知っておきたい、女性ホルモンのお悩み別Q&A -現役女性医師監修!海外在住日本人のための健康講座シリーズvol1:女性ホルモン(後編)

女性ホルモン後編アイキャッチ

●監修:北出佐知子医師

女性は毎月のサイクルで、またライフステージによって、女性ホルモンの影響を大きく受けます。
特に海外駐在家族の場合は、「大きな生活環境の変化に伴いその影響がより強く出てしまう」なんてケースもよくあります。
そこで駐在ファミリーカフェでは、サチコ先生こと北出佐知子医師をゲストにお迎えし、女性ホルモンをテーマにオンラインカフェを開催しました。

ご主人の海外転勤に同行し、海外生活10年以上のサチコ先生。
オンラインカフェ前半では女性ホルモンの基礎知識をご説明いただき、後半では参加者の皆さんからの質問にご回答いただきました。
このページでは、《海外在住日本人のための健康講座シリーズvol1》と題し、オンラインカフェ後半の内容ーPMSや更年期との向き合い方、ピルについての情報などをまとめています。
サチコ先生の医学的見解&駐在妻としての立場からの回答には、他ではなかなか得られない日々の不調との向き合い方のヒントがたくさん!
女性ホルモンに関する悩みをお持ちの方は、ぜひこの記事をご覧ください。

★オンラインカフェ前半部分:『女性ホルモンの基礎知識:海外在住日本人のための健康講座シリーズvol.1:女性ホルモン(前編)』

●監修:サチコ先生のプロフィール●

北出佐知子医師

本名:北出佐知子。1974年生まれ。東京都出身。英領バミューダ諸島在住。都内の医学部を卒業後、大学病院循環器内科に勤務ののち、シンガポールでGP (総合医)として日系クリニックに勤務。2013年より、オンライン・ホームドクターとして在外邦人のサポートを行なっている。Peace of Mind Medical Services 代表
◇Instagram

サチコ先生

私は2011年から夫の仕事の都合でシンガポールに住むことになり、現地の日系クリニックで総合医として働き出しました。その頃から健康問題で困っている方の相談を受け始め、かれこれ8年ほどオンラインで世界中に住んでいる方からの医療相談・健康相談を受けています。
今回のオンラインカフェやこの記事を通して、皆さんにご自分の体のことをよりよく知っていただければ嬉しいです。

現代人にはストレスフリーな生活は不可能!?

まず前提としてサチコ先生が語られたのは”現代人にはストレスフリーな生活は無理”ということでした。
“女性ホルモンの嬉しくない影響を減らすためには、ストレスを減らした方がよい”
というセリフを耳にしたことがある方は多いでしょう。

確かに、過度のストレスは心身に悪影響を及ぼしますし、実際ストレスケアは大きな課題のひとつです。
しかし私たちは常にストレスに晒されています。19世紀に電球が発明されて以降、人は日が暮れてからも起きている生活を始めました。夜に起きている時点で体にはストレスです。

それに加えて海外で生活をする日本人には、慣れ親しんだ土地から離れて暮らすという大きなストレスも、のしかかります。
空気、水、食べ物、言語
ー海外在住の皆さんを取り巻く環境そのものが、日本にいた時とは大きく異なります。
渡航した直後はもちろん、日常生活でもずっと強いストレスに晒されている状態です。
絶え間ないストレスにより脳や腸のバランスや、サーカディアンリズム(体内時計)が崩れることで、女性ホルモンのサイクルも大きく影響を受けて崩れてしまいます。

そのためストレスフリーを目指すのではなく、ご自身の置かれた状況の厳しさを客観的に把握し、ストレスを軽減させる方法の実践や、医療や代替療法に頼ることが大切です。

サチコ先生

駐在家族の皆さんは、かなりキツい環境で日々生活をしています。まずはそんな自分を認めてくださいね。

PMS・PMDD・月経困難症を軽減させる6つの方法

Aさん

PMSがつらいです……。月経前のイライラがひどくて、自分でも止めることができません。どうすればいいですか?

