皆さんは女性ホルモンについて、またご自身の女性ホルモンのサイクルについて知っていますか?
月経、妊娠、出産など女性の日々の生活やライフステージに深い関わりをもつ女性ホルモン。女性器を持っている以上、避けては通れない女性ホルモンの影響ですが、それによる悩みを抱える女性もたくさんいます。
例えば月経前症候群(PMS)、月経前気分不快症候群(PMDD)、月経困難症。
国籍、住んでいる地域、年齢を問わず、女性の70-80%がこの3つのいずれかによって、何らかの不快な症状に悩まされているというデータがあります。
駐在妻の間でもこうした女性特有の悩みを抱える人は多くいるものの、日々の忙しさの中でその悩みへの対応を後回しにしがちです。
駐在ファミリーカフェでは
”病院受診のハードルが高い海外在住者こそ、自分の健康と向き合う必要があるのでは?”
と考え、サチコ先生こと北出佐知子医師をゲストに迎え、女性ホルモンに関するオンラインカフェを開催しました。
この記事は、そのときにサチコ先生が話された内容をまとめ、監修していただいたものです。
前後編に分け、前編では女性ホルモンの基礎知識を、後編ではオンラインカフェにご参加の皆さんから頂いた質問に対するQ&Aを掲載します。
前編には、知っているようで意外と知らない女性ホルモンに関する情報が詰まっています。
あなたが気になっていた症状への医学的な説明が見つかるかもしれません。
★オンラインカフェ後半部分:『海外在住女性のための女性ホルモンQ&A-現役女性医師監修!海外在住日本人のための健康講座シリーズvol1:女性ホルモン(後編)』はこちら
●サチコ先生のプロフィール●
本名:北出佐知子。1974年生まれ。東京都出身。英領バミューダ諸島在住。都内の医学部を卒業後、大学病院循環器内科に勤務ののち、シンガポールでGP (総合医)として日系クリニックに勤務。2013年より、オンライン・ホームドクターとして在外邦人のサポートを行なっている。Peace of Mind Medical Services 代表
◇プロフィールと経歴
◇Peace of Mind Medical Services
◇Instagram
最初に伝えたいのは”自分を知る”ということ
今回のオンラインカフェを通して、サチコ先生が繰り返し話されていたのは、”自分を知る”ということの大切さ。
体の状態を判断する上で、普段のホルモンサイクルを知っておくことはとても重要です。下記のチェックリストの項目を、ぜひ一度確認してみてください。
これらを把握することで、その時自分の体の中で何が起こっているかを知ることができます。
女性ホルモンサイクルを知るためのチェックリスト
1.生理周期
2.基礎体温
3.経血量
4.月経前&月経中の症状
月経周期・基礎体温・経血量・月経中&前後の症状。
これは人それぞれ違います。
これから一般的な女性ホルモンの知識やホルモンサイクルについてのご説明も行います。ですが、私の中で今回のお話の真のテーマは、皆さんにこの4点について考えていただくきっかけを作り、ご自身の状況を把握していただくことです。
そもそも女性ホルモン・女性ホルモンサイクルとは?
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2つがあります。
・エストロゲン(別名:卵胞ホルモン)
卵巣内の卵胞(卵子を包み込む細胞)を成熟させ、排卵させる働きをもつ
・プロゲステロン(別名:黄体ホルモン)
子宮の中の内膜(受精卵が着床するベッドのようなもの)を肥厚させる働きをもつ
エストロゲンは月経後から徐々に分泌量が増え、ピークを迎えると排卵に至ります。排卵すると同時に、今度はプロゲステロンが分泌されます。そして排卵から14日間が過ぎ、妊娠していない場合には両方のホルモンの分泌量がぐんと減って、内膜が剥がれ、月経が起こるという仕組みです。
エストロゲンやプロゲステロンの分泌量に関しては、脳下垂体からそれぞれのホルモンを出すように働きかけるホルモンも連動して、複雑に、そして繊細に絡み合ってコントロールされています。
排卵日前後で女性の体内の温度は変化します。これが低温期と高温期です。
体の温度と二つの女性ホルモンの分泌量は密接に関係していて、図2のサイクルで毎月同じことが繰り返されています。一般的に低温期は月経の後から排卵日までの約10〜20日間、高温期は排卵後から月経が始まるまでの約14日間。
低温期・高温期と言っても、発熱するほどではなく、0.3度から多い人で0.5度という微妙な違いしかありません。ただし、人によっては高温期に体が熱くなって、だるくなったり、熱っぽく感じたりする人もいます。
一般的な体温計では測定できないため、正確に測るには基礎体温計が必要になります。
どんなに規則正しく生活していても、この通りにいかない方もたくさんいます。
“脳下垂体に負担のかかるようなストレスを少しでも減らすことでホルモンサイクルを整える”という対処法もあります。けれど、ストレスのない生活というものは現代ではとても難しく、医療の現場でもこのサイクルをきちんと作っていく方法はまだ確立されていません。