アラフォー駐妻の再就職 パート→業務委託→12年ぶりの正社員へ 

帰国後(キャリア体験談)

2021年春に駐妻カフェで実施した『駐在妻の再就職アンケート』では、100名を越える元駐在妻からの声が集まり、知られざる駐在妻の再就職の実態が浮き彫りになりました。今回は、そのアンケート企画のリーダーを務めた駐妻カフェ運営メンバーたのきんさんの体験談です。2度の駐在妻生活と再就職活動を経て、12年ぶりにフルタイム勤務をはじめるまでのご自身の経験を綴ってもらいました。

国際開発学から金融の世界へ

-これまでのキャリア変遷について教えてください。

これまで2度の駐在同行と再就職を経験しています。1度目の帰国後はNPOでパートスタッフとして勤務しました。その後、再度の駐在同行に伴い退職。2度目の帰国後は公的機関での業務委託を経て、現在シンクタンクに正社員として再就職しています。

私のキャリアのスタート地点は、高校時代に経験した中南米での交換留学に遡ります。そこでの経験を通じて、国際関係や途上国問題に興味を持つようになりました。

大学時代は国際関係学を学び、そのまま留学して大学院に進みたいと考えていましたが、お金もないし、実務経験を積むことも大事だと周りから諭され、就職活動をはじめることにしました。

それまで国際開発を学ぶ中で、アジア通貨危機など金融が社会を劇的に変えていく様を目の当たりにしていました。それほど影響力のある金融の動きはどうやって形成されているのか、内側から見てみたいという探究心で金融業界に興味を持ち、新卒時は銀行に入社しました。

銀行では法人アドバイザリーや審査業務などに関わりました。約7年在籍しましたが、その内2年ほど留学していたので、実際の経験はそこまで長くはありません。でも未だに銀行出身者として、履歴書上で金融の色が濃くなっていることを考えると、ファーストキャリアという点で非常に重要だったと感じます。

これまでのキャリア変遷をライフキャリアとワークキャリアに分けて記載した図

入社してから7年ほど経過したころ、夫の海外赴任と私の第1子妊娠が重なりました。もともと国際開発系の仕事にキャリアシフトしたいと考えており、銀行の仕事にそこまで執着は感じていませんでした。また当時の仕事が非常に激務で、出産後も働くイメージが持てなかったこともあり、休職する選択肢もありましたが、その時はあっさりと退職を決めてしまいました。

暗黒の第1次駐妻時代

日本で第1子を出産した後、0歳の子どもを連れて東南アジアに行き、3年半ほど滞在しました(その間に第2子を現地で出産)。この時は出産と育児が重なり、専業主婦として暮らしていましたが、なかなか自分らしく生きられない暗黒時代でした。

離職したことでキャリアのレールから外れてしまったと感じ、その後の自分のキャリア設計がまったく描けなくなってしまいまいした。執着はなかったはずなのに、銀行の仕事を辞めてしまった後悔に苛まれる日々でした。

今振り返ると、慣れない環境でのはじめての育児ストレスや産後クライシスに加えて、仕事を失ったキャリアロス、そして私自身の居場所を持てないアイデンティティロスが全部ごちゃ混ぜになり、精神的に非常に不安定な状態だったと思います。

傍目には何不自由ない生活を送っているように映っていたかもしれませんが、私自身はそれまで感じたことのない挫折を感じていました。

その時に改めて、人にはそれぞれの挫折があるということを学びました。そして私にとって、仕事は自分らしく生きる上で非常に重要な要素であり、自己実現の一部なのだということを実感しました。

クアラルンプールの公園とビルの景色

本帰国後、すぐにでも仕事を始めたい気持ちはありましたが、帰国した先では待機児童問題が深刻で、当時0歳と3歳の子どもの預け先を見つけることがまったくできない状況でした。