Bさん

月経痛が重くて、毎回痛み止めを飲んでいます。痛み止め以外で対処する方法を知りたいです。

PMS・PMDD(月経前不快気分障害)・月経困難症に悩む方は女性全体の70%と言われています。オンラインカフェの事前アンケートでも、やはりPMSやPMDDに関する質問が多く寄せられました。

サチコ先生

普段から月経痛があって、痛み止めを飲むのが当たり前だと思っている女性がすごく多いです。でも、月経痛って本来はは耐えられるレベルであるべき。
なので、痛み止めを飲む必要がない状態が正常だと考えた方がいいと思います。これは痛い時に我慢して薬を飲むなと言っているのではなく、飲まなくても済むような状態を目指して体をちょっと整えた方がよいという意味です。

※月経痛がひどい方は婦人科疾患、例えば子宮内膜症・子宮線筋症・子宮筋腫といった病気が隠れている可能性もあります。下記の方法を試す前にオンラインカフェ前半の記事で紹介している4つのポイントをご確認の上、必要な場合は病院を受診してみてください。

サチコ先生によると、月経痛に限らず、PMS・PMDDを含む女性ホルモンによる症状を軽減するためには、以下の6つの方法があるそうです。

  1. 運動
  2. 食事
  3. サプリメント
  4. 漢方
  5. ピル
  6. 代替医療

それぞれについて詳しくご説明します。

1.運動

PMDDの原因の一つが、女性ホルモンの分泌変化に伴って生じる、神経伝達物質であるセロトニンやGABAの働きの低下です。
(※詳細は女性ホルモンの基礎知識をご参照ください)
運動をすることで神経伝達物質のGabaとセロトニンを増やすことができるため、精神的な安定に繋がり、PMSやPMDDの症状が軽くなります。
また、プロゲステロンの作用で月経前はむくみやすくなります。運動はむくみに対しても有効です。

サチコ先生

運動の内容はウォーキングやジョギングなど、何でもOKです!
比較的効果が高いと言われているのはヨガなので、試してみるのもいいかもしれません。

2.食事

食事に気をつけることで、むくみを減らすことができます。
むくみは月経前に起こりやすく、むくむと便秘や下痢、頭痛、体重増加などあらゆる症状が出てきます。
食事でうまくコントロールして水分の排出をスムーズにすることがポイント
塩分は控えめにし、カリウムをしっかり取ることで排泄の量を増やしましょう。具体的には葉物野菜や果物を食事に取り入れることがおすすめです。

サチコ先生

食事&運動に気をつけ、むくみを減らすことで劇的に症状が改善するケースもあります。
あと、中年期(40歳〜64歳までの時期)は食事に気をつけていないとすぐに栄養不足になります。カロリーはとっているけれど、栄養素が足りず、なんとなく不調が続くというケースも。特にビタミン・ミネラルが不足しやすいので、意識的に取り入れていく必要があります。

3.サプリメント

サプリメントは女性ホルモンの分泌自体を動かすものではありません。しかし、二次的に起こる反応を和らげる効果が非常に高いです。
ただしサプリメントの効果は体質によって違いがあり、同じサプリメントでも効くかどうかは個人差があります

サチコ先生

海外だと、チェストツリー(チェストベリー)、月見草オイルなどを使ったものが店頭によく並んでいます。
日本だと100年以上前から「命の母」という、今で言うサプリメントが愛用されています。現在でも、小林製薬から”命の母ホワイト”がPMS用に、”命の母”シリーズが更年期用に販売されています。これは漢方のように生薬を配合していますが、日本古来のものを日本人に合わせた配合で作っているため評判がいいです。

サチコ先生

ちなみに月経関連で推奨されるサプリメントには海外製でも日本製でも、ビタミンB群が一緒に入っていることが多いです。これは先ほど食事の項でお伝えしたように栄養不足を補う目的で入れられています。
腸内環境が悪くなって食事から効率的に栄養が取れないという方もいるため、サプリメントでビタミン・ミネラルをとることで栄養状態が改善され、症状がよくなっているというケースもあります。

4.漢方

漢方はアジア圏では比較的処方を受けやすく、個人で手に入れることもできます。
ただし、漢方は
・生まれつきの体質(大きく6つに分類)
・現在のホルモンの分泌量
・体調
などによって、処方される種類や分量、配合が変わります。
そのため、服用をはじめる場合、医師や漢方の専門家に相談して、状態をチェックしながら体に合ったものを選ぶことがおすすめです!
また漢方は徐々に効果が出てくるため2〜3ヶ月飲まないと効果の判定ができません。なので、一度飲み始めたら自己判断で中止しないというのも大事なポイント。
ちなみに処方された漢方薬が同じだったとしても、一人ひとり体質は違うため、効果には個人差があります。

サチコ先生

日本の医師は医学部で漢方の基礎は勉強をしています。保険適用の漢方薬もあるので、漢方を好んで処方する婦人科の医師も多いです。

Cさん

欧州在住だと漢方を試したくてもなかなか手に入りません。日本から持ってくることもできますか?

