【帰国後インタビューvol.7】駐在妻の再就職 モヤモヤにとことん向き合うことが鍵

お仕事を実際に始めてみて、家庭とのバランスはどうでしょうか?

今は自動車メーカーで内部監査を担当しています。前の会社もメーカーだったので職場の感覚が似ていて、意外とスムーズにはじめることができました。時短制度は使わず、フレックス制度を使って、早く出社し早く帰宅するようにしています。残業はほぼないです。

労働時間の管理がものすごく厳しくなっていて、また大企業であればあるほど厳しいように感じます。残業を減らすために、人材をたくさん募集して1人に業務が集中しないようになっています。そのおかげで復帰後のリハビリがゆっくりできてよかったです。夫も残業がほぼないので、夫と駅で待ち合わせて、コーヒーを1杯飲んでから子どもを学童に迎えにいく余裕があります。

-素晴らしいですね!今後旦那さまの海外転勤の可能性はあるのでしょうか?

多分またあると思いますが、今の会社に最長5年の帯同休暇制度があるので、それを利用して同行する予定です。今は、特に大手企業は女性活躍推進の流れで、休暇制度や再雇用制度をどんどん整えています。実際に就活してみて、自分が知っていた過去の情報と今の会社の状態がまったく違うので驚きました。前に働いていた会社も、以前は中途採用はほとんどなかったですが、今は残業を減らすために中途採用をとても増やしています。たった5年ほどの間に働き方改革がものすごく進んでいました。

キャリアプランはなし その都度しなやかに生きることが目標

-今後の長期的なキャリアプランがあれば教えてください。

それがまったくないんです、私。よく考えてみても、やっぱりなくて。この先のことを予測できないので、その都度しなやかに生きていくということが今の目標です。

なぜかというと、駐在ファミリーカフェに参加するまで、ものを作ったり企画をする楽しさを知らなかったですし、監査をするまでは監査をする楽しみ、大学の頃は経理の楽しさも知らなかった。その都度、自分の世界が広がっているんです。今はまだ狭い世界で生きていて、これから外国に行っていろいろな仕事をしたり、いろいろな人の話を聞くことで興味がでてくることもきっとあると思います。「だから逆に決めないでおこう、でも今やることはしっかりやろう」という風に考えています。

-それでは、今の監査のお仕事をずっと続けていくとは限らないのですか?

限らないです仕事内容も含めて、その時々しなやかに生きていこうとアメリカにいるときに感じました。アメリカでは、根っこを生やさずに生きている人にたくさん出会いました。例えばヨーロッパの方が、独身の時はアメリカで楽しく過ごしたけれど、子育て環境はヨーロッパがいいからとヨーロッパに帰ったり。自分の人生のタイミングによって物事の優先度が変わるので、その優先度と、その時に自分が興味があること、そして家族の状況、そういったものを全部考えて、マッチすることをやっていきたいと思います。

今の私にとってスローな働き方が気に入っていますが、子どもが産まれる前の私だったら物足りなかったはず。今の働き方と自分の人生のタイミングがぴったり合っているという感じです。

モヤモヤ期を大切に 焦らず、ギブを楽しむことで経験値と評価を得る

-最後に、帰国~再就職まで振り返って、駐在妻の方へアドバイスをお願いします。

絶対に言っておきたいのは、「モヤモヤ期間を大事にする」ということです。自分がモヤモヤしている時は、なぜモヤモヤしているのかを考えることが大切です。とことんモヤモヤしつくすと、何かしら種みたいのがポンっと生まれてきて、「あ、これだったんだ」っていう原因がわかってきます。

そうしたら次に活動期間に入ります。よくボランティアで「無償で活動することに価値がないように思える」と聞きますが、そこで「どうせもらえないんだったら、やれることを惜しみなくやる」と考え方を変えるんです。そこでお金はもらえないけど、人間は評価をしてもらえます。そして評価はお金以上の価値があります。評価をしてもらえるように、いろいろなところに参加して、自分の経験値を上げて評価をしてもらいましょう。

ギブアンドテイクのテイクを気にせずに、ギブをしつくすことに楽しみを見出してやっていると、点々でやっていたことが、気が付いたらいつかは線になって、どこかで繋がります。駐在中は働けないと焦っている方もいると思いますが、焦らないで、モヤモヤしている時はモヤモヤを大切にする。活動期になったら、自分が興味のあることに惜しみなく時間を使う。そして帰国が決まったら、諦める(笑)。そこは変えられないので。

駐在妻時代に「履歴書に書けることを」と考え過ぎない方がいいと思います。考えると楽しくないし、「自分のキャリアはこうしたいから、駐在妻の間はこうして、帰国後にこう繋げたい」と思ってしまうと幅が広がらないと思います。でも「楽しいことに、思いっきり時間が使えるんだぞ」という風にやると、もしかして日本に帰ったら違うことをしたくなるかもしれない。なので、そこはギブを楽しむ。そうしたら結果的に日本で履歴書に書けるようになると思います。私の場合、その時に役に立ったのが推薦状でした。履歴書と推薦状を一緒に出したので、履歴書でアメリカでやってきたことを記載し、実際の成果については推薦状で示すことができたので、より信憑性を増すことができました。

業務のことは、行く国によってはやりようがないですよね。資格を取るとか、お金と時間をかければできるかもしれないけど、大体の駐在妻の悩みは、時間はあるけどお金はないという部分だと思います。そこはもうどうしようもないので諦めて、推薦状で人物評価をしてもらえるような経験を積むのです。そうすると、ボランティア活動に価値がつくと思います。

社会は変わっていくし、自分も変わっていくので、駐在妻時代に方向性を決め過ぎない方がいいと思います。もしかしたら、変わった自分と変わった社会がマッチしているかもしれない。だから何をした方がいい、よくないと決めつけないで、柔軟にしなやかにいったほうが女性は得だと思います。


<インタビュー後記>

お話を伺ったのは新型コロナの感染が最初に報じられる数カ月前でした。その時は何気なく聞いていた「先のことは予測できない」「その都度しなやかに生きていく」という言葉が、わずか数カ月後にここまで身に染みるようになるとは、誰が予測できたでしょうか。社会と共に私たちも変わっていくから、予測できない変化に対応する柔軟さを持つこと。 モヤモヤする時は立ち止まって、自分の心の声に耳を傾けること。ずっと胸に留めておきたい大切な教訓をいただきました。ありがとうございました。

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