(後編)「配偶者帯同(同行)休業制度」を使った体験談 駐在ファミリーカフェ 運営メンバー座談会

「配偶者帯同(同行)休業制度」に関する座談会の後編です

目次

休職中・退職後の職場とのコミュニケーションは?

ライフキャリアT Yさんは転職の際に、退職した会社の上司に推薦状を書いてもらったんですよね。前の職場といい関係を築き続けることができていたんですね。具体的に、どんな風に関係を築いていたんですか。

Yさん 休職中は数カ月に1回程度、上司と近況報告の1on1を実施していました。もし退職していても、半年に一回ぐらいは連絡してもいいと思いますよ。具体的な手法としては、相手が一番頻繁にチェックされてるだろうと思うツール、たとえば会社のメールアドレスやLinkedin、Facebookなどにメッセージを送ってコミュニケーションしています。ビザを更新できずに辞めた会社の方々に推薦状をもらう時は緊張しました。しばらくぶりだったので、無視されたらされたで仕方ない、返信をもらえたらラッキーという気持ちでお願いしましたが、すぐに快く返事をくれました。

Hさん 復職するつもりだったので、半年に1回ぐらい自分から近況報告していました。ただ、休んでる間に組織変更があったり上司が何回か変わったりしていました。どんなプロジェクトが進んでいるのか、私が戻れる場所はあるのかまったくわからなかったので、手探りで連絡していました。

ライフキャリアT 具体的にどのように連絡を取られたんですか。

Hさん 休職中は、自分から面談のお願いをしました。もし上司がまったく知らない人に変わってしまっていたら、面談のお願いはハードルが高く感じたと思います。

Rさん 私の場合、休職中は人事部付になっているので、これまで一緒に仕事をしたことがなかった方とコミュニケーションをしないといけないんです。そんな中で「なにか変わったことがありますか」と聞いても、漠然としすぎているのか「特にないかな」と言われることがあります。どんなことを意識すれば、もっとうまくコミュニケーションが取れるかを知りたいです。

Yさん 私なら、相手やその部署にとって現在のフォーカスと次のチャレンジは何ですか?ということを聞くと思います。さらに「実は滞在国でこういう体験をしているので繋がる気がします」とか「もうちょっと私もその部分を勉強してみます」とか「もう少しよく観察してみます」などと言ってみると、自分が会社に貢献しようとしているようにも伝わると思います。

ライフキャリアT Eさんは再雇用で復職されていますよね。再雇用は休職と違い一旦退職となります。退職後に会社や職場とやりとりがあったり、自分からアクションをとったりすることはありましたか。

Eさん  会社からは、退職後から復帰までの期間は「内定者」だと言われていました。はじめは前の職場と連絡を取っていましたが、せっかく辞めて放任してもらえるのだから、一旦忘れようと切り替えて、あえて連絡を取りませんでした。会社には、定期的に共通メールボックスあてに近況報告を送る必要がありました。ただ、せっかく送っても、返信は時間が経ってから「また報告お願いします」という簡素な内容だったのでがっかりしました。前の職場に戻れる確約もなかったし、もっと違う仕事がしたいと転職も頭にちらつきはじめたことも気持ちを切り替えたきっかけです。退職時と復帰前には自己PRを記載するエントリーシートのようなものを提出しました。

ライフスタイルにあわせた働き方、どう掴む?

Eさん 前に担っていた営業ではなく、テレワークできる部署を強く希望しました。今まで通勤していた時間の分長く働けるので、今はすごく理想的な状況です。復職時の人事部との面談で、駐妻の時の経験を伝えたところ、その経験を活かせる部署に動かしてくれました。新しい部署からは「前にいた部署の経験を活かしてこういうことやってください」という風にも言われています。経歴を踏まえて配置先を考えてくれるので話が早い。この点でも、同じ会社に戻ってすごく良かったなと感じていますね。

Yさん 先ほどのEさんと同じで、転職活動では自分の要望をはっきり伝えました。具体的には、家族のいるアメリカで過ごしながら日米を行き来する形のリモートワークをしたい、というものです。

Kさん ライフワークのライフの部分を重要視した結果、選択肢として残ったのが日系の大企業への転職でした。フリーランスや業務委託、ベンチャー企業などいろいろな働きかたを模索しました。でも、フリーランスは 自分で登記する必要があり、税金計算や年金計算は自分には難しいと感じました。ベンチャー企業は雇ってくれそうなところは多かったけれど、自分の代わりがおらず休暇が取りづらそうでした。面接時には、ハラスメントにあたるキーワードを発言しないか、という点にも着目して企業を選びました。

Hさん 私の会社は制度は整っているけれど、成果の出し方はまだ長時間労働に依存しているなと感じています。でも、考え方が「自分軸」に変わったいま、家族を大事にしたいです、と素直に言えるようになりました。出産後すぐに駐在同行したため日本での子育てをしておらず実体験がないのでなんとも言えない部分もありますが、きっと以前の自分だったら、子どもを寝かしつけてから仕事する!といった具合で、上司にそんなことは言えなかったと思います。

復職時、自分の要望をうまく伝えるには?