サチコ先生

確かにアメリカ大陸やヨーロッパではなかなか入手が困難だと思います。また日本で保険適用のものでも、現地では保険の適用外だったりすることも多いです。
現在は規制緩和により、薬剤の種類によっては長期処方が可能になっているものもあります。
そのため、一時帰国の際や出国前に多めに処方できないか、医療機関に相談してみるという方法もあります。
その際には合わないものを大量に持っていっても仕方がないので、合うものを見つけてからにして下さい。

※各国への持ち込み方法や規制に関しては、念のため各自でご確認ください。

Cさん

婦人科で処方されるメジャーな漢方薬の名前が知りたいです。

【婦人科領域でよく処方される漢方薬】
冬季芍薬散(トウキシャクヤクサン)
月経痛、PMSや月経困難症に対して。毎日内服することも可能。

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)
非常に痛みが強い時には頓服的に内服する。

桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
重い月経痛や経血量が多い場合。

(※あくまで一般的な処方の場合と内服の頻度です。医師に処方された場合はその用法用量をお守りください。)

サチコ先生

この3種類は日本の婦人科でよく出されるメジャーな漢方薬です。
またこれらの漢方に含まれる生薬を独自に配合し直したサプリメントが前述の”命の母”です。含有量は少ないんですけど、婦人科で出される漢方と生薬の成分が似ています。

サチコ先生

効果があるかは試してみないと分かりません。ですが、続けることによってPMS/PMDDの症状が劇的に軽くなる方がいるのも事実です。
ただ効果が出るまで時間がかかるため、自己判断で内服を中止する方も多くいます。即効性は低いですが、2,3ヶ月くらい飲んでいるとじんわり効いてくるため、途中で止めずに、様子を見ることも大切です。また、稀ではありますが、漢方薬による肝障害を起こすこともあります。内服中は定期的なチェックをすることをおすすめします。

5.ピル

現在の医療現場ではPMSの改善の第一選択として低用量ピルが挙げられています。
しかし、日本ではピルの保険適用は月経困難症と子宮内膜症に限られていて、PMS・PMDDは保険適用外です。

サチコ先生

医師としてはPMSの相談を受けた際、ピルが効きそうな方に対しても、”保険適用外で自費になると高額になってしまうため、すすめにくい”という事態が発生します。けれど、海外の場合は保険のシステムが日本と違うため、PMS・PMDDに対するピルの処方も保険でカバーされることが多いように思います。

※加入されている保険によって異なるため、各自ご確認ください。

日本ではピルの使用に不安を感じる方も多いようで、今回もピルに関して多くの質問が寄せられました。下記の表から分かるように、日本や中国といった東アジアではピルを服用している人が圧倒的に少ないです。

【世界のピル使用率
・フランス:33.1%
・カナダ:28.5%
・ノルウェー:25.6%
・イギリス:26.1%
・タイ:19.6%
・アメリカ:13.7%
・ベトナム:10.5%
・マレーシア:8.8%
日本:2.9%
・中国:2.4%
(参照:Contraceptive Use by Method 2019

日本のピル使用率が低い理由は、日本では”ピル=避妊の薬である、副作用が強い”というイメージがあり、その上、保険適用の範囲が限られているためだと言われています。
けれどピルはPMS・PMDD・月経困難症の治療に対して効果があると医学的に証明されていますし、海外在住の皆さんは現地で処方されることもあるでしょう。
そのため、ピルに関して正しい知識を持つことが大切です。

サチコ先生

海外では保険適用でのピル処方がしやすいため、医師側も患者側も抵抗なくピルを利用できます。
そういった点で海外の医師は経験が多いので、たくさんの種類の中から皆さんの体にあったものを処方してくれる可能性は高いです。

Dさん

ピルは副作用が強いと聞くので、どうしても我慢できないときの最終手段にした方がいいのでしょうか?

