女性の70%が悩んでいるPMS,PMDD,月経困難症
今回オンラインカフェにご参加くださった皆さんには事前アンケートにご協力いただきました。その結果、やはりPMS(月経前症候群)、PMDD(月経前気分不快障害)、月経困難症についての悩みを挙げられる方が非常に多かったです。
冒頭でも触れた通り、女性の70-80%がPMS、PMDD、月経困難症のいずれかを原因とする不快症状に悩んでいるというデータがあります。
それぞれの現れる時期・症状は下記の通りです。
●PMS(月経前症候群)
<時期>排卵してから月経を迎えるまでの約10〜20日間
<症状>浮腫み、胸のはり、腹痛、便秘/下痢、眠気/不眠、食欲増進/食欲不審、イライラする・憂鬱になる、肌荒れ
●PMDD(月経前不快気分障害)
<時期>排卵してから月経を迎えるまでの約10〜20日間
<症状>PMSの気分的な症状が重度になった状態のこと
●月経困難症
<時期>月経期間中(2,3日〜7日間程度)
<症状>下腹部痛、頭痛、ふらつき、便秘/下痢
●PMSの主な原因はプロゲステロン
多くの女性を悩ませているPMS。
その症状には、プロゲステロンが大きく関わっています。
排卵後は、体が「妊娠しているかも」と期待し準備するため、妊娠を継続させるためにプロゲステロンの値が高くなり、さまざまな体の反応が起こります。
プロゲステロンの作用・影響 | 症状との関連 |
インスリンの効きが悪くなる | 血糖値があまり下げられなくなる →体が”血糖値がまだ高い、もっとインスリンを出さないと”と判断して分泌を促す →血糖値が一気に下がって飢餓状態と認識される →急にお腹が空いてやたら食べたくなる |
アドレナリンが分泌される | 興奮状態になる →攻撃的になる →イライラする →眠れなくなる |
水分を溜め込む | 全身に水がたまり、溜まる場所によって症状が出る →腸:便秘や下痢の原因 →脳:髄液の量が増えて脳内の圧力が高まり、頭痛の原因に →皮膚の下:手や足のむくみ →全身:体重増加 |
体温があがる | だるさ、つらさ、ぼーっとする感じ |
この他にもプロゲステロンは妊娠を継続するためになるべくおとなしくするように体に指令を出します。
●まだ解明されていないことが多いPMDD
PMSと比べてあまり知られていないPMDD。正式名称は月経前不快気分障害といい、黄体期(排卵後から月経前までの期間)に精神的な症状を特に強く起こす場合を示します。
PMDDの発現にはさまざまな要因があるため、詳しい仕組みはまだ全て分かっていません。
ただ、女性ホルモンの分泌量の変化に伴って、神経伝達物質のセロトニンとGABA(ガンマアミノ酪酸)がうまく働かなくなることが原因のひとつではないかと言われています。(※神経伝達物質のセロトニンとGABAには気分を落ち着かせたり、不安感を取り除いたりする作用があります。)
女性ホルモンの分泌量の変化を見てみると、エストロゲンは排卵時に一過性に大量に分泌され、その後に減り、プロゲステロンは黄体期の終わりにかけて徐々に減っていきます。つまりホルモンサイクルを考えた時に、月経前は両方の女性ホルモンが少なくなっていく時期にあたるため、気分の変化が起こりやすいと考えられているのです。
実際にPMDDの方は、月経前の10日間の血中セロトニンの濃度が低下するというデータがあります。また、トリプトファン(セロトニンの原料となる必須アミノ酸)が少なくなることでPMDDの症状が悪化することも分かっています。
また、先ほどの表(プロゲステロンの作用・影響)にあるように、プロゲステロンによりアドレナリンの分泌が誘発されるため、余計にイライラや不眠が起こりやすくなります。
一方で、脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスなどの影響を強く受けるため、PMSやPMDDは女性ホルモンの上下だけが原因ではなく、多くの要因が複雑に絡み合って起こることも理解しておく必要があります。
エストロゲンが分泌されて、排卵した。ちゃんと排卵すると、プロゲステロンが出てくる。プロゲステロンがちゃんと分泌されると、先ほど説明した症状が出てきます。
バランスが崩れるという言い方も、色んな意味を持って書かれていると思うので間違いではないかもしれません。ただ、実はPMSやPMDDは正しくホルモンが出たから起こっているということをしっかり覚えていただきたいです。
●月経困難症の主な原因
月経中の一番の悩みは月経痛。それから眠気、PMSから続く頭痛などが挙げられます。
月経痛の主な原因は、プロスタグランジン、子宮口の狭さ、冷えの3つです。
プロスタグランジンは子宮内膜から分泌される物質です。
女性の体は妊娠していないということがわかった瞬間、プロゲステロンとエストロゲンの分泌を止め、妊娠に備えて作っていた内膜を排出しようとします。これが月経です。その時に内膜そのものからプロスタグラジンという物質が出て、子宮全体の筋肉をしぼりあげ、内膜を完全に落とそうとします。それが生理痛の原因です。
生理痛の重い人と軽い人の違いは、プロスタグランジンの分泌量(内膜の量の違い)と言われています。内膜量の違いは、生まれつきや年齢的な影響、そして子宮に病気がある場合などが挙げられます。
次に子宮口が狭い場合。狭い穴に向かって内膜を落とすために圧力がかかるため、痛みが強くなってしまいます。ちなみに出産経験のある方だと、出産前と比べてほんの少しだけ子宮口が大きくなることが多いので、そんなに強く痛みを感じないとされています。
それから冷え。
プロスタグランジンは内膜を排出するために平滑筋(自分の意思では動かせない筋肉)を収縮させます。その影響で血管も収縮してしまい、血流が悪くなり、血圧があがったり手足が冷えたりします。そのため月経時は末端の血行が悪い状態なりがちです。その上、お腹が冷えるとさらに血管が収縮して、より血流が悪くなります。そうすると、痛みがより強くなるという悪循環に入ってしまいます。
また、プロスタグランジンのせいだけではなく、精神的なストレスも月経痛の原因になります。精神的に不安定な状態では、脳が痛みを強く感じてしまうということもあるんです。
これは月経以外でも起こることなので、少しでもリラックスできるような環境を自分で作ることも大切だと思います。
女性ホルモンの影響は悪いことばかりじゃない!
ここまで聞くと”女性ホルモン=いいものではない”という印象を持つかもしれません。
でもエストロゲンには、
- 髪の毛がツヤツヤになる
- 肌がしっとりする
- シミ/シワがあまり増えない
- 骨の密度を高める
- コレステロール値を低く抑える
といった女性にとってうれしい作用がたくさんあります。
そのため、女性ホルモンを分泌している時期の女性はコレステロール値が低く抑えられます。つまり、閉経するまでは脳梗塞・心筋梗塞などの病気のリスクが下がるという大きなメリットもあります。