求職者が保育園への入園申請をした場合、ポイント*¹が育休明けの方と比べて低くなってしまいます。育休明けの方のお子さんもなかなか入れない状況なのに、求職者が保育園を確保するのはほぼ不可能でした。

自治体に相談しても絶望的と断言される状況で、働きたくても働けず、求人情報を見ては溜息という数年を悶々と過ごしていました。

*¹認可保育園に入るための選考は、就労や家庭の状況をポイント化した「点数」によって行われます。

NPOのパートスタッフとして再就職

下の子が幼稚園に入る少し前、ようやく隣り駅にある認可保育園の一時保育に預けられる目途がたち、就職活動を開始しました。

この時の仕事探しの最大の優先事項は、①一時保育の範囲内(最大週3日、8時半~16時半まで*²)で柔軟に働けること、②少しでも自分の進みたい方向に関係する業務内容であること。

*²保育園に預ける基準や条件は各自治体によって異なります。

かなり選択肢が限られる中、パートタイムかつリモート勤務可という条件で求人を出しているNPOを発見。途上国のソーシャルビジネスを支援する事業で、目指していた途上国開発に関連し、かつ金融業界で働いていたという自分のバックグラウンドが活かせる業務だと感じました。フレキシブルに働ける金融人材を求めていた先方のニーズとも合致し、ほぼ一択で決まりました。

そのNPOは立ち上がって間もないスタートアップに近い組織で、スタッフ数も非常に少なく、かつ代表以外は全員がパートという状況でした。そのため、入社後は事業のリーダーとしてあらゆる業務を中心的に任されました。

それまで大企業での勤務経験しかなかった私にとって戸惑うことばかりでしたが、マニュアルも前例もない中でゼロから企画を立ち上げ、プロジェクトをリードしていくという貴重な経験を積むことができました。

なにより当時は非常に珍しかったリモートワークが可能で、家庭の都合に合わせて柔軟に働けることが本当にありがたかったです。仕事の合間に幼稚園の行事参加や友人との交流もでき、精神的にも肉体的にもバランスの取れた働き方ができることに満足していました。

時給制のパートで待遇はかなり悪かったですが、当時は働き方を重要視していたので気になりませんでした。それよりも、働けなかった日々を経て、ようやく働くことができるという喜びや、責任あるポジションを任される充実感の方が上回っていました。

この時期にその後のキャリアに繋がる経験を積めたことが、大きな転機になったと感じています。

再就職経験①NPOでのパートスタッフ経験についてのまとめ

NPOで3年ほど勤務したころ、再び夫がアフリカに海外赴任することが決まりました。はじめての場所で、治安や子どもの教育、私のキャリアなど不安はありつつも、任期が2年と決まっていたこともあり同行を決断。仕事を辞めて、家族4人でアフリカに行くことになりました。

力まずに過ごせた第2次駐妻時代

-現地での過ごし方について教えてください。

前職で新興国ビジネスに関わる中で、アフリカは今後確実に拡大するビジネス市場だと認識していたので、アフリカ滞在は今後のキャリアに繋がるチャンスだと感じていました。

滞在中は現地で活動する欧米のアクセラレーター組織(スタートアップ企業を支援する団体)にコンタクトを取ったり、アフリカビジネスニュースを収集するなど、アンテナを高く張るようにしていました。

また、駐妻カフェの運営メンバーとして、駐在妻・夫のキャリア体験談の記事を作成するなど、オンラインでのボランティア活動も行っていました。

最初の苦い駐妻経験のお陰で、2度目の駐妻生活はよい意味で過大な期待を抱くこともなく、あまり力まずに過ごすことができました。子どもたちが小学生になってある程度手が離れ、自分が自由に動ける時間が持てるようになっていたのも、最初の駐在妻時代との大きな違いだったと思います。

また生活環境や治安のよくないアフリカという土地柄、とにかく家族みんなが大きな病気やケガなく無事に帰国することが最大のゴールであり、そこに意識が集中していた(それ以外の欲があまり湧かなかった)ことが、逆にストレスなく過ごせた要因だったのかもしれません。