サチコ先生

日本人は副作用という言葉に対してとても敏感で、副作用があると聞くと薬を飲むことをためらいやすいという国民性があるようです。そのため、副作用が強いと言われるピルを拒絶する人が多いのでしょう。しかし、ピルの副作用が強いというのは実は過去のもの。
50年ほど前、日本にピルが入ってきた頃は、高用量のピルが一般的で、胃腸障害や血栓症といった副作用が多く報告され、それがイメージとして定着してしまいました。現在では、高用量ピルは使われていません。

サチコ先生

現在主に使われているピルは、低用量で効果が高く副作用は軽いもの。飲むメリットは非常に大きいと思います。ただ、低用量とはいえ、人によってはピルが体質に合わない方もいます。
ピルの副反応で一番避けたいのが血栓症です。割合としては少ないですが、血栓ができてしまった場合、肺塞栓症・静脈内血栓症などが起こる可能性があります。これは、血管が詰まって必要な臓器に血が届かなくなってしまうという非常に怖い病気で、放っておくと死に至ります。
それ以外ではあまりデメリットはないと言っていいでしょう。

Dさん

ピルを飲むと妊娠しにくくなると聞いたので、飲むのをためらっています。

サチコ先生

ピルを飲むと、やめても妊娠しにくくなる”などと言われていた時代も確かにあります。
しかし、今はピルを飲んでいる方が妊娠を希望し内服を中止した場合、妊娠する確率は98~99%と言われています。

Dさん

ピルっていろんな種類があるんですか?

サチコ先生

現在使われているピルはホルモンの含有量によって超低用量・低用量・中用量の3つに分かれています。
またホルモンの配合方法によって一層性と三層性という分け方もあります。
一層性とはエストロゲンとプロゲステロンが入ったものを一定期間飲んで、飲み終わった瞬間に生理を起こすっていうシンプルなタイプのもの。女性ホルモンの濃度はずっと同じです。
一方、三層性はエストロゲンとプロゲステロンの濃度を三段階に変えています。濃度を変えることで、体の中で従来の女性ホルモンサイクルと同じような状態を作り出します。
海外では三層性のピルがよく処方されています。

サチコ先生

ピルが日本で用いられるようになったのは1999年。その後しばらく避妊の目的で使われていたため、今でも避妊薬や副作用が強いというイメージが根強く残っています。
けれど20年以上経ち、ピル自体も改良されているので、より安心して内服できます。妊娠出産の回数が少なくて、常に女性ホルモンサイクルに体を翻弄されている現代女性にとっては、ピルの内服は体を休めるチャンスになります。

6.代替医療

アロマセラピー、ハーブ療法、ホメオパシー、ナチュロパシー、音楽療法などがあります。アーユルヴェーダも非常に有用な伝統医学のひとつです。自分がリラックスできる状態に持っていくのが代替医療のポイントです

サチコ先生

視覚優位、嗅覚優位、聴覚優位などご自身の特徴を知った上で、それぞれにあったものを探してみてください。人によって合う合わないはありますが、非常によく効く場合もあります。

更年期の対策&治療

今回、PMSに次いで質問が多かったのが更年期について。

更年期とは閉経の前後5年間の10年のことを指し、すべての女性に訪れます。
ただ更年期障害として強く症状がでるかどうかは人それぞれ。
閉経後の体の変化としては、エストロゲンの分泌が著しく減るため、そのプラスの作用がなくなります。
その結果、

  • 肌のシミ・シワが一気に増える
  • 髪の質が変わり、ツヤがなくなる
  • 血圧が上がる
  • 血中コレステロール値が上がり、動脈硬化が進む

といった症状が現れます。

こうした変化は、ホルモンの分泌量の低下に関連して生じるため、ほぼすべての方に起こります。
ただこの変化が徐々に起こるか、急激に起こるかは個人差があります。
急激に起こる場合はちょっときついと感じる方が多いようです。

また更年期はすべての人に訪れますが、更年期障害として症状が出るのは全体の30%ほど。
人によって症状が違うというのが、不安を増強させる要因かもしれません。

【更年期障害の代表的な症状】

  • ホットフラッシュ(急に暑くなり、上半身に汗が吹き出てしまう症状)
  • 目眩、耳鳴りなどの内耳症状
  • 疲労感
  • 眠気
  • 物忘れ
  • 肌の乾燥
  • 糖尿病・高血圧・高脂血症などの生活習慣病など

これを前提に、皆さんからいただいた質問とサチコ先生からのご回答を順にご覧ください。

Aさん

更年期の症状は人によって違うと聞きますが、自分はどんな症状が出るのか気になります。更年期障害は遺伝すると聞きましたが本当ですか?

