院に行った方がいいのか分からない。
  • 言葉や文化の壁があって、病院を受診するべきか悩む。
  • 海外で手術することになったけど、本当に手術していいのか
  • 病院を受診して薬をもらってきたけれど、本当に飲んでいいの?  など。
サチコ先生
このサービスを開始して約8年、12ヵ国からのご相談をお受けしたことがあり、長いお付き合いをしている方もいます。私が全ての国に住んでいるわけではないですし、全ての言語ができるわけではありませんが、他の地域に住んでいらっしゃる方と二人三脚でいろんな言語と奮闘しながら相談に乗っています。
普段は必要のないサービスですが、ウェブサイトをブックマークしたり、Instagramをフォローしていただけると、困ったときに連絡ができると思います。気軽なご相談もお受けしていますので、何か気になることがあれば、ぜひご連絡ください。

サチコ先生関連の記事・イベントのご案内

●今回の記事でまとめた女性ホルモンに関するオンラインカフェが大好評だったため、追加でInstagram Liveも2021年7月に開催しました!
オンラインカフェ当日は時間の関係でお話しできなかったミレーナの話や、妊活・更年期について話しています。
情報満載のInstagram Live、下記をクリックしてご覧ください♪
◇Instagram Live 『自分の女性ホルモンサイクルを知って、より快適な海外生活を』

●今回の記事の元となった2021年6月のオンラインカフェの開催レポートはこちらです。

●2021年11月にサチコ先生をゲストとしてお迎えした二回目のオンラインカフェ、テーマは【腸活】。

腸活のオンラインカフェを受け、2021年12月にはInstagram Liveを開催しました。
”取り入れてみよう!世界の発酵食品&飲み物”というタイトルで、サチコ先生と管理栄養士のしおさきえりさんの対談形式で、世界各地の食品をご紹介しています。
下記のリンクから、Instagram Liveのアーカイブをご覧いただけます♪
◇Instagram Live『ドクターと管理栄養士に聞く!海外でも気軽にできる腸活のススメ。世界の発酵食品&飲み物』

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