ビクトリアの滝と夕日の景色

ところが滞在2年目に入ったあたりで、新型コロナウイルス(以下、コロナウイルス)の感染拡大がはじまり、私と子どもたちは緊急一時帰国をすることになりました。

ある日、夫の会社から急遽当日便で帰国するよう電話で指示があり、とりあえずの荷物をスーツケースに詰め込んで、数時間後には空港で出国手続きを行っているという混乱ぶりでした。

コロナ禍で緊急一時帰国 就活と並行し業務委託の仕事を開始

それからは、私の実家で先の見えない仮住まい生活がはじまりました。日本の学校が休校の間は、子どもたちは現地で通っていたインターナショナルスクールのオンライン授業に参加しており、私は時差がある中での英語の授業のフォローで忙しい日々でした。

その後状況が少し落ち着き、子どもたちが日本の学校に通学するようになったころ、せっかく日本にいるのであれば働きたいと考え、就職活動をはじめることにしました。

子どもたちがある程度成長し、託児の点で働き方をセーブする必要がなくなっていたので、今度こそ自分のキャリアを本格的に再構築するタイミングだと感じていました。

一方で、まだその時点では夫の次の勤務地が決まっていなかったため、面接でも今後の予定に関してはっきりしたことが言えず、就職活動は難航していました。

そんな中、ある公的機関が3か月限定の求人を出しているのを見つけ、応募することに。先方のニーズと私の都合がちょうど合致し、そこでの仕事を始めることになりました。

短期の業務委託ということであまり気負わずにはじめたのですが、取り組むうちに仕事の感覚を取り戻すことができました。また業務委託では完全に個人の仕事ぶりで評価されるので、一つひとつの仕事に責任をもって、全力で取り組む姿勢が身に付いたように感じます。

自分が出した結果に対して感謝の言葉をいただけることがとてもうれしく、就活がなかなか思うように進まない中で、業務委託の仕事は私に自信を与えてくれる、精神的な支えになっていました。当初の契約期間を延長し、その仕事には7か月間ほど関わりました。

一時帰国・就活時期の業務委託経験についてのまとめ

そして緊急一時帰国してからもうすぐ1年というころに、ようやく夫の帰任が決定。私と子どもたちは、結局現地に戻れないまま本帰国することになりました。

本帰国決定→就活が佳境に 自己理解を深め仕事選びの軸を定める

当面の生活拠点が明確になったことで、改めて本格的に就職活動をはじめました。私は履歴書上の経歴から、企業からは財務分析力を期待されてしまうことが多く、転職サイトやエージェントに登録するとその種の求人を紹介されがちでした。

でも実は大の数字嫌いで、数字が並ぶ財務諸表を目にするのが苦痛でたまらないというタイプ。財務分析力を武器にした方が、就活が進みやすいのは分かっていましたが、それでは絶対にミスマッチが起きるという確信がありました。

そこで真剣に取り組んだのは、「自己理解」を深めることでした。これからの人生で、私がやりたいことは何なのか。履歴書上のこれまでの経歴・スキルの延長線上ではなく、自分が本当に得意なことは何なのか。改めて見つめ直す作業をはじめました。

さまざまな自己分析のツールを試し、これまでのキャリアを棚卸ししながら、どういった領域にどういった業務で関わることが、自分の関心および適性に合っているのかを分析しました。

その結果、自分なりの仕事選びの軸が定まりました。その後は面接もトントン拍子に進むようになり、最終的にはシンクタンクでの調査・コンサルティング職に内定が決まりました。

就活開始から内定まで7か月ほどかかり、受けた企業数は30社程度になります。長い就活期間となりましたが、業務委託の仕事との並行、また夫の勤務地の見通しが立たない中で、実態としてはかなり中だるみの時期が続いていました。