サチコ先生

遺伝しますが100%ではありません。
更年期障害が発症する原因は遺伝・生活習慣・環境(住んでいる場所など)が三分の一ずつだと言われています。なので、遺伝する可能性は30%程度です。
ただ髪質や肌質など、元々体質がお母様と似ている方は、比較的遺伝する可能性が高いので、ぜひお母様やおばあ様の話を聞いてみてください。
自分の今後の予測を立てるのに役に立つはずです。

Aさん

自分でできる更年期の対策はありますか?

サチコ先生

<PMS・PMDD・月経困難症を軽減させる6つの方法>でご説明した運動と食事に関する内容は、更年期にも役に立ちます。
自分でできることのメインとなるため、ぜひ心がけてください。

サチコ先生

その他、薬局などで売っているサプリメントも役に立ちます。
更年期対策のサプリメントはエストロゲンと同じような働きをする物質を配合し、その働きを補うように作られています。ホルモン補充療法と同じ考え方ですね。
例えば有名なのはエクオールという物質。
エクオールが配合されたサプリメントは海外でも薬局で手に入るので、更年期障害でちょっとつらいという方は試していただくのもひとつの策だと思います。

※エクオールについて:エクオールとは、大豆イソフラボンを乳酸菌発酵させて作られる物質。
エクオールは体の中に入ってエストロゲンと同じ働きをするとされています。そのため、エクオールを摂ることで、閉経で分泌が止まってしまったエストロゲンの働きを補うことができます。

Bさん

更年期には大豆を食べた方がいいと聞きます。大豆があまり手に入らない地域の場合、どうすればいいでしょうか?

サチコ先生

実は大豆を食べても、更年期障害に効果があるかどうかは体質によって違うんです。
とある腸内細菌を持っている人は大豆イソフラボンをエクオールに変えることができます。この腸内細菌を持っているかどうかは体質によって違います。よく
「更年期には大豆を食べた方がいい!」
と聞きますが、体内でエクオールを作れるかどうかによって、大豆を食べて調子がよくなる場合と変わらない場合があります。
エクオールを作れる方は更年期の症状は非常に軽いし、作れない方は重い傾向があると言われています。
体質の問題は個人の努力ではどうすることもできないので、そういう方はサプリメントやホルモン剤で補いつつ、更年期のつらい時期をうまく乗り切ってもらうのが解決方法になるでしょう。

Bさん

更年期障害が起きた場合、海外在住でも適切な治療、ケアが受けられるのでしょうか?

サチコ先生

更年期障害は日本人に限ったことではないので、海外にいてももちろん治療を受けることができます。
更年期障害が起きた場合の代表的な治療はホルモン補充療法。ホルモン剤でエストロゲンを補う治療法で、症状の緩和を目指します。
大まかな薬の配合・スタンスは日本と海外で差はないと思われます。
ただ商品によっては日本の薬事法で承認されていないものもあり、海外と比べると日本のホルモン剤は選択の幅がせまいです。

サチコ先生

閉経後の治療では”とにかく足りないものを補う!”という考えがメインです。そのため、閉経前の女性が内服する低容量ピルと、閉経後の女性が内服する補充療法用のピルとでは、エストロゲンの量が違います。サプリメントでも各成分の含有量やバランスが違うので必ずその時期にあったものを使用しましょう♪

※【補足情報】ホルモン剤を使った治療について

ホルモン剤を使った治療にはふたつのパターンがあります。
ひとつは更年期のホルモン補充療法、もうひとつは第二次性徴から更年期までの方のピルの内服およびIUDやIUSと言われるデバイスの子宮内留置です。ホルモン剤による治療を行う理由は多岐にわたります。

以前はエストロゲン単剤で処方され、子宮がん・乳がんのリスクが上がると言われていました。
けれど、現在では少量のプロゲステロンと少量のエストロゲンを混ぜた複合剤に切り替わってきています。
そして、子宮体癌は複合剤を飲めば発症率は高くならず、乳がんも内服5年以内であればリスクは高くならないと言われています。

ホルモン剤には女性ホルモンそのものだったり、前駆物質(女性ホルモンの元になる物質)が入っていたり、薬の種類によって使われている原料には違いがあります。ただ、体に入った時の働き方はどの薬を飲んでもほぼ同じです。

いずれにせよ、薬の効き具合や副反応は人によって異なるので、受診をして薬の量や種類を調整していく必要があります。

産前産後のホルモン変化は驚くほど劇的!