Eさん 要望が通るかどうかは、その時の状況や運もあると思います。ただ、要望をはっきり主張することは大事だなと感じています。もちろん、会社が私の経歴を見てどういうことをさせたいかということを考慮しつつ、自分にできることや貢献できることを示す。そのうえで、こういう部署が働きやすいです、とはっきり伝えました。日本に戻ってきて、以前よりも会社側にワークライフバランスを考慮する雰囲気が出てきたなと感じています。そのこともあって、会社もなるべく希望を聞いてくれるようになってきたように思います。

ライフキャリアT 遠慮しすぎないということですね。

Eさん そうですね。駐妻のみなさんは海外生活を通じて自分の価値基準を主張する大切さを実感していると思うので、その点を自分の価値観として日本に帰ってきてからも取り入れるというのは素敵なんじゃないかなと思います。ちょっと変わったやつだなって思われることを怖がらないようにしてます (笑)。

転職の経緯は?

Yさん 休職中は副業としてアメリカの企業のフルタイム正社員で勤務していたのですが、コロナ禍で就労許可証が更新されなかったため、その会社を辞めざるを得ませんでした。これをきっかけに、オンラインを通じて職を探しました。その結果、新しいことに挑戦できそうな仕事が見つかったため休職していた日本の会社を退職しました。

Kさん 私の場合、退職後に再雇用制度が出来たんです。制度の利用は可能でしたが、退職した当時と同じ等級・給料つまり駐在に同行していた4年間の経験を評価してもらえずブランクとされてしまうこともあって、元の会社に復職せず転職しました。

転職活動をしてみて感じたことは?

Kさん 日本に戻った当初は自分のことをブランクがあると思っていたんです。採用してくれるところがあれば、インターンでもアルバイトでも何でもいい、と思うくらい自信がなかったんです。「ブランクがあるのでマイナス」と表現するエージェントもいました。それでも、駐在に同行していた4年間のキャリアをブランクではないという考えを持つエージェントと企業に出会い、退職した当時よりも給与アップして転職をすることができました。

ライフキャリアT 4年間にたくさんの経験をされていたのに、 最初は自信がなかったと聞いて驚きました。でも、エージェントからブランクだと言われたら諦めてしまいそうですね。

Kさん 当時はアベノミクスによる女性管理職の割合引き上げ目標があり、企業が女性登用に積極的な時期でもあったんです。それもあって、夫からは「安売りしたらだめだ」というアドバイスをもらいました。そこで、まずはエージェントに認めてもらわないとダメだと思い、「ブランク」と表現するエージェントはお断りしました。

転職活動のコツやアドバイスは?

Kさん 私は、応募する職の選択肢を多くしました。とりあえず興味があるから応募してみるか、話をきいてみるかという気持ちでもよいと思います。駐在同行経験を通して、自分が気づかないうちに考えや求めるキャリアが変わっていることもあります。また、コロナ前後のように日本での働き方が変わっていることもあります。ですから、最初から選択肢を狭めないことをお勧めします。私も広く布石を打ちました。自分に向いていないかなと考えたら辞退すればいいのですから。

Yさん 私の場合、最初は狭い選択肢からはじめました。具体的には、「過去の仕事の延長線上」+「グローバル環境で働きたい」という2軸を満たすポジションに応募していました。ところが、本気でぶつかったつもりでしたが、なかなか仕事が得られませんでした。そこで、徐々に選択肢を広げることにしました。最初は「経験のある職種」×「英語」という自分の思い込みと希望に固執していたのですが、「日本語、日本文化を知っていることを活かして働く」というところに辿り着きました。結果的には、理想としていた環境で自分のやりたかった仕事をできています。 

あとがき

海外帯同(同行)に特化した休職・再雇用制度もあれば、幅広い事由に対応した制度もあるなど、制度内容は企業ごとに大きく違います。制度を一括りに語れない部分はありますが、少しでもみなさんの不安や悩み、疑問を解消するヒントとなれば幸いです。

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