当初はエージェントに紹介された会社となんとなくの面接を繰り返していましたが、お互い違和感を持ち疲れるだけという結果が続き、次第に一般的な転職サービスは使わなくなりました。最終的にはJICAパートナーズという国際開発系の情報プラットフォームで求人情報を入手し、自分で直接応募していました。

転職情報の渦に飲み込まれないよう、自分の関心領域にあった求人情報ツールを見つけ、情報が自然と入ってくるような仕組みを作ることは重要だと思います。

12年ぶりのフルタイム正社員 これまでの経験が支え

今はSDGsやESG投資(環境・社会・ガバナンスの要素を考慮した投資活動)に関連した海外調査・コンサルティング業務に従事しています。

履歴書上ではコンサル業界は未経験でしたが、これまでの業務を通じて自分なりに適性を感じていたので、NPOや業務委託での仕事を通じて得た経験をもとにアピールしていました。

特に直近に従事していた業務委託の仕事は、面接や試験での評価に直接繋がったと感じています。短期の業務委託ではありましたが、再就職という面では非常にプラスとなったので、本当にチャレンジしてよかったと思います。

-仕事を始めてから、今感じられていることを教えてください。

フルタイム正社員として雇用されるのは12年ぶりで、最初は気負いもありましたが、意外になんとかなっていると感じます。ようやく自分が得意と感じる業務に携われていることもあるかもしれません。

駐妻カフェの活動で培ったスキル(文章作成やオンラインでのファシリテーションなど)にも助けられています。細々と繋いでいたキャリアが、思いもよらない形で今の業務に生きていることが多く、どんな経験もその後のキャリアに繋がっていくと実感しています。

2度の再就職を経て重要だと感じたことのまとめ

コロナウイルスの影響で夫婦ともに在宅勤務が中心になっているおかげで、小学生の子どもたちは学童保育を利用することなく過ごせています。

託児の点で就労に苦労した身からすると、ここまで柔軟な働き方が広く浸透したのはとても感慨深いです。コロナウイルスという外圧の影響ではありますが、今後も維持・拡大してほしいです。

自分のポテンシャルを信じて挑戦を

-駐在妻へのアドバイスやエールをお願いします!

私のように、駐在妻となることでキャリアが中断したように感じ、自信をなくしてしまう方、また帰国後の再就職活動に不安を抱く方は多いのではないでしょうか。

でも私は今、そういったモヤモヤする機会を人より多く与えられているのは、実は駐在妻の強みだと思っています。

自分の人生に向き合い、自分なりの軸を把握しているかどうかで、生き方や仕事に対する意識は大きく変わってくるような気がするからです。

私は仕事を通じて人生でやりたいことを実現したいと考えるタイプなので、「仕事」や「再就職」にフォーカスしましたが、人生で大切にしたいことは人それぞれです。必ずしも「仕事」や「再就職」に拘る必要もないでしょう。

大切なのは、自分がどんな人生を生きていきたいのかを自分なりに模索し、そこに向かって歩んでいくことだと感じます。

私の周りには、再就職をして活躍されている元駐在妻がたくさんいます。どうか自分のポテンシャルを信じてほしいです。

その時自分の心が動くもの、縁があったものをまずは大事にし、チャンスがあれば挑戦してみることで、その先の何かに繋がっていくかもしれません。

どんな経験もその後のキャリアに繋がっていくと、個人的な経験から感じています。

私も自分らしいキャリアの構築をこれからも模索していきます。いつまでも未来の自分に憧れを持って生きていきたいと思っています。

その他、駐在妻の帰国後のキャリア構築に向けた具体的な提言は、【調査結果】『駐在妻の再就職アンケート』から見えた再就職の現状とキャリア形成に向けたヒント にまとめてあります。ぜひご覧ください。

たのきん

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新卒で銀行に入社後、出産・夫の海外赴任を機に退職。国内外問わず転勤の多い夫に伴い引っ越しを繰り返し、2度目の駐妻生活をアフリカで送っていたが、新型コロナウィ...

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