駐在家族は、ライフステージがお子さんの誕生前後というケースも珍しくありません。今回、産前産後のホルモン変化のつらさについてもご質問・ご感想をいただきました。

産前産後のホルモン変化について、サチコ先生は
出産時のホルモン変化っていうのは非常に劇的で、男性では人生の最期にしか経験することがないと言われるほど大きな変化です。産後の女性の体に急激な変化が起きているのは間違いありません。”
と語られていました。
産前産後に起こるホルモンの変化は以下の通りです。

●着床後〜妊娠12週
<ホルモンの変化>プロゲステロンの分泌量が高い状態が続く。
※本来であれば排卵後、一気に減るプロゲステロンの分泌が減らない。
<症状>妊娠12週頃まで高温期が続く。PMSのような症状が長引く。

●妊娠期間全般(分娩まで)
<ホルモンの変化>エストロゲン・プロゲステロンともに着床後から分娩を迎えるまで緩やかに分泌が増え続ける。出産直前には非妊娠時と比べエストロゲンは10~100倍、プロゲステロンは15倍程度まで増える。(※大塚製薬HP参照)

●出産後
<ホルモンの変化>ここまで緩やかに増えてきたプロゲステロンとエストロゲンの分泌が一気に減る。
<症状>抜け毛が増える、むくみが減る(大量の発汗・排尿)、肌のカサつき、精神的な不安定さ(※)

※【補足情報】産後の精神的な不安定さについて
産後うつ
分娩後にみられるホルモン濃度(エストロゲン、プロゲステロン、甲状腺ホルモンなど)の急激な低下が引き金になり、パートナーと関係からくるストレス、周囲からのサポートの不足、妊娠に関連した問題(早産や先天異常など)、妊娠に関する葛藤(妊娠が計画外であったなど)などが複雑に絡み、発症することが多いようです。
自覚症状も

  • 極度の疲労感
  • 睡眠障害(過眠または不眠)
  • 頭痛および全身の痛み
  • 不安発作またはパニック発作
  • 食欲減退または過食
  • 無力感または絶望感
  • 罪悪感
  • 自殺念慮

など多岐にわたるため、本人も周囲も気付くのが遅れることがあります。
いつもと違う、と感じたら早めに周囲に相談、もしくは専門家にご相談ください。

Aさん

産前産後のつらさを少しでも和らげる方法はありますか?

サチコ先生

妊娠中や産後の場合は、症状に対してピルなどのホルモン剤を利用した治療は基本的に行いません。
産後はホルモンの変化に加えて、出産の疲れ・育児による生活の変化によるストレスがかかるため、多くの方が苦労される時期です。
睡眠を整えるのは難しいので、この時に起こる症状を和らげるための対策は、
・運動・食事といった生活習慣を少しでも改善すること
・代替療法を利用して自分をいかにストレスが少ない状況に持っていくか
の2点がポイントになります。
普段から運動量を確保しておくこと、腸をベストな状態にしておくことでその急激なホルモン変化を乗り切ることができます。
代替療法の中には欧米でよく用いられるアロマセラピーやハーブ療法などがあります。あとは聴覚優位の方だと好きな音楽を聴くのがアロマテラピーよりも効果がある場合もあります。
難しく考えすぎず、少しでもストレスを少なくして、コンディションを整えてみてください。

ホルモンバランスの乱れとはよく聞くけど、実はバランス問題ではない?!

アンケートをとった結果、多くの方から【ホルモンバランスの乱れ】についての質問が寄せられました。

それに対してサチコ先生からは意外な(?)回答をいただきました!
オンラインカフェにご参加くださった方からの質問と合わせて、詳しく見てみましょう。

Aさん

渡航してからホルモンバランスの乱れがひどいと感じます。どうやって対処すればいいですか?

サチコ先生

ホルモンバランスの乱れ”という表現は、さまざまな場所で使われれているし、よく聞きます。
ただ実は医学的に見たとき、ホルモンバランスの乱れという言葉が何を指し示すのか、ちょっとよく分からないんです。
PMSなどの症状があるのは、きちんと女性ホルモンが分泌されている証拠です。ホルモンの分泌量は時期によって異なり、ホルモンの副反応でPMSなどの症状が現れます。自分がどこのフェーズにいるか、その時にどんな症状が出やすいのかを知っておくことが大切です。

Bさん

ホルモンバランスの乱れを可視化する方法はありますか?

サチコ先生

本当に「ホルモンバランスが乱れている」としたら、それはエストロゲンの分泌が不十分で排卵しないとか、排卵しないことでプロゲステロンが出ていないといった状態になります。
女性ホルモンが分泌されているかどうかを判断するためには、現状を具体的に把握することが必要です。
採血でも分かりますし、前半の<自分の状態・女性ホルモンのサイクルを知ろう>でお話した内容(基礎体温を測るなど)を実践し、排卵の有無を確認してみてください。
その上で必要があれば病院を受診することをおすすめします。
ただ、皆さんの仰る「ホルモンバランスの乱れ」を整えるには、食事、運動、睡眠を見直すことが一番の近道になります。シンプルですが、最も効果の高い方法だと思いますので、ぜひ今日からでも取り組んで頂きたいと思います。

あとがき

今回の記事をまとめてみて、当記事の編集者は
「閉経を迎えるまで、女性は毎月の月経サイクルや人生における女性ホルモンの分泌の変化を受けざるを得ないし、これからもしばらくは女性ホルモンに翻弄される時期は続くのかも……。」
と、改めて感じました。
ただ、一瞬ですべての悩みを解決することはできないとはいえ、何も知らずにいるのと知っているのでは心構えが違います。

今回のオンラインカフェを通じてサチコ先生が何度も繰り返していたメッセージ。
それは“自分を知ること、自分を労わることを忘れずに”ということ。

サチコ先生のお話を聞いていたら、医学的に見て抗えない症状ならば自分を責めたり、無理に個人の努力でどうにかしようとせず、「今はそんなタイミングだから仕方ない」と、潔く受け入れてもいいのかなと感じ、少し気が楽になりました。

ままならないことの多い海外生活。
正しい知識を持つことで、身も心も守っていきたいですね。
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。

サチコ先生関連の情報・イベントのご案内

●海外あんしん健康・医療相談(オンラインホームドクターサービス)のご紹介

今回、女性ホルモンに関して詳しく解説してくださったサチコ先生。
世界中に住む日本人を対象に健康相談や医療相談を受けるサービスを展開されています。
初回は相談無料なので、困ったことがあればぜひこちらにご相談ください!
◇Instagram

【今までにあった相談例】

  • 子供に湿疹ができたけど、病院に行った方がいいのか分からない。
  • 言葉や文化の壁があって、病院を受診するべきか悩む。
  • 海外で手術することになったけど、本当に手術していいのか
  • 病院を受診して薬をもらってきたけれど、本当に飲んでいいの?  など。
サチコ先生

このサービスを開始して約8年、12ヵ国からのご相談をお受けしたことがあり、長いお付き合いをしている方もいます。私が全ての国に住んでいるわけではないですし、全ての言語ができるわけではありませんが、他の地域に住んでいらっしゃる方と二人三脚でいろんな言語と奮闘しながら相談に乗っています。
普段は必要のないサービスですが、ウェブサイトをブックマークしたり、Instagramをフォローしていただけると、困ったときに連絡ができると思います。気軽なご相談もお受けしていますので、何か気になることがあれば、ぜひご連絡ください。

●今回の記事でまとめた女性ホルモンに関するオンラインカフェが大好評だったため、追加でInstagram Liveも2021年7月に開催しました!
オンラインカフェ当日は時間の関係でお話しできなかったミレーナの話や、妊活・更年期について話しています。
情報満載のInstagram Live、下記をクリックしてご覧ください♪
◇Instagram Live 『自分の女性ホルモンサイクルを知って、より快適な海外生活を』

●今回の記事の元となった2021年6月のオンラインカフェの開催レポートはこちらです。

●2021年11月にサチコ先生をゲストとしてお迎えした二回目のオンラインカフェ、テーマは【腸活】。

腸活のオンラインカフェを受け、2021年12月にはInstagram Liveを開催しました。
”取り入れてみよう!世界の発酵食品&飲み物”というタイトルで、サチコ先生と管理栄養士のしおさきえりさんの対談形式で、世界各地の食品をご紹介しています。
下記のリンクから、Instagram Liveのアーカイブをご覧いただけます♪
◇Instagram Live『ドクターと管理栄養士に聞く!海外でも気軽にできる腸活のススメ。世界の発酵食品&飲み物』